十六夜の月

むらさきおいも

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犯した罪の重さ(奏)

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俺の手の方にぽたぽたと血液が流れてくる。

本当に…

やってしまった―――


慌ててナイフを引き抜いた俺の手は震えていて、そのまま固まって動かない。

奴は脇腹を押さえ蹲り、俺を睨みつけた。


「うぅっ…てんめぇ…」

かなで…っ、にしてんだバカ…っ」

「…っりゅ…く…俺っ…」

「早く帰れって言ったろ…っ」

「せやかて…っ、せやかてりゅうくんがぁっ…」


その時、バタバタと外が騒がしくなり部屋の扉が勢いよく開き、俺を呼ぶ声が聞こえた。


「奏っ!!」

大輝たいき…っ!?」

「…っ、何してんだよ…奏」

「う…っ、大輝ぃ…」


大輝の声が聞こえて大輝の姿を確認しても尚、震えは止まらなくて、両手で握ってるナイフを離す事も出来ない。

刺してしまった相手は蹲ったまま動かないし…

どうしよう、俺…大変な事してしもうた。


「どうしよ…どうしよ大輝っ…俺、おれ…っ」

「奏、落ち着いて。ナイフ離して?」

「うぅ…っ、出来ひん…っ、力がっ…」


頭では離したいと思ってるのに体が全く言うことを効かなくて、余計に手に力が入り離す事が出来ない。

大袈裟にガタガタ震えながら、苦しくて膝から崩れ落ちる俺を大輝が後ろから抱きしめてくれて、真っ赤に染まる俺の両手ぎゅっと握りしめてくれた。


「大丈夫…大丈夫だから、力抜いて」

「う…っ、ふぅ…はぁ…っ」


徐々に力が抜けて手の中からナイフがするりと抜け落ちると、大輝の手も俺の手も真っ赤で、自分のした事が怖くて涙が止まらなくて呼吸が荒くなって苦しい。


「はぁ…っ、はぁ…っ、大輝っ、大輝…っ」

「大丈夫、ちゃんといるから…」


後ろにいた大輝が前から俺を抱きしめてくれて、俺はやっと全てを大輝に委ねることが出来た。

そして、充くんが一目散に龍くんに駆け寄ると、今にも泣きそうな顔して心配そうに龍くんを見つめ、壊れ物を扱うかのように優しく包み込んだ。


「龍士…っ、ごめんな…っ」

「…に言ってんだよ…充彦のせいじゃない…」

「良かった、二人とも無事で…。あ、無事でもないか…ははっ」

「敦史さん、笑えないっす…」


一人微笑む敦史さんに、充くんが真顔で返事を返す。

龍くんは助かった…
それで良かったけど、俺は…?

俺はこの先どうすれば―――


「敦史さんっ、俺…っ、どないしよ…っ」

「どの道、無事に済ますつもりなんてなかったけど、まさか奏がやっちゃうとはねぇ…」

「死んだん…?この人…っ、俺…が...」


頭の中が真っ白になった…
俺は人殺し…殺人犯になるのか!?


「…っ、俺がやった…それでいいだろ…っ」

「龍くん、何言うてんの…っ!?」

「別に…今更、殺しの一つや二つ…」

「…っ、龍士。それ以上言わないで…っ」


目に涙を浮かべながら充くんが龍くんを抱きしめるから、俺は俺の罪をちゃんと償わなあかんと、大輝にしがみつきながらも覚悟を決めた。


「とりあえずこいつは俺が何とかする。みんなは先に出て?」

「でもっ…」

「充彦、後はいいから。早くしないと龍士も限界だろ」

「…っ、分りました。先に戻ってます」


敦史さんの指示で俺ら四人は先にこの部屋を出ると、充くんの運転で事務所へと戻った。

後部座席のシートを倒して龍くんを寝かせると、その隣に俺が座り助手席に大輝が座った。

隣の龍くんは出血は少ないもののじんわりと服に血が滲み、痛みに顔を歪めずっと苦しそうに呼吸をしている。

俺はそんな龍くんの手を握ろうとしたけど、変色して赤黒くなった自分の手を見てハッとした。

こんな手で龍くんに触れないって…

斗亜くんにはもう会わないって言った龍くんの気持ちが、今更痛いほど身に染みてわかったんだ。

住む世界が違う…
もう、俺も大輝とは仲良くで出来ひん。

こんなに汚れてしまった手で、また、触れることなんて出来るわけないやろ。

せっかく仲良うなれると思ったのに…

けど、あの時はもうああするしかなかったんや―――
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