62 / 110
第三章:蒸奇の国・ガンク・ダンプ
第62話
しおりを挟む
「さぁ、行きましょうか。お嬢様。」
「無論ですわ、エルフの心意気見せる時ですわよ!」
サラとミーナが先陣を切って飛び出した。サラは崖伝いに高所へ陣取り、ミーナはその巨体を支える足元を目指す。
一方、呆けていたために一歩遅れたルウガルーも我に返り、グラン・ガラドヴルムへ攻撃を仕掛けようとしていた。
だが、そこへヒフミからの声がかかる。
「待て、ルウ!」
「は、はっ! 何でありますか?」
出鼻をくじかれたように体勢を崩しかけるも、そこは軍人らしくすぐに体勢を整え敬礼に構えるルウガルー。その直立不動の姿にとある言葉がかけられた。
「特殊兵装の使用を許可する。思いっきり暴れてこい!」
「――ッ! はっ! ありがたき幸せであります!!」
それだけ答えるとルウガルーは再び走り出した。その謎のやり取りにクロエが疑問を上げる。
「ねぇ、ヒフミさん。さっきの特殊兵装って何のこと?」
「見ていれば分かるさ。なに、お前が大会で見たであろう蒸奇装甲はほんの小手先だったってだけだ。」
妙に自信ありげなヒフミの言葉に、疑問が解消されず不満げながらもとりあえず戦闘に向かった三人を見るクロエだった。
「さて、まずはこれでどうですか……!?」
収納魔法【パンドラ】を展開し、亜空間より巨大なハンマーを取り出すミーナ。今取り出したそれは普段彼女が使うそれの倍はあろうかと言う超巨大な物だった。もはや人力で持ち上げることは不可能に見えるそれを、ミーナは両手で持ち上げる。そしてダッシュの加速をそのままに、スラスターの加速も加わった打撃エネルギーをグラン・ガラドヴルムの右足に叩きこんだ。
「――ッ!? クッ……!」
まるで岩石を叩いたかのような硬質な音が反響するほどに響き渡った。しかし、およそ家屋を軽く倒壊せしめる程の打撃を見舞ったにもかかわらず、その巨竜の足には傷一つ見当たらなかった。
「恐ろしい硬度ですね……!」
恐らく振動が直に伝わったのだろう。少し顔をしかめながら片手をプラプラと振っている。
「ならば、これはどうですの!?」
ミーナの頭上より聞こえたその声はサラの物であった。サラは岸壁に突き出した小さな足場に陣取り、精神を集中させるように目を閉じて両手を前に突き出している。
「参りますわ、【疾風大魔法】!!」
サラの両手に魔力が集まる。その魔力がサラの詠唱と共に前面へ向かって放出された。まっすぐに射出された極太の魔力レーザーは、寸分たがわぬ狙いで敵の頭へ着弾する。そして、荒れ狂う疾風を伴う大爆発を起こした。属性魔法の中でも大魔法に分類される上級魔法、【疾風大魔法】だ。使える者は極大魔法より多いもののそれでも限られており、サラでさえ数発が限界の奥の手である。
魔力を感知して距離をとっていたミーナが緊張の面持ちで様子を伺う。サラも同じように敵の様子を伺っていた。着弾点は風と爆風で巻き上げたれた砂煙で様子を窺い知ることができない。だが、遥か後方に見えるその巨体は動きを止めていた。何かしらの効果があるのかと二人が見つめる中、突如吹き抜けた風が粉塵を攫っていった。
「そ、そんな……!」
サラが信じられないと言うように声を上げた。取り除かれた粉塵のそこ、そこには傷すら見られないグラン・ガラドヴルムの姿があった。表面のコケやゴミなどが取り除かれ甲殻もいくらか吹き飛んだようだが、本体にはダメージが通っていないようだ。爆風に驚いて動きを止めていたようだが、すぐに何事もなかったように動き出した。
「大魔法ですら少しの足止めですか……」
ミーナが辟易したように呟いた。その時、後方から走ってくる人影が現れる。二人がそちらに振り向くと、そこにはこちらへ走り寄ってくるルウガルーの姿があった。
「お二人とも、お待たせしたであります!」
そう声を上げて二人の下へたどり着いたルウガルーは、そのまま止まることなく敵の下へ駆けていく。そして、走りながら蒸奇装甲(スチームアーマー)の起動を行った。
「特殊兵装『ヴェルトロ』、全面展開ッ!!」
ルウガルーの声がパスコードとなって、背後に亜空間が開かれる。走るルウガルーの動きはそのままに、彼女の身体をまるで取り込むかのように蒸奇装甲が展開された。
それは、まるで機械で出来た白銀の人狼のような外観だった。全長二メートルはあるだろう。背部のスラスターを展開させて加速する人狼はそのままグラン・ガラドヴルムの顎下に潜り込むと、右こぶしを握りこみ、肘から出たスラスターの加速力の推進力を加えたアッパーカットを炸裂させた。
拳が比較的柔らかい顎下にめり込むと、拳の先端部分から魔力砲が射出される。魔力による爆発だ。これは流石の巨竜であっても痛みを感じるようだ。長い首を持ち上げ顔を退避させる。
「今であります!!」
振り向いたルウガルーがミーナとサラの方へ声を上げた。ルウガルーが言い終わるころにはすでに二人は行動を開始させている。サラは弓を構え特大の風の矢を発射、ミーナは巨大な槍を取り出すと力をためてそれを投擲した。
放たれた二撃はまっすぐな軌跡を描きながら顔を上げて無防備になった巨竜の腹部に突き刺さった。動くためには柔らかい部分が必要なのだろう、固い甲殻に覆われていない腹部に矢と槍が深々と突き刺さった。
――グォォォオオオオオ……!!
顔を持ち上げたためか、遥か頭上で聞こえるその咆哮は明らかに苦しげなものだった。初めて与えられた明確なダメージにその場の三人の心に光がともる。
「奴の甲殻は長年の休眠などを経て硬い岩盤のそれとなっているであります。先ほどのように何とかして腹部にダメージを与えるでありますよ!」
再び地に降り立つ巨体を避けるために退避したルウガルーがミーナとサラへ向かって語った。二人は声もなく頷くと改めて巨竜へと視線を向ける。
相対するその巨体は、まるで本当の山のようだ。普通なら戦おうとする気持ちすら起きないだろう。だが、三人は知っている。この巨竜とて一つの生き物なのだ。ならば殺せないはずがない。
それぞれの武器を構え三人はあまりにも無謀に思える戦いに身を投じるのだった。
―続く―
「無論ですわ、エルフの心意気見せる時ですわよ!」
サラとミーナが先陣を切って飛び出した。サラは崖伝いに高所へ陣取り、ミーナはその巨体を支える足元を目指す。
一方、呆けていたために一歩遅れたルウガルーも我に返り、グラン・ガラドヴルムへ攻撃を仕掛けようとしていた。
だが、そこへヒフミからの声がかかる。
「待て、ルウ!」
「は、はっ! 何でありますか?」
出鼻をくじかれたように体勢を崩しかけるも、そこは軍人らしくすぐに体勢を整え敬礼に構えるルウガルー。その直立不動の姿にとある言葉がかけられた。
「特殊兵装の使用を許可する。思いっきり暴れてこい!」
「――ッ! はっ! ありがたき幸せであります!!」
それだけ答えるとルウガルーは再び走り出した。その謎のやり取りにクロエが疑問を上げる。
「ねぇ、ヒフミさん。さっきの特殊兵装って何のこと?」
「見ていれば分かるさ。なに、お前が大会で見たであろう蒸奇装甲はほんの小手先だったってだけだ。」
妙に自信ありげなヒフミの言葉に、疑問が解消されず不満げながらもとりあえず戦闘に向かった三人を見るクロエだった。
「さて、まずはこれでどうですか……!?」
収納魔法【パンドラ】を展開し、亜空間より巨大なハンマーを取り出すミーナ。今取り出したそれは普段彼女が使うそれの倍はあろうかと言う超巨大な物だった。もはや人力で持ち上げることは不可能に見えるそれを、ミーナは両手で持ち上げる。そしてダッシュの加速をそのままに、スラスターの加速も加わった打撃エネルギーをグラン・ガラドヴルムの右足に叩きこんだ。
「――ッ!? クッ……!」
まるで岩石を叩いたかのような硬質な音が反響するほどに響き渡った。しかし、およそ家屋を軽く倒壊せしめる程の打撃を見舞ったにもかかわらず、その巨竜の足には傷一つ見当たらなかった。
「恐ろしい硬度ですね……!」
恐らく振動が直に伝わったのだろう。少し顔をしかめながら片手をプラプラと振っている。
「ならば、これはどうですの!?」
ミーナの頭上より聞こえたその声はサラの物であった。サラは岸壁に突き出した小さな足場に陣取り、精神を集中させるように目を閉じて両手を前に突き出している。
「参りますわ、【疾風大魔法】!!」
サラの両手に魔力が集まる。その魔力がサラの詠唱と共に前面へ向かって放出された。まっすぐに射出された極太の魔力レーザーは、寸分たがわぬ狙いで敵の頭へ着弾する。そして、荒れ狂う疾風を伴う大爆発を起こした。属性魔法の中でも大魔法に分類される上級魔法、【疾風大魔法】だ。使える者は極大魔法より多いもののそれでも限られており、サラでさえ数発が限界の奥の手である。
魔力を感知して距離をとっていたミーナが緊張の面持ちで様子を伺う。サラも同じように敵の様子を伺っていた。着弾点は風と爆風で巻き上げたれた砂煙で様子を窺い知ることができない。だが、遥か後方に見えるその巨体は動きを止めていた。何かしらの効果があるのかと二人が見つめる中、突如吹き抜けた風が粉塵を攫っていった。
「そ、そんな……!」
サラが信じられないと言うように声を上げた。取り除かれた粉塵のそこ、そこには傷すら見られないグラン・ガラドヴルムの姿があった。表面のコケやゴミなどが取り除かれ甲殻もいくらか吹き飛んだようだが、本体にはダメージが通っていないようだ。爆風に驚いて動きを止めていたようだが、すぐに何事もなかったように動き出した。
「大魔法ですら少しの足止めですか……」
ミーナが辟易したように呟いた。その時、後方から走ってくる人影が現れる。二人がそちらに振り向くと、そこにはこちらへ走り寄ってくるルウガルーの姿があった。
「お二人とも、お待たせしたであります!」
そう声を上げて二人の下へたどり着いたルウガルーは、そのまま止まることなく敵の下へ駆けていく。そして、走りながら蒸奇装甲(スチームアーマー)の起動を行った。
「特殊兵装『ヴェルトロ』、全面展開ッ!!」
ルウガルーの声がパスコードとなって、背後に亜空間が開かれる。走るルウガルーの動きはそのままに、彼女の身体をまるで取り込むかのように蒸奇装甲が展開された。
それは、まるで機械で出来た白銀の人狼のような外観だった。全長二メートルはあるだろう。背部のスラスターを展開させて加速する人狼はそのままグラン・ガラドヴルムの顎下に潜り込むと、右こぶしを握りこみ、肘から出たスラスターの加速力の推進力を加えたアッパーカットを炸裂させた。
拳が比較的柔らかい顎下にめり込むと、拳の先端部分から魔力砲が射出される。魔力による爆発だ。これは流石の巨竜であっても痛みを感じるようだ。長い首を持ち上げ顔を退避させる。
「今であります!!」
振り向いたルウガルーがミーナとサラの方へ声を上げた。ルウガルーが言い終わるころにはすでに二人は行動を開始させている。サラは弓を構え特大の風の矢を発射、ミーナは巨大な槍を取り出すと力をためてそれを投擲した。
放たれた二撃はまっすぐな軌跡を描きながら顔を上げて無防備になった巨竜の腹部に突き刺さった。動くためには柔らかい部分が必要なのだろう、固い甲殻に覆われていない腹部に矢と槍が深々と突き刺さった。
――グォォォオオオオオ……!!
顔を持ち上げたためか、遥か頭上で聞こえるその咆哮は明らかに苦しげなものだった。初めて与えられた明確なダメージにその場の三人の心に光がともる。
「奴の甲殻は長年の休眠などを経て硬い岩盤のそれとなっているであります。先ほどのように何とかして腹部にダメージを与えるでありますよ!」
再び地に降り立つ巨体を避けるために退避したルウガルーがミーナとサラへ向かって語った。二人は声もなく頷くと改めて巨竜へと視線を向ける。
相対するその巨体は、まるで本当の山のようだ。普通なら戦おうとする気持ちすら起きないだろう。だが、三人は知っている。この巨竜とて一つの生き物なのだ。ならば殺せないはずがない。
それぞれの武器を構え三人はあまりにも無謀に思える戦いに身を投じるのだった。
―続く―
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる
書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。
鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。
だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。
その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。
俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。
ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。
なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる