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9巻
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しおりを挟む■茨の城
魔王シリクの復活による『エルメリア事変』から三年が過ぎた。
多くの犠牲者を生み、今なお深い傷跡を残すあの出来事からしばらく。俺――☆1のアストルは、各地を巡り、その後始末をしたり、世界の危機たる『淘汰』に備えて様々な研究を行なったりして過ごしていた。
おかげで、いろいろな厄介事が絶えず身の回りにあって、今日もその一つに立ち会わねばならない。
「忘れ物、ない?」
学園都市ウェルスにある塔の入り口で、俺は妻のユユと向き合っていた。
この学園都市で〝賢人〟の肩書きを得た俺は、同じパーティに所属する双子のユユとミントを妻に迎え、この塔で慎ましやかに暮らしている。
☆1という最低の『アルカナ』を持つ者には、贅沢すぎる境遇と言えるだろう。
「大丈夫。あっても取りに帰ってくるよ」
「もう……そういうことじゃ、ないんだよ?」
俺の上着の襟を合わせながら、ユユが心配そうな目をこちらに向ける。
美しいストロベリーブロンドは出会った頃よりずいぶんと伸びており、ふわりとまとめられた髪がその細い肩に乗っている。
「なに、大丈夫さ。今回は会議に出席するだけだから」
「前もそんなこと言って、怪我して、帰ってきた」
「う、それは……」
痛いところをつかれた。
仕方あるまい……現地調査に向かった先で、魔王を崇拝するモーディア皇国の強行偵察部隊に出会ってしまったのだ。しかも運が悪いことに、そいつらは人ならざる化け物『悪性変異兵』を連れていた。
さらに、その時は俺ともう一人以外にまともに戦闘できる人間がいなかった。
加えて、その一人というのが護衛対象の要人だったのだから、仲間を庇って怪我をするのも仕方がないというものだ。
「やっぱり、ついて、行く?」
「いいや、大丈夫だ……うん、気を付けるよ。会議が終わったらすぐ帰ってくる」
「ん。よろしい」
「行ってきます」
軽く抱擁して囁くと、ユユは、〝行ってらっしゃい〟と返す。そんな彼女が愛くるしすぎて、あっという間に今日の会議に出たくなくなってしまった。
しかしながら、今後のことを決める重要な会議なので、行かざるを得ない。
俺は小さくユユに口づけして、頬を擦りつけてから離れる。
「……気を付けて。レンさん達によろしく」
レン――狼人族の侍、レンジュウロウも今回の会議に賢人の一人として参加が予定されている。俺も会うのは久しぶりのこととなる。
「ああ、冬至祭はこっちで過ごすように伝えるよ」
心底名残惜しいと思いつつも、俺は扉を開けて外へと向かう。
冬の冷えた空気がユユのいる塔を冷やさぬようにしっかりと扉を閉めて、俺は空を見上げた。
……やや曇天だが、空は明るい。
「じゃあ、行きますか」
そう独りごちてから目的地を強くイメージし、〈異空間跳躍〉の魔法を詠唱する。
最近よく使う魔法なので、もう慣れたものだ。
あらかじめ打ち込んであるアクセスポイントの概念的杭を掴み、引き寄せるようにして地脈を跳ぶ魔法。
現在、この魔法が使えるのは、おそらく世界で俺一人だけだろう。
「……っと」
くるりと世界が反転して……体が重力を感じるころには、俺は先ほどまでいた学園都市から遠く離れた王都エルメリアに到着していた。
◆
「お、来たな」
通称『楔の間』と呼ばれる俺のアクセスポイントを設置した部屋を出たところで、ばったりと旧友に出くわした。
出くわすというより、口ぶりからして俺を待っていたのだろうけど。
「ご機嫌麗しゅう、ヴァーミル侯爵閣下」
「よし、表に出ろ、アストル」
苦笑いを浮かべたヴァーミル侯爵ことリックが、俺の胸を小突く。
高位貴族の仲間入りを果たして一年も経つのに、行儀の悪い奴だ。
「お前がその気なら、アステリオス・魔導師・アルワース賢爵と呼んでもいいんだぞ?」
「勘弁してくれ。本人不在の内に貴族……しかも特別位にするなんて、横暴が過ぎる」
そう──田舎者☆1賢人であったはずの俺は、いつの間にか新生エルメリア王国で貴族にされていたのだ。
立場上、俺は〝ヴィクトール王の補佐兼相談役の賢人にして、王家の傍流血族〟という体になっている。
そうでもしないと、俺が超大型ダンジョンコアである『シェラタン・コア』を使用できる理由を説明できないからだ。それに、ヴィクトール王――ヴィーチャは、どうやら本当に俺を王の首のスペアにと考えているらしい。
しかし、『降臨の儀』で授けられる『アルカナ』の☆の数が多い者ほど優れているという価値観が一般的なこの世界において、☆1である俺が国の中央にいるのは、極めてイレギュラーなことだ。
エルメリア王国を動かす貴族の多くは俺の顔や素性を把握している者ばかりなので、現状では大きな問題にはなっていない様子である。しかし、もし俺の存在が明るみに出れば、国民感情的にまずいことになるかもしれない。
「お前はそう言うけどよ、お前がいなきゃ、国どころか世界ごと滅んでたんだぜ?」
「それは誇張が過ぎる。できることをしただけだ。それに、俺の働きなんて……たかが知れている」
リックの大袈裟な物言いに肩を竦める俺の背後から、新たな声が聞こえた。
「――ならば、私のやったことはさらにたかが知れているのだがね」
「ヴィクトール陛下……」
リックと共に素早く跪き、臣下の礼をとる。
これもここ数ヵ月で慣れたものだ。
「アストル、リック。ここは王城じゃないんだ……そう畏まらないでくれないだろうか」
「そうは言ってもですね、陛下」
「ここはアステリオス・魔導師・アルワース賢爵の『井戸屋敷』だ。この屋敷の決まりはどうだったかな? アストル」
「う……」
そう言われてしまえば、言葉に詰まって唸るしかない。
報賞としていつの間にか王都エルメリアの一等地の一画に建てられた、この小城じみた屋敷は、俺の……『アステリオス・魔導師・アルワース賢爵』の王都における拠点として機能している。
ただ、他の貴族の屋敷と違って、この屋敷には一つの決まりがある。
――この屋敷において、全ての人間は平等であり、貴賤を問わずその発言を許可されるものとする。
エルメリアには、国政への批判や王侯貴族への愚痴などは〝井戸に向かって語る〟というスラングがある。表立って言えないことは、外に漏れない井戸に向かって発散するしかないという暗喩だ。
それに倣って、この屋敷では誰もが平等で、誰でも誰に向かってでも自由に発言できるようにすると、俺とヴィーチャでルールを決めた。
そのため、この屋敷は貴族達から『井戸屋敷』などと呼ばれているのだ。
貴族連中にとっては度し難くも斬新に映るかもしれないが、なんてことはない……俺達のパーティのリーダーであるエインズの小屋敷と同じルールを敷いただけである。
俺にとってあの場所がいかに重要で、大切なものかを忘れないための戒めであるとともに、この屋敷に集まって行われる話し合いや相談が立場によって歪まないようにするための措置だ。
「ここでの私は、君達のいち友人であるはずなんだけどね?」
悪戯っぽく笑うヴィーチャに、小さなため息をついて俺は立ち上がる。
ついでに、跪いたままのリックも引き上げて……ダメだ、カチコチになっている。しばらくこのまま固まらせておこう。
「ヴィーチャには敵わないな」
「今回の議題は少しばかり面倒だからね。この屋敷の会議室を使わせてもらうよ」
言われなくてもその議題の内容は想像がつく。わざわざ国王が足を運ぶなんて、それ以外の理由がないからな。
「モーディア関連で動く……ってことか?」
「それもあるが、もう少し面倒だ。相談に乗ってほしい。連絡はしてあるから、諸侯も順次集まると思う。今のうちに屋敷に使用人を増やしてくれるか?」
「ああ、わかった」
ヴィーチャの要請に頷いて、俺は〝聞いていたな?〟と背後に声をかける。
「相変わらず悪魔使いが荒い。吾輩は使い魔であっても、召使いではないんだがね?」
執事姿の優男が俺の背後にゆらりと姿を現して、盛大にため息をついた。
「そう言わずに手伝ってくれ、ナナシ。あとでうんと甘い物を用意させるからさ」
「仕方ないな。我が主の頼みとあらば、断れないしね」
不満げに主人を見やりながら、魔力を溢れさせた悪魔のナナシは、パチンと指を鳴らす。
ナナシの魔力供給によって『絡繰使用人』が起動し、倉庫から続々と姿を見せた。その姿を横目に見ながら、俺達は別室へと向かう。
「いつ見ても不思議な光景だな」
『絡繰使用人』を見ながらそうこぼす国王に、悪魔執事が頷く。
「我が主は、妙ちきりんな魔法ばかりを生むのでね」
「実際、役に立っているだろう?」
『絡繰使用人』は、魔石を埋め込んだマネキン人形に『使用人妖精』を宿らせて、屋敷の雑用をやらせるために開発した魔法だ。
ヴィーチャがこの屋敷に常駐のメイドや執事を雇うというので、それを断るために用意した苦肉の策ではあるが、意外にもこの『井戸屋敷』の特性にマッチした。
何せ、うろついているのはゴーレムのようなものなので、情報が使用人づてに外部に漏れることはないし、〝変人魔法使いの屋敷〟という評判を広めるのにも一役買ってくれている。
……誰が変人かと抗議の一つもしたくなるが、貴族達と余計な関わりを持ちたくない俺としては、甘んじてその風評を受け入れざるを得ない。
「吾輩は、お客の出迎えに行ってくる」
「よろしく頼むよ、ナナシ」
すっかり人間姿の執事が板についたナナシが、優雅に一礼してその場を辞した。
出会ってからずいぶん経つが、相変わらずの記憶喪失であり、そのことについてもう諦めているような様子すらある。
……あるいは、全てを思い出してなお、俺のそばにいるのかもしれないが。
「さて、と。先に聞いておこうか。議題はなんだ?」
「そうだな、もうリックには伝えてあるんだが……もう一度説明しておこう」
俺に頷いて、ヴィーチャはいくつかの書簡をテーブルに並べた。
「右からモーディア皇国からの抗議書、真ん中がそれに関連して逃亡した元貴族達の連名による勧告文、左端にあるのがハルタ侯爵からの陳情となっている」
それを聞いた俺の口からため息が出たのは、仕方ないだろう。
三通とも全てモーディアに関することだ。
「気持ちはわかるぜ、相棒」
リックに肩を叩かれながら、俺はモーディア皇国からの抗議書を手に取り、ざっと目を通す。
抗議書の内容は、同盟国であるはずのエルメリア王国の突然の造反に対する抗議と、それに関する損害賠償および、領地の一部明け渡し、治外法権の認可など、多岐にわたっている。
早い話が、今は亡き第二王子リカルドが約束したことを守って、属国になれと言ってきているのだ。
これまで届いていたものとそう違わないが、今回はやや強硬手段を匂わせる文面に思える。
向こうも少し焦りが出てきたのかもしれない。
次に、元貴族達の勧告文に手を伸ばそうとして、思い留まる。
「これは読まなくてもいいか」
「一応目は通しておいてくれよ」
ヴィーチャにそう言われると、嫌でも目を通さざるを得ない。
クーデターを起こしたリカルド王子の尻馬に乗って……あるいは自分達だけ甘い汁を吸うために、早々にモーディア皇国へと亡命した貴族達。彼らがモーディア皇国の威を借りて、復興途上のエルメリア王国への帰還を計画している。
そして彼らは、現在の王国は正しい状況ではなく、モーディアと協力関係にある上級貴族の自分達が代わって統治するべき――つまり、ヴィクトール王は退位しろと勧告してきているのだ。
……自分達がモーディア皇国の駒にされているとはわかってはいるのだろうが、考えが甘すぎる。
いや、すでに『カーツの蛇』を仕込まれて、思考を操られている可能性が高い。もし、正気で言っているならなお性質が悪いが。
「んで、最後のは……ハルタ侯爵閣下か」
「ああ、例によってな。いい加減、頭の固い老人の相手するのも疲れるよ」
ヴィーチャが盛大にため息をついてみせる。
ハルタ侯爵は王国北西部を治める地方領主だ。家の歴史は古く、その資産や兵力は相当なものである。今回の騒動の際も、モーディア皇国による侵攻をいち早く察知して自領を守り切り、王都復興にも大きな援助を行なってくれた人格者だ。
しかし……いかんせん、彼は敬虔な十二神教信者だった。すなわち、☆至上主義者であり、一時は過激思想集団『カーツ』との繋がりすら疑われたこともある。
そんな彼が、常々上申してくる議題は、たった一つ。俺……つまり『アステリオス・魔導師・アルワース賢爵』についてだ。
俺はヴィーチャにつられてため息をつきながら、彼に応える。
「いや、ハルタ侯爵閣下のおっしゃることは、貴族としては至極まともだと思うよ」
「だが、それでは君に報いることができない上に……魔王シリクの思い通りだ。これから先、私達は世界を正常へと戻さなくてはならないんだからな」
ヴィーチャがそう眉根を寄せる。
「事を急げば亀裂が生じるよ、ヴィーチャ」
「だから、まずは目に見えて優秀なアストルを前に出しているんじゃないか」
「たかだか少しばかり魔法が得意なだけの田舎者だよ、俺は」
俺の言葉に、若きエルメリア王と旧友が小さなため息をつく。
今の言葉が俺の呪いじみた性質から出るものだと理解してくれているのだろうが、半分は本心でもあるのだ。
あまりにも、期待が重すぎる。
「それでもだ、アストル。陛下の考えも少しは汲んでくれよ」
リックが言う通り、ヴィーチャの考えたシナリオは、実際よくできている。
俺は王家の傍流筋の人間だが、☆1であったため廃嫡され、母親と共に里子に出された。しかし、途中で魔物に襲われ行方不明になり、その後母親と共に寒村で何も知らずに生き延びていた。
様々な冒険を経て学園都市初の☆1賢人となって国難に駆けつけ、その特別な魔法の力を使って王を助けた際、王家の血筋を引いていると判明。
王家の血筋であるために、☆1であるにもかかわらず、特異な能力を持っており、その力は☆に制限されるものではない。
今後は学園都市から『特異性存在型☆1』という、よくわからない言葉を使って有効なスキルを持った☆1を徐々に世間に露見させていき……いずれは☆1の人権獲得を数世代で完了させる。俺はその栄えある第一号となる。
これが、ヴィーチャが描いた筋書きだ。
しかし、ハルタ侯爵をはじめとして、これを受け入れられない人間は多く存在するし、現状に大きな不満を持つ☆1を刺激するかもしれない。
事は慎重に運ばねばならないだろう。
あまりに性急が過ぎれば、今後☆1の逆襲を恐れた支配階級が、逆に現在の☆1への強い支配や排斥を試みる可能性もある。
そのため、俺のような目に見える功績を持った……いや、ねつ造しやすい人間を前面に出さなくてはならないのだ。
それに、俺は『西の国』の学園都市に住む賢人だ。
大きな問題になりそうな時は、エルメリアから出てしまえば、ほとぼりを冷ますこともできる。
……こう言ってはなんだが、計画を進めるにあたり実に都合の良い人材なのだ、俺は。
「我が主。レンジュウロウ殿とチヨ殿が到着したよ。どこへ通そうか?」
元パーティーメンバーである二人の来訪を、ナナシが知らせる。
「ここへ通してくれ。あと、お茶のおかわりを人数分頼む」
「あとで手の空いた人形に届けさせる。ちなみに魔法で遠見を行なったが、ハルタ卿が到着するのは日の落ちる直前になりそうだ。物々しい武装行列で王都に向かってきているよ」
相変わらずの示威行動に、ややげんなりとする。
俺がいつまでも王の隣に居座るものだから、自分が軽んじられていると思い違いをしているのだろう。
「やれやれ……。まぁ、今回の会議でもう一度きちんと話し合うしかないな」
☆1の話など、きっと素直に聞いてはくれないだろうけど。
◆
続々と俺の屋敷──『井戸屋敷』に王国の要人が集結してくる。ラクウェイン侯爵とその息子のエインズ、レプトン卿、レイニード侯爵などなど。
彼らに随行した使用人もあわせて、普段は静かな『井戸屋敷』がにわかに活気づく。
「よお、アストル。元気にしてたか?」
「前に会ってからそう経ってないだろう、エインズ」
エインズと拳を打ち合わせて、笑みを交わす。
エインズは現在、王国直轄地の代理領主として活躍しており、それが『西の国』と近いこともあって、俺と会う機会はそれなりにある。
エインズ自身、若い頃に学園都市に留学していた時期もあり、西の国との折衝役にはちょうど良い人材なのだ。
「レンジュウロウ、少し毛が白くなったんじゃないか?」
「バカを申すな。冬毛に替わっただけのことじゃ」
エインズの軽口に、レンジュウロウが口角を上げて笑う。
「お主はどうだ、上手くやっておるのか?」
「ああ、やんちゃ坊主もな。将来が決まっちまってるってのも、可哀想な話だが」
エインズの息子であるソシウスは、この調子で行くとエルメリア王国貴族としての将来が確定している。
何しろ、今のエルメリア王国は空前絶後の人手不足だ。
かと言って、金を積んだだけの商人やら出自が怪しすぎる人間を貴族とするわけにはいかない。
特に今は、立て直しの重要な時期である。わざわざ獅子身中の虫を飼うことはない。
信用のおける人間を遊ばせている余裕はないのだ。
……何せ、俺のような☆1まで駆り出される始末なのだから。
きっとソシウスは次期ラクウェイン侯爵候補か、そのままエインズの王国直轄地を治める領主になるだろう。
「チヨさんは?」
俺が問うと、レンジュウロウはちらりと外に視線を向ける。
「周辺警戒にあたると言っておった。ハーフエルフの身の上であるから、遠慮しておるのやもしれんがな」
「居心地はよくないでしょうね。気持ちはわかりますよ」
「で、あろうな。会議が終わったら顔を出すように伝えてある故、心配はいらんよ」
一波乱あったものの、レンジュウロウとチヨは無事夫婦となった。
相変わらず、戦いと旅以外のことでは慣れずに狼狽える場面が多いようだが、その変わらない様子に、俺は少しばかり安心した。
そうこうするうちに、新たな人影が金の髪を揺らしながら現れた。
「アストル。お久しぶりです」
「ミレニア! 元気そうで何より」
白と青のコントラストが見事なドレスに身を包んだミレニアが、小さく一礼した。
その優雅な姿に、ラクウェイン侯爵がお辞儀を返す。
「バーグナー卿、今日の装いも実に美しいですな。例の件も、準備は万全なようで」
「ありがとうございます、ラクウェイン様。ええ、準備は滞りなく。卿も、決行時にはよろしくお願いいたしますわね」
それを聞き、エインズが感心した様子で頷く。
「おう。しかし、よくもまぁ……この短期間で準備したもんだな?」
「私達の、約束ですから」
ミレニアがにっこりと美しく笑う。
そんな彼女の肩を、リックがそっと抱いた。
……こちらも上手くいっているようで何よりだ。
「今回はオレも一緒に潜っからよ……頼むぜ、相棒」
「ああ、学生時代の与太話がこんな形で実現するとはな」
バーグナー冒険者予備学校に在籍していた頃、俺とリック、そしてミレニアで計画した『エルメリア王の迷宮』の攻略。
それが、現実味を帯びてきたのだ。
いくつかの理由はあるが、主目的は超大型ダンジョンコア『シェラタン・デザイア』との関係性を調べるための調査攻略である。
状況次第では最深部に潜って、超大型ダンジョンコアとの対話が可能であるかも確認したい。
そのために冒険者ギルドの協力を得て、大規模な調査攻略計画を、ミレニア……バーグナー伯爵主導で行なってもらっていたのだ。
彼女の婚約者である、〝竜殺し〟リック・カーマイン卿のネームバリューに加えて、俺の賢人としての名前も使ったため、参加者も協賛金もかなり集まったらしい。
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