十六夜の月

むらさきおいも

文字の大きさ
113 / 136

真実とは(真壁)

しおりを挟む
その日の夜、斗亜とあはずっと塞ぎ込んでいたけど、俺はただただ慰めることしか出来なかった。

龍士りゅうじが出ていったのは斗亜のせいじゃない。
そう言って聞かせたけど、俺が思うにあの話の中に何かがあったことには違いないんだろう。

龍士にとって、父親と言うワードが良くなかったのか…
山崎って人を知ってるのか…

そんな事を斗亜にも聞かれたけど、俺は何も知らないし何も言えなかった。

もう夜も遅いし、龍士は充彦みつひこの所に泊まるらしいという事を伝えて、俺は斗亜が眠るまで待ってから一先ず家に帰った。

そして次の日、俺は昨日の話をしなければとすぐさま敦史あつしの部屋を訪れた。


「敦史、おはよう」

圭吾けいご、おはよう。昨日は悪かったな、斗亜の面倒まで見させて」

「いや全然。それより何かわかった?山崎って男のこと」

「あぁ、親父が言うにはあんまりよく覚えてないが、何年か前に殺されたって」

「えっ、殺された!?じゃあ斗亜の父親はもうこの世にはいないの!?」

「もしその山崎が父親ならそういうことになるな」


父親だと思ってた人が実は赤の他人で、今度は父親だと思われる人がもうこの世にはいないだなんて…

それに殺されたってどういう事!?
龍士はその事について何か知ってるのか?


「あのさ、その山崎って男の事なんだけど…龍士の知り合いって事はない?」

「いや、どうだろう。…けど何で龍士?」

「それがどうやら昨日の発作、その話が引き金になったみたいで…」


俺がそう言いかけると、敦史の顔色が急に変わって考え込むような仕草の後、静かに話し始めた。


「思い出した…山崎。どっかで聞いた事あると思ったが…龍士の本名が山崎龍士。そして龍士の父親ももうこの世にはいない」

「えっ、じゃあ同一人物って可能性もあるって事!?」

「その可能性は高い。もし本当にそうなら龍士には相当キツイだろうな」


斗亜の父親が自分の父親と同じ山崎という人物だということに対して過剰に反応したんだとしたら、龍士にとって何がそんなに辛かったんだろう。

血の繋がった兄弟であることで、恋愛感情を持つことが良くない事だから?
それとも、自分の父親が母親とは別の女性との間に関係を持ったことが許せなかった…とか?

龍士の父親が誠実な人だったのなら、信じられない事だよな。


「ねぇ、敦史は龍士の父親がどんな人だったのか知ってるの?ノブさんが言う山崎って人は相当ヤバいやつだって話だったじゃない?」

「…龍士の父親は、ノブさんが言う山崎そのものだよ。見境なく女に手を出すような男。だから龍士はそんな父親が斗亜の父親かもれないと言う事がショックだったんだと思う」


なるほど、そっちか…
だとしたら、龍士の父親もその山崎だとしたら彼もまた殺されたと言うこと!?


「敦史、龍士の父親は何で亡くなったか知らないの?」


俺の事質問に敦史は目を瞑り、深く溜息をつき俯き黙ってしまった。


「敦史…?」

「…龍士が殺ったんだ。妹が父親に襲われて、それで争った結果…まぁ、打ちどころが悪かったって話だ。龍士に殺意があった訳じゃない」


そうだ、あの時龍士が斗亜に言ったあの言葉。
『人を殺した』って―――

あれはそう言う事だったんだ。

自分の父親ってだけならまだしも、そんな人が斗亜の父親でもあるとするなら龍士の心中は複雑すぎるに違いない。

でもこれって、ハッキリさせた方がいい事なんだろうか...

真実が分かってしまうことで二人の関係や心が壊れてしまうくらいなら、いっそ知らない方がいいんじゃ…


「ねぇ、敦史。真実がわかるまで調べるの?」

「え?」

「調べてどうなるの?って思っちゃって。斗亜がどうしても知りたいって言うなら別だけど、それを望んでるのかな?…って」

「あぁ、そうだな。でも俺は何も知らないより知っておきたい。そうじゃないと分かればそれに超したことはないし、もしそうであってもそれを知った上で斗亜を支えてやりたいから」

「そっか。うん、そうだよね…」


この場合、知るのに一番手っ取り早い方法はDNA鑑定だという事を敦史が知らないわけがない。

なのにそれを俺に提案してこないって事は、やっぱり敦史も真実を突きつけられるのが怖いんじゃないか?と思った。

そこまでしてしまったら2人にだって逃げ場が無くなる。

それにいくら敦史でも、2人に何も言わずにそれを実行するなんて事はしたくないんだろう。

とは言え、これからどうするんだろう。
龍士は斗亜のいる家に戻れるのだろうか。

斗亜は、今まで通り龍士と暮らすことができるのだろうか…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

うちの鬼上司が僕だけに甘い理由(わけ)

藤吉めぐみ
BL
匠が勤める建築デザイン事務所には、洗練された見た目と完璧な仕事で社員誰もが憧れる一流デザイナーの克彦がいる。しかしとにかく仕事に厳しい姿に、陰で『鬼上司』と呼ばれていた。 そんな克彦が家に帰ると甘く変わることを知っているのは、同棲している恋人の匠だけだった。 けれどこの関係の始まりはお互いに惹かれ合って始めたものではない。 始めは甘やかされることが嬉しかったが、次第に自分の気持ちも克彦の気持ちも分からなくなり、この関係に不安を感じるようになる匠だが――

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

処理中です...