26 / 45
第25話
しおりを挟む
『再起動』
「ん……」
せっかく気分よく寝てたってのに、例の声で目が覚めた。
「セイラさん!」
すぐに誰かが駆け寄ってきたと思ったら、マーガレットだった。
「あれ? マーガレット。いつの間にこっちに来たんだ」
「違いますよ、セイラさん。あなたが帰って来たんです」
「は?」
よくよく見て見ると、確かにここ一ヶ月ほどで見慣れた大聖堂の自室である。
モールデン砦からここまで一週間の道のりだ。
つまり……一週間も寝こけてたってことか!?
「心配したんですよ? すぐにエルムス様をお呼びしますね」
返事も聞かずにマーガレットが飛び出していく。
「はぁー……寝過ぎて体がいてぇ……。腹も減った」
よたよたとした足取りで、着替えを仕舞ったタンスに近づいていく。
そして、ふと鏡の前で足を止めた。
一週間以上も食ってないんだ。
もしかしたらやつれてるかもしれない、と思って。
「は?」
そこに映っていたのは、見知らぬ女だった。
いや、目鼻立ちは見知った顔だが、髪の色と瞳の色が違っている。
「なんだ、これ……!?」
まるで小麦畑を思わせる金の髪と、透き通る空のような青い瞳。
どちらも、自分が持ち合わせていないないものだ。
「どうなってんのさ……?」
「セイラ!」
鏡の前で百面相していると、マーガレットとエルムスが部屋に入ってきた。
「おう、エルムス……うわっぷ」
「無事でよかった。もう目覚めないかと」
急に抱きすくめられ、大混乱するアタシの耳元で優しい声が聞こえた。
「問題ないよ。腹は減ったけどね」
「すぐに準備しますね」
「ああ、ガッツリたのむよ」
エルムスに抱き着かれたまま、マーガレットに頼む。
「ほら、エルムス。いつまでそうやってるんだい? あんまり長いと金とるよ」
「ああ、よかった。セイラのままだ」
「アタシはアタシさ」
抱擁を解いたエルムスがふわりと笑う。
その笑顔に、アタシもうっかりと笑い返してしまった。
それに赤面されるとは思わなかったが。
「あの後、どうなったんだい?」
「ええと、順を追って説明しますね」
モールデン砦の戦いで魔物を殲滅したアタシは、意識を失って倒れた。ここまではなんとなく覚えている。
事の顛末は、すぐに大聖堂と王都に送られ、それであの謎の力を発揮したアタシは、聖女だということになったらしい。
大聖堂に戻って来たのは数日前で、神殿騎士の一個大隊が護衛に着いたとエルムスは説明した。
「姿は一週間ほどで徐々に変わっていきました。古に語られる聖女の姿にそっくりなんですよ、今のあなた」
一週間って。
エルムスの奴、どれだけアタシのそばに居たんだ?
「魔王軍はどうなった?」
「今のところ動きはないそうです。聖女が現れたので、魔王そのものが警戒しているのかもしれません」
「そうかい……」
とりあえず、モールデン砦の連中は無事ってわけか。
それを聞いて、アタシ胸をなでおろす。
これで全滅してたら目も当てられないからね……。
「ん……」
せっかく気分よく寝てたってのに、例の声で目が覚めた。
「セイラさん!」
すぐに誰かが駆け寄ってきたと思ったら、マーガレットだった。
「あれ? マーガレット。いつの間にこっちに来たんだ」
「違いますよ、セイラさん。あなたが帰って来たんです」
「は?」
よくよく見て見ると、確かにここ一ヶ月ほどで見慣れた大聖堂の自室である。
モールデン砦からここまで一週間の道のりだ。
つまり……一週間も寝こけてたってことか!?
「心配したんですよ? すぐにエルムス様をお呼びしますね」
返事も聞かずにマーガレットが飛び出していく。
「はぁー……寝過ぎて体がいてぇ……。腹も減った」
よたよたとした足取りで、着替えを仕舞ったタンスに近づいていく。
そして、ふと鏡の前で足を止めた。
一週間以上も食ってないんだ。
もしかしたらやつれてるかもしれない、と思って。
「は?」
そこに映っていたのは、見知らぬ女だった。
いや、目鼻立ちは見知った顔だが、髪の色と瞳の色が違っている。
「なんだ、これ……!?」
まるで小麦畑を思わせる金の髪と、透き通る空のような青い瞳。
どちらも、自分が持ち合わせていないないものだ。
「どうなってんのさ……?」
「セイラ!」
鏡の前で百面相していると、マーガレットとエルムスが部屋に入ってきた。
「おう、エルムス……うわっぷ」
「無事でよかった。もう目覚めないかと」
急に抱きすくめられ、大混乱するアタシの耳元で優しい声が聞こえた。
「問題ないよ。腹は減ったけどね」
「すぐに準備しますね」
「ああ、ガッツリたのむよ」
エルムスに抱き着かれたまま、マーガレットに頼む。
「ほら、エルムス。いつまでそうやってるんだい? あんまり長いと金とるよ」
「ああ、よかった。セイラのままだ」
「アタシはアタシさ」
抱擁を解いたエルムスがふわりと笑う。
その笑顔に、アタシもうっかりと笑い返してしまった。
それに赤面されるとは思わなかったが。
「あの後、どうなったんだい?」
「ええと、順を追って説明しますね」
モールデン砦の戦いで魔物を殲滅したアタシは、意識を失って倒れた。ここまではなんとなく覚えている。
事の顛末は、すぐに大聖堂と王都に送られ、それであの謎の力を発揮したアタシは、聖女だということになったらしい。
大聖堂に戻って来たのは数日前で、神殿騎士の一個大隊が護衛に着いたとエルムスは説明した。
「姿は一週間ほどで徐々に変わっていきました。古に語られる聖女の姿にそっくりなんですよ、今のあなた」
一週間って。
エルムスの奴、どれだけアタシのそばに居たんだ?
「魔王軍はどうなった?」
「今のところ動きはないそうです。聖女が現れたので、魔王そのものが警戒しているのかもしれません」
「そうかい……」
とりあえず、モールデン砦の連中は無事ってわけか。
それを聞いて、アタシ胸をなでおろす。
これで全滅してたら目も当てられないからね……。
1
あなたにおすすめの小説
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた
黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。
そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。
「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」
前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。
二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。
辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる