記憶の欠片

桜ゆき

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8話 長い夢の中

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ずーっと長い夢を見ていた…
俺らはずっと一緒だった。
親の顔なんか覚えてないけど、いつも隣には愛斗が居て、俺たちは支えあって生きてきたんだ。

「ん…」
『おいっ…大丈夫か!?』
「あ…俺…」
『さっき廊下で倒れたんだよ…っ』
「そっか…」
『今先生呼んだから…っ、グスッ』
「泣かないで…」

この頃俺は流行病を患って、もう長くないと言われていた。
せっかく二人きりになれたのに、こんなにも呆気なく幕を閉じる事になるなんて思いもしなかった…

「ねぇ、手…握って…」
『うん…』
「俺…幸せだったよ…」
『なんで今そんなこと言うの?やめてよっ…』
「だって…伝えておきたいじゃん…」
『俺だって、俺だって幸せだった…ずっと…これからもずっと一緒だろ?俺より先に逝くなんて許さないからなっ…』
「ごめんね…俺の分も…生きて…」
『やだっ、置いてくなよ…っ!』
「大丈夫…きっとまた…逢えるから…」
『やだよぉ…俺一人じゃ生きていけないっ…』
「俺…待ってるから…生まれ変わったら…また…俺の事見つけて…」
『当たり前だろっ、絶対探し出す…っ!』
「そしたら…出来なかったこと…沢山しようね…」
『うんっ…』

そうだ…俺が言ったんだ…
俺がした約束だったのに、なんで忘れてたんだろう…
我ながら最低だな…笑
お前は、ずっと忘れてなかったんだな…
そして、俺を見つけてくれた…

「待ってるから…ありがとう…愛斗…」
『えっ…待って…ねぇ…おいっ!!逝くなよっ!!なぁっ!!目ぇ開けてよぉっ!!結斗ぉっ!!』

段々と意識が薄れていく中で、前世と今世の記憶が交差していく…
あれ…俺…結斗って名前だっけ…
思わず口から出た愛斗って名前…
あ…そっか…俺行かなきゃ…愛斗の所に…
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