十六夜の月

むらさきおいも

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好意

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次の日、充彦みつひこ敦史あつしの部屋に斗亜とあを呼びに行くと、斗亜は充彦を待たず一人で部屋の中に飛び込んできた。


龍士りゅうじ!!」

「おぅ、大丈夫だったか?」

「龍士こそ…っ、俺のせいで…っ」

「斗亜のせいじゃねぇから…気にすんな」

「でもっ…俺が颯太そうたん家に行こうとしなければこんな事には…それに疑ったりしてごめん。俺、龍士の事何にも知らなくて怖いって思っちゃって…」

「そりゃ怖いよな…こっちこそごめんな。こんな奴が同居人で」

「そんな事ないっ!龍士は悪くないじゃんっ…」

「でも…俺は…っ」

「気にしないっ、俺そんなのもう気にしないからっ!!」


俺の布団をぎゅっと握りしめながら、嘘偽りのない綺麗な瞳が真っ直ぐ俺を見つめる。

その瞳に俺はどう写っているんだろう…

思わず抱きしめたくなるくらいに愛おしい斗亜にそっと手を伸ばすけれど、こんなにも汚れてしまった俺の手で…それを知ってしまった斗亜に触れる事は罪な様な気がして思わず手を引っ込めた。

すると斗亜、は布団から手を離し思いっきり俺に抱きついてきた。

思わぬ斗亜の行動に行き場のない手が宙に浮いたまま固まってると、後から戻ってきた充彦がそれを見て俺に微笑みかけてくる。

大丈夫…そう言われてるような気がして、ようやくそっと…本当にそっとゆっくり斗亜の背中をポンポンと撫でた。


「あ…ありがとう。斗亜…でも、やっぱり怖いだろ…?」

「怖くないっ!俺、龍士の事好きっ!」

「へっ…?/////」


思わぬ斗亜からの告白にまた行き場の無くなった手が宙を彷徨い、あたふたする俺を見ながら充彦が腹を抱えて笑っていた。


「はははっ!龍士、顔っ!何だよその情けねぇ顔…っ」

「あ…や、だって…」

「俺、龍士の事好きだよ。あっくんも充彦くんも好きだけど龍士の事もめっちゃ好き!!」


あぁ、そっか…そうだよなぁ…
一瞬、本気で浮かれた自分がめちゃくちゃ恥ずかしい…

でも、単純に嬉しい。
こんな自分を好きになってくれるなんて、思ってなかったから。

回しそびれた手をそっと斗亜の背中に回しぎゅっと抱きしめると、斗亜も負けじと密着して来るから、さすがに理性が保てそうもなくなってきて斗亜の背中をポンポンと叩いた。


「ありがとう…俺も好きだよ斗亜」

「んふっ、嬉しい」


あぁ…撃ち抜かれた…完全に撃ち抜かれた。

離して欲しくてポンポンと合図したのに、更に強まるハグにもうどうにでもなれと言わんばかりにデレた顔が戻らない。


「斗亜ぁ、そろそろ龍士の事離してやんねぇと襲われるぞ?」


充彦のその言葉にやっと何かを察してくれたのか、斗亜の身体が俺からすっと離れた。


「変な事言うなよ…充彦ぉ。斗亜が怖がるだろ!?」

「いや、実際止めなかったら危なかっただろ」

「うん、まぁ…確かに…」

「なっ、なに!?どういう事!?」

「何でもないよ、もっかいハグする?」

「…っ////も、もうしないっ!」


可愛いなぁ、斗亜…

妹も可愛かったけど、もし俺にこんな弟がいたら妹以上に溺愛したかな…

なんてほのぼのとした感情の裏に、ふと普通ではありえないであろう歪んだ感情が俺の中に潜んでる事に改めて気付きゾッとした。

好きになっちゃいけない人を好きになる自分がいる…

斗亜は他人だけど普通の男の子だ。
やっぱり俺はどっか人とズレてるんだろう…

この感情は絶対に表に出しちゃダメだ。
斗亜を巻き込んじゃいけない、やっぱり俺はここにいちゃダメだ。

その想いが強くなると、浮かれている場合じゃないと支度を始め、まだ痛む身体を引きずって一先ず斗亜と一緒に自宅に帰ってきた。


「斗亜ぁ?今日バイトは?」

「うん、あるけど?」

「じゃあ、迎えに行くから」

「いいよ別に」

「いや、昨日のこともあるし…心配だから」

「いいって…」

「斗亜…」

「ん?」

「いや…何でもない。もう行く?」

「うん、いってきます…」

「おう…行ってらっしゃい」


俺の事、本当はどう思ってるのか…
そう聞きたかったけど、やっぱり聞けなかった。

反応を見るのが怖かったから…

どんなに綺麗事並べても悪人は悪人。
俺はもう、二度とお前みたいな綺麗な人間とは交われないんだ。

この薄汚れた手で斗亜を汚したくないから―――
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