十六夜の月

むらさきおいも

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届かずの想い(敦史)

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真壁まかべはいつも俺に隠れて無理をする。

真面目すぎるが故ってのもあるけど、それ以上に過去の償いなのか、俺への後ろめたさなのか…

どっちにしたって折角ここに来たんだから、無理なんかして欲しくはないのに。


「真壁、送ってくから。もう帰りな?」

「大丈夫です。これ終わったらちゃんと帰るから…ゴホッ」


本当に頑固なんだから…
俺は立ち上がろうとする真壁の腕をがっちりと掴んで椅子にもう一度固定すると、優しく前髪を避けながらおでこに手を当てた。


「熱、あるじゃん。今すぐ送ってく」

「でもまだっ…」

「真壁」


ドスの効いた低い声で少々脅しをかければ、叱られた子供のようにしゅんとなる真壁。

俺はお前を組の世話役にしたつもりもないし、無理させてまでやらせる仕事なんてここには無いから。

もうそろそろ、楽に生きて欲しいのに…


「…本当に、これだけ…」

「はぁ…駄目って言っても無理なら今日はもう帰さないけど、それでいい?」

「えっ…!?何言って…っ」

「俺の部屋来て…」


俺は半ば強引に真壁の手を引き、自分の部屋まで連れて行ってベットに押し倒した。


敦史あつし…さん…っ!?」

「言う事聞かない悪い子にはお仕置が必要だな」

「ちょ…っ、あつ…っ///」


両腕をベットに縫いつけ真壁に顔を近づけると、耳まで真っ赤にしてほんと可愛い…

病人をあまり脅したらいけないなとゆっくり束縛を解くと、緊張したままの真壁にそっと毛布をかけた。


「帰らなくていいから、ここで大人しく寝てて?」

「えっ…」

「今日は俺が面倒見るから、それなら良いだろ?」

「よ、良くない良くないですっ!敦史さんに迷惑かけられないっ…」

「だったら早く治して…?」


返す言葉が見つからないのか、あの真壁がバツの悪そうな顔をして毛布を掴み鼻まで顔を隠すような仕草をするから、「勝ったな」と思って頭をポンポと撫でた。

真面目で頭のいい真壁をからかって遊ぶのが楽しいなんて、俺はなんと言う悪趣味なのだろう。

だけど「強がる君も」「弱い君も」俺にとっては全部愛おしい―――


「敦史さん…ごめんなさい…」

「謝られる覚えはないよ?」

「じゃあ…ありがとう…」

「ふふっ、どういたしまして。ゆっくり休んで…」

「はい…」


俺みたいなやつが誰かを守ろうだなんて本当は思っちゃいけないんだろうけど、俺には守りたい人が沢山居る。

斗亜とあ龍士りゅうじも…
ここにいるみんなに幸せになって欲しい。

俺があの時、守って貰えたように…
いつかこの想いが、君にも届くといいのだけれど―――
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