十六夜の月

むらさきおいも

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ただ、そばに居たい(斗亜)

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あの時、龍士りゅうじが濁した言葉が妙に気になったが、深く追求する事なく家を出た。

だけど最後に見た龍士がとてもな悲しそうに見えて、今にも消えてしまいそうで、本当は迎えにも来ないんじゃないかって不安で仕方なかった。


斗亜とあくん…何か浮かない顔してるね?」

「そう…?」

「悩み事?」

「うん…ちょっとな…」

「恋愛相談なら乗ってあげてもいいよっ!僕ね、とうとう彼女できたんだぁ♡」


バイト中なのに、嬉しそうにニヤニヤと鼻の下を伸ばす真琴まこと
俺は今、それどころじゃないんだよ…と思いながら上の空で返事を返す。


「へぇ…そうなんだ…」

「ちょっとぉ…何その興味無さそうな感じ…」

「ん…?だって興味ねぇもん…」

「ひっどぉーい!!斗亜くん、そんなんじゃ一生彼女出来ないからねっ!」

「はぁ、彼女ねぇ…」


客のこないコンビニで男子高生二人が話すことと言ったら、下ネタかこんなどうでもいい恋バナ位しかないだろう。

世間一般の男子が持つべきものは彼女…だよな。

でも俺はどうなんだろう…
あれからずっと考えてるけど、俺があっくんや颯太そうたに抱く感情と龍士に対する感情は似て非なるものなのか。

それは颯太が充彦みつひこくんに抱く感情と近いんじゃないだろうか…
と言うこと。

でもこんな話、真琴には出来ないしな。

そして、ようやくバイトが終わる頃、時間になっても龍士が来る気配はなくて、俺は何度も携帯を確認しながら仕方なくお店を出ると、店の脇にパーカーのフードを被ったまましゃがみこんでタバコをふかしてる龍士を見つけた。

俺は心底ほっとして胸をなでおろし、龍士のパーカーのフードをずるっと引き剥がした。


「あ"!?」

「…っ、俺だよ」

「あぁ、斗亜か…ごめん」


立ち上がった龍士は思わずビクッとした俺に躊躇したのか、頭に触れようとした手を下げてポケットに突っ込んだ。


「来なくても良かったのに…」


心にも無いことを言った。
本当は来てくれて嬉しかったのに…


「別にいいだろ?」

「何か…あったの?」

「えっ…何で…?」

「何か…変だよ…?いつもと違う…」

「そんなことねぇよ…帰ろ?」

「うん…」


タバコを片手に俺より先を歩く龍士の後ろ姿を見てると、このままどっかに行ってしまいそうで、俺は慌てて龍士の服の裾を引っ張った。


「おっ?」

「早い…」

「あ、ごめん…」


そう言うと龍士は俺の左側に着いて、何事も無かったかのようにタバコをふかしながらゆっくりと歩き出すけど、何故か俺はこの裾を離せないでいた。

すると龍士は右手に持っていたタバコを左手に持ち変え、俺の目の前に手のひらを広げた。


「…手、繋ぐ…?」

「ば、ばかっ!繋がねぇよっ!」

「ははっ、だよなぁ…」


思わず全力で拒否してしまった俺に対してスっと目を逸らし、龍士はすぐにその手をポッケに閉まってしまった。

その反応はいつものふざけた龍士とは違ってて、もしかして傷つけてしまったんじゃないかと凄く苦しくなった。

だから俺は龍士に聞こえるように言い訳を呟いた。


「だって…恥ずいじゃん…」

「誰も見てねぇよ」


何だろう…何でこんなドキドキするんだろう。
龍士は男なのに…

だけどこの手を掴まなかったら、本当に龍士がどっか行っちゃいそうな気がして、俺は龍士のポッケに手を突っ込んで子指を掴んだ。


「えっ…」

「見えないからいい…」

「ふふっ…控えめだな」

「うっせぇ…」

「ちゃんと繋いでも…いい?」

「うん…////」


そして、龍士が広げた手のひらに俺の手のひらを重ね夜道を歩いく…

相変わらずタバコをふかしながら夜空に昇っていく煙と一緒に龍士の横顔を眺めると、手を繋いでるのにも関わらず俺にはやっぱりどこか寂しそうに見えたんだ。

家に着くと、軽くご飯を食べてお風呂に入り髪を乾かしてもらう。

いつもと変わらない夜のルーティーンも、今日は何となく緊張して落ち着かない。


「今日仕事…だよね?」

「ん?…あぁそうだな…」

「何時頃帰ってくる?」

「えっ?あぁ、朝方…かな…」

「そっか…」


ドライヤーの音が止むと、俺は振り返り龍士の目を見た。
龍士の瞳はゆらゆらと揺れていて、それが俺の不安を煽る。


「帰ってくるよね?」

「えっ?あ、あぁ帰るよ…?」

「…龍士」

「ん?」


何だかわからないけど、無性に龍士を抱きしめたい衝動にかられ、俺はソファーに座る龍士に乗っかる形で思いきり龍士を抱きしめた。


「へっ!?ちょ、斗亜…っ///」

「少しだけ…少しだけこうさせて…」

「あ、あぁ…」
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