十六夜の月

むらさきおいも

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「でも、じゃあなんで妹は自殺なんかしたのっ!?」

龍士りゅうじに見られたのがショックだったんだろう…好きだったから。それから彼女の心は壊れてしまって…救えなかったって。龍士はずっと後悔してる」

「好き…って…」

「…お互い…想い合ってたんだ」

「兄妹…なのに…?」


充彦みつひこくんはため息をついて、また黙って俯いてしまった。

俺には兄弟がいないから分からないけど、そんなの普通じゃないって事くらいはわかる。

でも俺はその理解し難い真実よりも、写真を眺めながら泣いてた龍士を思い出して、きっとまだ妹の事が好きなんだ…と言う、嫉妬にも似た感情が自分の中にふつふつと湧き上がって来るのを感じると、何だか悔しくて仕方なかった。


「龍士…全然悪くないじゃん…」

「…でも人を殺めてしまったんだ。それはどんなに正当な理由があっても悪い事なんだよ…わかるでしょ?」

「…っ、でも…っ、そんなの可哀想じゃんっ」

「怖くないのか?」

「怖いわけ…ないじゃんっ…」

「妹の事も…軽蔑しないのか…?」

「じゃあ充彦くんは?充彦くんは龍士の事、軽蔑してるの?」

「…あぁ、そうだよな。してないな」

「俺もしないよ…」


そう言うと充彦くんは眉間に寄せたシワを解いてニコッと笑い、大きな手で俺の頭をポンポンと撫でてくれた。

充彦くんも、龍士の事が好きなんだ…


「あ、そうだ。相手どんな奴だったか覚えてるか!?」

「あぁ、うん。見るからにチンピラで…何か龍士と知り合いっぽかった。三上って呼んでたし、契約違反とかなんとか言ってて…」

「契約違反…?」

「うん。…あ、そういえば…首の辺りに刺青があった」

「首に刺青…まさか…っ、そっかだから…でも、なんで今更…」

「充彦くん…?」

「ん?あ、ごめん…龍士は手出してないよな?」

「うん、殴ったりはしてない。でも…何で?」

「あぁ…向こうの組と色々あってな」

「そう…なんだ…」


一つ知れたと思ったらまた、知らない龍士が顔を出す。
なかなか埋まらない空白が、俺をたまらなく不安にさせるんだ―――


斗亜とあ…?」

「…っ、ん?」

「龍士の事…好きか?」

「うん………あ、えっ?好きって…あの、普通にっ…///」

「ふふっ、わかってるよ。これからも龍士の事頼むな」

「んぅ…でも俺、龍士の為に何も出来てないよ」

「何もしなくてもいいから、一緒にいてやってよ。多分喜ぶから」

「ほんと?」

「あぁ、本当」

「うん、わかった。俺…まず龍士に謝らなきゃ…」


そう思ったら無性に龍士に会いたくなった。
会って家に帰らなかったこと事を、早く謝らなきゃ。
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