白銀が征く異世界冒険記―旧友を探す旅はトラブルまみれ!?―

埋群のどか

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第三章:蒸奇の国・ガンク・ダンプ

第33話

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 予定通り朝早くに出発したクロエ達三人は、太陽が天頂に昇る前には蒸寄の国にたどり着いた。長い道のりを抜けた彼女らの前に広がるのは、まるで巨大な剣で切り裂いたかのように走る広大な谷である。
その谷の淵、そこには奇妙な大きい建物があった。手前には大きめの小屋程度の建物、谷にせり出すようにあるのはまるで荷物運搬用の昇降機のようなものである。

「クロエさん、あの建物へ向かってください。記憶が正しければ、あそこが入国審査所のはずです。」
「わかりました。」

  ミーナの指示にしたがってクロエは馬車を走らせた。幌馬車は徐々に近づいていく。すると、どこからかまるで拡声器越しのような声が聞こえてきた。

『……あー、あー。こんにちはー。入国希望者の方ですかー? そのあたりで止まってくださーい。』
「クロエさん、指示に従って止まってください。」

 クロエも止まるつもりだったようで、その声を聞いた時にはすでに速度を落としていた。減速した馬車は審査所らしき小屋から少し離れた場所に停まる。

『あー、はいはい。そこでいいですよー。そちらに向かいますので待っててくださいねー。』

 拡声器の声はそう言った。クロエたちが待つこと数分、小屋の中から一人の男が歩いてきた。
 その男はとても奇妙な格好をしていた。服装は全体的に軍服のような制服を身にまとっている。だが、その左腕は機械の腕であった。メカニカルなデザインのそれは、右手と同じような腕の振りを実現している。とても高度な技術でできているのは明らかだ。
 更には、その顔。その顔の上半分は大きなゴーグルで覆われていたのだ。鼻の上から額までをすっぽり覆うそのゴーグルも、レンズ部分の近くに歯車のようなものが見える。とても珍しい格好だった。
 その男は馬車の近くにやってくると、前面の入口から声をかけた。

「あ、こんにちはー。入国希望の方ですか?」
「はい、そうです。」

 ミーナがそう言って顔を出した。その見た目に男が驚く。

「ややっ! これは珍しい、エルフの方でしたか。国内でも見たことありませんね。これはいい経験をしました。」

 男は嬉しそうにそういった。入国審査の役員ともなれば、こうした珍しい出会いを喜ぶものなのだろう。

「ここでは暑いでしょう。馬車は審査所の脇に停めてください。審査は中で行いますので、搭乗者の方は全員でお越しください。では、私は先に行ってますので。」

 そう言うと男は再び審査所へ帰っていった。実にあっさりしたものである。

「ミーナさん、国の入国審査ってこんなものなんですか? ボクはもっと厳しいものを想像してたんですけど……」

 クロエがミーナに問いかけた。クロエは前世における空港などの入国審査を思い出しているのだろう。無論、ミーナはそれを知らないだろうが、クロエの言わんとしていることは分かるのだった。

「私もだいぶ昔に聞いただけですが、この国に軍事的に攻め入ろうとする国が昔から無かったことが関係するのでしょう。ガンク・ダンプは高い技術と豊富な金属資源を持つ国です。それだけ聞けばとても魅力的ですが、まずここに来るだけで一苦労なうえ、攻め入ろうにも地形的に難しいのです。さらに国内の軍隊は、特殊技術『蒸奇スチームパンク』を取り入れた強大な存在ですから。」

 ミーナはそう語った。クロエはその話を聞きながら再び馬車を動かす。余談だが、サラは再びこの暑さにダウンして横になっていた。
 ミーナがさらに語る。

「しかも、何とかして国を獲ったとしても、その資源採取や加工技術などは熟練の技術。それらを行う職人らの反発は目に見えるものです。つまり、制圧しようとするだけ無駄であり、それならば良き貿易相手として付き合った方が得策なのです。なので、こうした一般の窓口は先ほどのようにそこまで厳重ではなく、逆に貿易商業用の窓口では厳しい審査を行っているらしいです。各国から取引が来ますからね。」
「そうなんですか……」

 クロエは小屋のわきに馬車を止め、馬を消した。御者台から降りてサラの肩に手を置いてゆする。

「サラさーん、起きてくださーい。着きましたよー。」
「うぅ……あ、暑いですわ……」
「頑張ってください。多分審査所の中は涼しいですから。」

 その言葉にのっそりと起き上がったサラ。パタパタと自分の手で顔を仰ぐ。

「そうですわね。迷惑ばかりかけるわけにはいきませんもの……」

 ゆっくりとした動きで立ち上がるサラ。かなり弱っているのが見て取れる。クロエはサラの横に連れ添って審査所へ向かうのだった。

―続く―
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