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第三章:蒸奇の国・ガンク・ダンプ
第45話
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「え? な、なんだって……?」
クロエの言葉にヒフミは何を言われたかまるで分らないと言うように言葉を返した。クロエがもう一度言いにくそうに話し出す。
「だ、だから……クロエはボクなんです……」
「……は? いや、お嬢さん……何を言ってるんだ? アイツは確かに女顔でなよなよした所もあったが、立派に男だったぞ? あ、さては……あいつに頼まれて私を謀ろうとしているんだな? 皆さん、アイツの悪ふざけに付き合うだなんて人が良い。」
ヒフミは一人でそうしゃべりだすと、不意に部屋を見回して声を張った。
「おい! どこかにいるんだろう!? 私はもう十分驚いたから早く姿を現せ! せっかくの再会じゃないか! ふざけるのは止めようじゃないか!」
どうやらヒフミはクロエによるサプライズ演出か何かだと思っているらしい。部屋を見回して何処からか男のクロエが出てくると勘違いしているようだ。
だが、待てども待てどもクロエは姿を現さない。そもそもこの部屋の中は確かに広いが、隠れるところなどありはしないのだ。
(むぅ……おかしい。アイツはこんな人を困らす類の悪戯はしなかったはずだ。それにアイツは魔法適性値10000だろう? ならば魔力ぐらい感じるはずだが……)
しかし、この部屋からはこの部屋にいる人数以外の魔力は感じない。部屋の外にはいくつか感じるものがあるが、それらはすべてここの従業員のものだ。
そこまで考えたヒフミはとあることに気が付いた。それはその場にいる全員の自分へと向ける視線だ。普通ならば悪戯の傍観者は、ターゲットになっている自分のことを面白いものを見る目か、可愛そうな目で見るはずである。いくら演技で無表情を保とうにも限度があるし、ヒフミ自身そういったものは見破れる自信があった。
しかし、周囲ぞの自信を見る目は心の底から何を言っているのか分からないと言う物であった。それは自身の腹心の部下であるルウガルー・ヴォルケンシュタインも同じである。唯一、ヒフミの目の前に座る少女だけが少し申し訳なさそうな表情をしているぐらいだ。
(どういうことだ……? 流石に何かがおかしい。クロエの関係者だろう三人が私を騙すのはあり得るとして、ルウまでもが私を騙すはずがない。どういうことだ……)
ヒフミはここで気持ちを切り替えることにした。ここは異世界、何が起きてもおかしくない。自分の常識は非常識。冷静に場の雰囲気や状況、そして今までの会話などを分析し、ヒフミはとある一つの結末以外に終着点がない事を悟る。そして振り向いて自身の部下に質問をするのだった。
「おい、ルウ。」
「ハッ! 何でありましょうか、隊長。」
「おいおい、今は勤務時間外だ。そう固くなるな。」
「申し訳ないであります。それで、ご用件は?」
「……まぁいい。一つだけ君に聞く。嘘偽りなく答えよ。いいな?」
「ハッ!」
ルウガルーの敬礼にヒフミは一つ頷くと、目の前に座る少女を手で示して口を開いた。
「この少女の名前を言ってみろ。自己紹介はしたのだろう?」
「イエッサー! その方はクロエ殿であります。隊長のご友人であるとお聞きしました。組合証(ギルドカード)での身分証明も済んでおります!」
「そうか……ありがとう、ルウ。」
ヒフミはルウガルーの返答に頷くと改めてクロエの方を向いた。その視線は先ほどよりも幾分か険しくなったのだろう。クロエが「ヒッ!」と軽く悲鳴を上げる。
「……そう怖がるな。お前がクロエだと信用するためにいくつか質問をさせてもらう。嘘偽りなく答えろよ。」
「は、はい……」
「よし……」
言質を取ったヒフミは少しだけ考えるように黙ると、すぐに怒涛の勢いで質問を繰り出してきた。
「私たちは合計何人で転生した?」
「じゅ、十人。」
「大学の学部は?」
「文学部。」
「私の所属クラブは?」
「剣道部。そこで部長だった。」
「私の高校の頃の得意科目は?」
「えっと……確か、国語と体育。」
「ふむ……高校二年の国語の担当教師の名前は?」
「松村先生……だったかな?」
「一緒のクラスになった二年は何組だった?」
「一組。」
「高校の文化祭で私とクロエがとある賞に選ばれたが、何だった?」
「……それ、答えないといけない?」
「早くしろ。」
「う……で、でこぼこ反転カップル……」
「ふむ、それまで知っているか……もし騙すために知識を入れ込んだとしても、そんな恥ずかしいことは話さないだろう。自分への印象問題だからな。」
「今この場で暴露させられたよ!」
クロエが顔を赤くさせながら立ち上がり憤慨した。目の端には涙さえ浮いている。その反応をみたヒフミは少し真顔になると、「プッ!」と少し噴き出し、次の瞬間には笑い声をあげていた。
「アッハッハッハ! その反応は間違いなくクロエだな! 高校の時もそうやって可愛い反応するから『性別が男じゃなければな……』なんて言われてたんだ。変わってないな。」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 何その話!? ボク知らないよ!?」
「それはそうさ。『男でも構わない!』など言ってお前に向かってく奴は、黄河か遠藤がブロックしてたからな。女の方でも少し危ない奴は天音が注意していたしな。」
異世界へ転生して初めて知る驚愕の事実に、開いた口が塞がらないクロエ。そのクロエの頭に手を置いて、ヒフミは優しく頭をなでた。
「しかし……これがクロエか……また可愛い格好になったな。何だろうな、お前はやっぱり変な方向で神に愛されているんだろうな。」
「そんな愛情いらない……今のボクには身長とか力強さが欲しい。」
「何!? 許さんぞ貴様! せっかく膝に乗せるのにちょうどいいサイズなんだからこれ以上大きくなるな! さ、とりあえず私の膝の上に来い。」
「な、何言ってるのヒフミさん、冗談でしょ……って、ちょ、や、やめて~!!」
―続く―
クロエの言葉にヒフミは何を言われたかまるで分らないと言うように言葉を返した。クロエがもう一度言いにくそうに話し出す。
「だ、だから……クロエはボクなんです……」
「……は? いや、お嬢さん……何を言ってるんだ? アイツは確かに女顔でなよなよした所もあったが、立派に男だったぞ? あ、さては……あいつに頼まれて私を謀ろうとしているんだな? 皆さん、アイツの悪ふざけに付き合うだなんて人が良い。」
ヒフミは一人でそうしゃべりだすと、不意に部屋を見回して声を張った。
「おい! どこかにいるんだろう!? 私はもう十分驚いたから早く姿を現せ! せっかくの再会じゃないか! ふざけるのは止めようじゃないか!」
どうやらヒフミはクロエによるサプライズ演出か何かだと思っているらしい。部屋を見回して何処からか男のクロエが出てくると勘違いしているようだ。
だが、待てども待てどもクロエは姿を現さない。そもそもこの部屋の中は確かに広いが、隠れるところなどありはしないのだ。
(むぅ……おかしい。アイツはこんな人を困らす類の悪戯はしなかったはずだ。それにアイツは魔法適性値10000だろう? ならば魔力ぐらい感じるはずだが……)
しかし、この部屋からはこの部屋にいる人数以外の魔力は感じない。部屋の外にはいくつか感じるものがあるが、それらはすべてここの従業員のものだ。
そこまで考えたヒフミはとあることに気が付いた。それはその場にいる全員の自分へと向ける視線だ。普通ならば悪戯の傍観者は、ターゲットになっている自分のことを面白いものを見る目か、可愛そうな目で見るはずである。いくら演技で無表情を保とうにも限度があるし、ヒフミ自身そういったものは見破れる自信があった。
しかし、周囲ぞの自信を見る目は心の底から何を言っているのか分からないと言う物であった。それは自身の腹心の部下であるルウガルー・ヴォルケンシュタインも同じである。唯一、ヒフミの目の前に座る少女だけが少し申し訳なさそうな表情をしているぐらいだ。
(どういうことだ……? 流石に何かがおかしい。クロエの関係者だろう三人が私を騙すのはあり得るとして、ルウまでもが私を騙すはずがない。どういうことだ……)
ヒフミはここで気持ちを切り替えることにした。ここは異世界、何が起きてもおかしくない。自分の常識は非常識。冷静に場の雰囲気や状況、そして今までの会話などを分析し、ヒフミはとある一つの結末以外に終着点がない事を悟る。そして振り向いて自身の部下に質問をするのだった。
「おい、ルウ。」
「ハッ! 何でありましょうか、隊長。」
「おいおい、今は勤務時間外だ。そう固くなるな。」
「申し訳ないであります。それで、ご用件は?」
「……まぁいい。一つだけ君に聞く。嘘偽りなく答えよ。いいな?」
「ハッ!」
ルウガルーの敬礼にヒフミは一つ頷くと、目の前に座る少女を手で示して口を開いた。
「この少女の名前を言ってみろ。自己紹介はしたのだろう?」
「イエッサー! その方はクロエ殿であります。隊長のご友人であるとお聞きしました。組合証(ギルドカード)での身分証明も済んでおります!」
「そうか……ありがとう、ルウ。」
ヒフミはルウガルーの返答に頷くと改めてクロエの方を向いた。その視線は先ほどよりも幾分か険しくなったのだろう。クロエが「ヒッ!」と軽く悲鳴を上げる。
「……そう怖がるな。お前がクロエだと信用するためにいくつか質問をさせてもらう。嘘偽りなく答えろよ。」
「は、はい……」
「よし……」
言質を取ったヒフミは少しだけ考えるように黙ると、すぐに怒涛の勢いで質問を繰り出してきた。
「私たちは合計何人で転生した?」
「じゅ、十人。」
「大学の学部は?」
「文学部。」
「私の所属クラブは?」
「剣道部。そこで部長だった。」
「私の高校の頃の得意科目は?」
「えっと……確か、国語と体育。」
「ふむ……高校二年の国語の担当教師の名前は?」
「松村先生……だったかな?」
「一緒のクラスになった二年は何組だった?」
「一組。」
「高校の文化祭で私とクロエがとある賞に選ばれたが、何だった?」
「……それ、答えないといけない?」
「早くしろ。」
「う……で、でこぼこ反転カップル……」
「ふむ、それまで知っているか……もし騙すために知識を入れ込んだとしても、そんな恥ずかしいことは話さないだろう。自分への印象問題だからな。」
「今この場で暴露させられたよ!」
クロエが顔を赤くさせながら立ち上がり憤慨した。目の端には涙さえ浮いている。その反応をみたヒフミは少し真顔になると、「プッ!」と少し噴き出し、次の瞬間には笑い声をあげていた。
「アッハッハッハ! その反応は間違いなくクロエだな! 高校の時もそうやって可愛い反応するから『性別が男じゃなければな……』なんて言われてたんだ。変わってないな。」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 何その話!? ボク知らないよ!?」
「それはそうさ。『男でも構わない!』など言ってお前に向かってく奴は、黄河か遠藤がブロックしてたからな。女の方でも少し危ない奴は天音が注意していたしな。」
異世界へ転生して初めて知る驚愕の事実に、開いた口が塞がらないクロエ。そのクロエの頭に手を置いて、ヒフミは優しく頭をなでた。
「しかし……これがクロエか……また可愛い格好になったな。何だろうな、お前はやっぱり変な方向で神に愛されているんだろうな。」
「そんな愛情いらない……今のボクには身長とか力強さが欲しい。」
「何!? 許さんぞ貴様! せっかく膝に乗せるのにちょうどいいサイズなんだからこれ以上大きくなるな! さ、とりあえず私の膝の上に来い。」
「な、何言ってるのヒフミさん、冗談でしょ……って、ちょ、や、やめて~!!」
―続く―
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