ミントバニラ

むらさきおいも

文字の大きさ
25 / 53
第二章

真相を探る

しおりを挟む
ただ何故、こんな大胆な殺人事件が公にならなかったのか。

そして犯人も捕まらないまま、簡単に捜査が打ち切られてしまったのか…

俺はずっとこの事だけが引っかかっていた。

今回の藤代の件だってそうだ、二件とも本当に藤代がやったのか?
死体遺棄はそうだとして、本当に殺人まで犯したのかと言う物証までたどり着いちゃいない。

おっさんからはあまり深く首を突っ込むなと言われ、個人的に少しづつ調べ上げてきた訳だが、こうなってくると警察内部の人間だって怪しい。

おっさんは…何か知ってるのかもしれない。


そんな矢先、柊が入院している警察内部の病院から俺宛に電話が来た。

あれから丸二日、身体にも脳波にも以上は無いのに、柊はこんこんと眠ったまま目覚めないらしい。

それにいくら警察内部の病院とはいえ、内部に組織と繋がってる奴がいるなら、柊をずっとそこに置いておく訳にも行かない。

せめて信用できるおっさんにだけ事情を話し、内々に病院を移動出来るように手配を進めようと考えた。


「よう、三上。元気か?」

「元気じゃねぇっす。電話で話した件だけど…これ…」


一か八か、俺は柊の携帯のデータをおっさんに見せた。

おっさんも黒なら俺も消されるかもしれないけど、もう他に方法がなかった。


「こりゃ、ヤベェもん見つけたな…」

「おっさん、これを証拠にここにいる連中全員しょっぴくこと出来ねぇかな?」

「…けど証拠がねぇ、これだけじゃな」

「別件であぶり出してさ、なんかしらやってんだろ。こんなヤツら…」

「三上…お前、マジでもうやめとけ」

「…っ、おっさん、なんか知ってんだろ!?」

「いや、俺は知らねぇよ。だけどな、三上。世の中には警察でも手が出せない事ってのもあんのよ。お前の為に言ってんだぞ?これ以上詮索したら…それに、長谷川の事守りたいなら、もうこの件からは手を引け」

「…っ、おっさん!でもそれじゃあ…っ」

「とにかく、俺は見なかったことにする。まぁ他に手伝えることはしてやるけど、それで勘弁してくれ…俺にも守りてぇもんがあるんだよ。な?」


ポンポンと肩を叩かれ、これ以上はダメだと言わんばかりに、おっさんは俺に視線を送ってきた。

柊の転院の件も、助けてもらおうと思ってたけど、これじゃ黒だか白だか分からねぇ。

おっさんのことは信用してるけど、今回ばかりはもう誰も信用出来ない。

全部俺一人でやる、そう決めたんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...