十六夜の月

むらさきおいも

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工藤さんの元カノ

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まぁもう良くわかんないけど、工藤くどうさんなら経験値高そうだし、ホストなんだから相手が男って事は絶対無いだろう。

やっと女の子との話が聞ける!
そう期待に胸を膨らませ、近くのファミレスに入って行った。

工藤さんと向かい合って席に着いて、早速今抱えている俺の悩みを打ち明けようとしたけれど、さすがにほぼほぼ初対面の人にド直球でえっちの話を聞くのは失礼かと思って、まずは少しづつ…

なんて思ってたんだけど、話は思わぬ方向に動いて行った。


「あの、工藤さんって彼女…いる?」

「あ…いたけど…亡くなったんだ…」

「えっ…」


俺は会って間もなく、彼の地雷を踏みつけたらしい…

今から俺が聞こうとしていた話なんて到底聞けるはずもなく、俺は俯いてどう返事を返せばいいのか、そればかり考えていた。

寂しそうに目を伏せる工藤さんに、あの時泣いていた龍士りゅうじの姿がリンクする。

龍士も、工藤さんも…
大事な人を亡くしてたんだ…

じゃあ、工藤さんの彼女さんはどうして…っ
この疑問が頭をよぎった刹那、口に出そうと視線を上げたけど、でもそんなこと興味本位でいきなり聞ける訳もなく、俺はやっぱり俯いて口を噤んだ。


「あ、何かごめんね…暗い話になっちゃうね」

「いや、俺こそ…ごめんなさい」

「ううん、気にしないで?で、斗亜とあくん彼女でも出来たの?」

「いやっ、そうじゃないんだけど…」


そうじゃないんだけど、こんな話聞いた後にえっちの話なんか聞けるはずもなく、完全に話す事がなくなってしまった俺は、取り敢えず目の前のジュースを一気に飲み干した。


「あの、やっぱいいやっ!大した事ないしっ…」

「ん?そう?じゃあさ、俺から一つ提案していい?」

「あ、うん…」

「苗字呼び止めない?」

「えっ、けど…」

大輝たいきでいいよ」

「大輝…くん?」

「うん、それでいい」


大輝くんは大きな手で俺の頭をぽんぽんと撫でると、目が無くなるほど目尻を下げて笑った。

彼女が亡くなったのがいつの事なのか、どういう状況だったのか気にならないかと言ったらそれはやっぱり気になる。

だけどそれを聞くのは今じゃないような気がして、取り留めのない話なんかをしてその場をやり過ごした。

だけど大輝くんは、俺のそんな下らない話なんかも面倒くさがらずに聞いてくれて、真面目に答えてくれる。

大輝くんって見た目こそカッコ良くてそれこそNO.1ホストって感じだけど、中身を知れば知る程いい意味でそれにそぐわない真面目な人だなって思った。

だからこそ、なんでホストなんかやってるんだろうとか、何であっくんの所に来たんだろうとか疑問だらけで、人って見た目じゃ何も分からないんだなって思った。

どんな過去があって何を抱えてて、どんな人なのか…

あっくんも真壁まかべさんも充彦みつひこくんもあの本条ほんじょうも…
親友である颯太そうた真琴まことも…

そして龍士も―――
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