君色 My Dream

ヒマリ

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花言葉とネックレス

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車内でアタフタと一人焦っていると、後部座席の扉が開かれた。
え・・・・?
そこにはさっきのラッピングされた指輪と赤いキクの花束を持った彼の姿が!?
お、お花が増えてる・・・・・・?
彼は花束を私に押し付けてくる。
オズオズと花を受け取る。
「え、えと、ありがとうございます?」
綺麗で立派な赤いキクの花束からはキクの良い香りがする。
「おい」
花にうっとりしているのもつかの間!
現実に引き戻される。
「は、はい」
彼の頬は赤く染まり、心なしか彼に落ち着きがない。
???
「赤いキクの花言葉知ってるか?」
赤いキクの花言葉?
私、植物のこと詳しくないし、ましてや花言葉なんて知っている筈がない。
ブンブンと首を横に振ると、彼は一層顔を赤く染める。
そして、決心したかのように車に乗り込み、扉を閉めた。
これで完全に私達二人きりの世界になる。
彼はラッピングを全て外し、中の指輪を取り出すとそれを私の目の前に持ってきた。
「赤いキクの花言葉は、I love you つまり、あなたを愛しています、だ」
・・・・・・・・はい!?
な、ななななな、なんの冗談!?それともなんかのドッキリ?
そう思ってしまうほど彼の告白には現実味がなかった。
「別に今すぐ返事が聞きたいかって言ったら、そうじゃねぇ。返事なんて分かりきってるし。まあ、何て言うか知っておいて欲しかった、ってだけだ。もちろん、お前は最終的には手に入れ、俺の・・・・俺だけの女にする。だから、今回のことはただの予告とでも思ってくれていい」
淡々と語る彼の言葉に脳がついていかない。
まるで知らない言葉を延々と聴かされている気分に近い。
「ちょっ、ちょーっと待ってください!」
「ん?なんだ?」
「あの、私、もういっぱいいっぱいで正直、後々の方、黒須さんが何て言ってるか理解が追いついて来ないです!」
「・・・・はぁ。そうか。なら、仕方ない。今日はもう帰らせよう。ただし、その花とこの指輪は受け取れ」
えぇ!?こんな高価なもの・・・・・・!
「つべこべ言わずに受け取れ!分かったか?」
彼の目には反論は許さないというような鋭さがあった。
で、でも~!
「あのお花はありがたく頂戴します。でも、指輪は受け取れません!先程も申し上げた通り、私にとって指輪は特別なものなんです!」
彼はいかにも不機嫌そうに眉間にシワを寄せたが、私も負けじと真っ直ぐに彼の目を見つめた。
数秒の沈黙のあと、彼は残念そうな顔をして、鞄に手を突っ込んだ。
???
「お前が今のように粘る可能性も考えてさっき、花を買うときについでに買っておいて正解だったな。だが、舞菜の指で輝くこの指輪を見れないのは残念だ」
一体なんのことを話して・・・・・?
彼が鞄から、取り出したのはネックレスの紐のような部分だけのものだった。
は?それと指輪と何の関係が?
不思議に思う私をよそに彼はそれに指輪を通した。
そして、私にそれをつけた。
あっという間に指輪がネックレスに大変身!?
彼はネックレスと化した指輪に口付けた。
おぉ!
「これでもう指輪じゃないから、持って帰れるな?」
ハッ!
そういうことだったのか!
だから、これを!
感心すると同時に一つの不安がよぎる。
ママはさておき、パパにこの指輪ネックレス(?)がバレたら、相当怒られそう・・・・・。
ま、でもネックレスだし、服の中に入れておけば、バレないか。
「あの黒須さ」
「あと黒須じゃなくて拓哉でいいし、敬語も鬱陶しいから、やめろ」
え、いや、でも一応黒須さんは目上の人だし・・・・。
「いいから、やめろ!じゃないと、取り引きをやめるように親父に言うぞ!」
ひぃ~!
それだけはご勘弁をー!
「じゃ、しゃあ、拓哉さん」
「ダメだ、拓哉で呼び捨てにしろ」
くぅ~!これでも頑張った方だけど・・・・・!
でも取り引きをやめられたら、うちは大打撃を受けてしまう!
取り引き中止だけはなんとか阻止しなくては!
「・・・・・た、たく、や。これでいいでしょ!?」
もう最後の方はヤケクソだった。
だが、拓哉は相当嬉しそう。
「ああ、それでいい」
無邪気な子供のように笑う拓哉をちょっと(かなり)、カッコいいなと思ってしまう自分がいた。

俺様でワガママでどうしようもなく、子供な拓哉だけど、私は・・・・・・・。
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