十六夜の月

むらさきおいも

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本当のこと(斗亜)

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あの後、俺はすぐにあっくんに助けを求め、充彦みつひこくんとあっくんが直ぐさま隣町まで駆けつけてくれた。

ボロボロになった龍士りゅうじを見つけた時、周りにはもう誰もいなかったけど何をされたのかは明確で、その酷い有様に言葉を失った。

最初は俺が襲われてたから龍士が助けに来てくれたんだって思ったけど、あの口ぶりからすると恐らく龍士とあの男は知り合いなんだろう。 

逃げろって言われたあの時、本当はこのまま離れるなんて絶対に嫌だって心底思ったんだ。

だけど、俺一人残ったところで何もできやしない…

俺にもっと力があれば…
もっと強ければ龍士を助けられたかもしれないのに…
そう思うと悔しくて仕方なかった。

そして、殆ど意識のない傷だらけの龍士は真壁まかべさんの治療を受ける為、直ぐさま診療室へと運ばれて行き、俺は別の部屋で充彦くんと二人話をする事になった。


「お前ら何であんな所にいたんだよ…」

「俺は…颯太そうたん家…行こうと思って…」

「あんな時間に?」

「うん…」

「龍士と一緒じゃなかったって事?」

「…うん。俺が颯太ん家行く途中、急に絡まれて…それで龍士が助けに来てくれて…それで…」

「ふぅん…てか、龍士と何かあったの?」

「えっ!?」

「だって、家帰ってなかったんだろ?」

「…うん」


龍士と何かがあったと言うより、これは俺の個人的な問題で…この今の心境を充彦くんに話していいのか悩んだ。

充彦くんは龍士と仲が良いみたいだし、もしかしたら俺があの事を知ってるってバレたら何かされるかもしれない。

だけど、ここをハッキリさせない事には俺のモヤモヤもずっとこのままだし、多分ずっと辛いままだ。

絶対何か理由があるはずだし、あっくんが俺を裏切るはずがない。
そう覚悟を決めて、俺は充彦くんに全てを話すことにした。


「ねぇ…龍士て人殺しなの?」

「…っ、それ…っ、誰から聞いた?」


充彦くんの表情が変わった。

多分嘘じゃないんだ…
そうと分かると俺は、さっきよりも気を引き締めて本題に入った。


本条ほんじょうが…龍士の妹と同じ高校だったから知ってるって。この前、呼び出されて…それで…っ」

かなでが同じ高校!?そうか…ちょうど莉緒りお同級タメだったのか…」

「ねぇ、充彦くん…っ、ほんとなの!?」


俺の問いかけに充彦くんは黙ったまま眉をしかめ、少し考えたのち髪をかきあげながら俺の目を見て答えた。


「…あぁ、本当だよ」

「じゃ…じゃあ、妹もそのせいで自殺したの…!?龍士が妹の彼氏を殺したから!?」

「は?それは違うっ!龍士は彼女を誰よりも大事に思ってた!龍士が殺したのは彼氏なんかじゃないっ!」


いつも優しい充彦くんの興奮した態度に驚き少し身構えると、充彦くんがそんな俺に気付いたのか、少しずつ冷静さを取り戻す。

だけど頭を抱え黙り込んでしまった充彦くん…

このまま真実を知らなければ、俺の中で龍士は本当にただの人殺しになってしまう。

違うなら違うってちゃんと言ってよ!
真実が知りたい…っ
そう思って勇気を振り絞って充彦くんに再び問いかけた。


「じゃあ誰を殺したの…?龍士は罪もない人を殺したの!?」

「違う…っ!龍士は妹を守ったんだ…自分の…父親から…っ」

「え…っ」

「妹は…実の父親にレイプされたんだ…だから龍士はそれを止めさせる為に父親を…っ」


返す言葉が見つからなかった。
父親が娘にそんな事を…

信じられない―――
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