十六夜の月

むらさきおいも

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決意(龍士)

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次の日、目覚めた俺が見たのはいつもの見慣れた部屋ではなく、消毒液の臭いがする和室だった。

身体を起こそうにも、腕や腹に力を入れると信じられないくらいの激痛が走り、思わずデカい声を上げてしまった。


「い"っ!あ"…」

龍士りゅうじ!?」

「く…っ、痛ってぇ…」

「無理すんなよ…ったく」


俺の叫び声で部屋に飛び込んできた充彦みつひこは、俺の状況を確認すると何事も無かったとわかったのか大きくため息をついてその場に座った。


「大丈夫?」

「ん…大丈夫では無いけど…大丈夫…ははっ…」

「はぁ…何で一人で乗り込んだんだよ。しかもあっちの島に」

「いや、だってさぁ…咄嗟に動いちゃったのよ」

「それは敦史あつしさんの大事な預かり物だから?それとも…」

「え…っ?あぁ、嫌なんだよ。俺の目の前で大切な人が傷つけられるのはさ」

「そっか…」


もう誰も苦しませたくないし失いたくない。
まして斗亜とあはまだ高校生だ。

守って貰うべき時に守って貰えなくて辛い思いをしてるんだから尚更、俺があいつを守ってやりたいんだ。

なのに…っ―――


「なぁ龍士。かなで莉緒りおが同じ高校だったって知ってたか?」

「え…?知らない…」

「どうやら噂レベルで聞いたあの話を奏が斗亜に吹き込んだみたいでさ…そんで帰るの渋ってたんだって」

「そ…か…」


噂話にせよいい話では無いことは確かだし、斗亜の不安を煽るには十分すぎる。

前科持ちの…それも殺人を犯した赤の他人と一緒にひとつ屋根の下暮らすなんて、普通なら怖くて仕方ないだろう。

避けられて当然だ…


「それで…?どこまで知ってんの?斗亜…」

「俺が…全部話した…」

「えっ、全部って…」

「ごめん…っ。でも、奏が話した事がデタラメだったからっ…それは違うって、思わず…」

「はぁ…そっか、知られちゃったかぁ…」

「ごめん…」

「ううん、いいよ。もうほぼバレてたんだろうし…ホントの事だし?で、斗亜は?もう俺とは住みたくないって?」

「いや、むしろ謝りたいってさ」

「…っ、あいつ…」

「良い子だよ…本当に…」


だからこそ、俺じゃダメなんだ…
あんな素直でいい子が俺なんかと一緒にいたら、また変な事に巻き込まれかねないだろう?

普通に過ごしていれば、こんなに怖い思いなんてしなくて済んだはずなのに。

このまま俺の事、嫌いになって軽蔑してくれたら良かったのに…
そうすれば突き放さずに離れられた。

ボコボコにされた後、あいつが言った言葉。
戻ってくれば斗亜には手を出さない…

逆を言うなら、俺がここにいれば斗亜に被害が及ぶかもしれないってことだろ。

あっちの組の体制が脆弱化してるのは俺も知ってた。

この際ぶっ潰してしまうのもありだと思ったけど、トップの力はまだまだ強くて契約は無視できない。

俺は自由に動けないし弱みを握られた今、こっちに何をしかけてくるかわかったもんじゃない。

斗亜に危害が加わる前に、俺が斗亜にこれ以上ハマる前に、斗亜が俺に依存する前に…

俺は神原かんばら組を抜けなければならない、そう思ったんだ。


「龍士…あいつら何で斗亜を狙ったんだと思う?まさか戦争仕掛けてくるなんて事ないよな?」

「…さぁな」


あいつが単独でやってる事ならば、おそらく狙いは俺だ…
神原組に何か迷惑がかかる事もないだろう。

ただ裏で何を企んでいるのか分からないから、それを探るのにもいい機会かもしれない。

敦史、面倒みきれなくて悪ぃな。

充彦、助けてくれてありがとう。

斗亜、一緒にいてやれなくてごめん、守ってやれなくてごめん。


だけど俺、お前の事―――
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