白銀が征く異世界冒険記―旧友を探す旅はトラブルまみれ!?―

埋群のどか

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第三章:蒸奇の国・ガンク・ダンプ

第64話

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 地上で戦う三人は、とある焦りを一様に抱えていた。

 ――「このままこれを続けていても、意味があるのだろうか。」

 確かに三人の連携による攻撃はグラン・ガラドヴルムに届いていた。顔面への集中砲火にかの巨竜はそれを避けるかのように首をもたげていた。その隙をついて行う腹部への攻撃も効いているはずだ。
 だが、それでも三人は同じ焦りを得ずにはいられなかった。先ほどから繰り返すこの攻撃は確かに巨竜の歩みをとどめてはいる。だが、言ってみればただそれだけなのだ。グラン・ガラドヴルムには足止め程度のダメージは与えられていたとしても、それは所詮その程度。致命傷には至らない。どれだけ刃を研ぎ澄ませても、どれだけ魔力を爆発させようとも、その堅牢な甲殻と分厚い皮膚、巨体を支える筋肉を超すことができないのだ。
 煩わしそうに嫌がるそぶりを見せる巨竜だが、次第に慣れて来たのか首をもたげる回数が減ってきた。三人の攻撃は鬱陶しいのだろうが、致命傷はおろか明確なダメージも与えられないことを学んだのだろう。我慢するかのようにずんずんと進むようになってきた。

「クッ……どうしますの、ミーナ。このままでは押し切られて終わりですわ。」
「……分かっておりますとも。ただ、どうすることもできないのもまた事実ですね……」

 難しそうな顔を見せるミーナ彼女の脳内では様々な思考が巡らされているのだろう。戦いながらもその瞳は思案気なままだ。

「一体、あの巨竜はとんだ化物でありますな……! せっかくの特殊兵装でありますのに、何ら活躍できていないとは、恥ずかしい限りであります……」

 サラの隣に降り立ったルウガルーがそう漏らした。確かに彼女のまとう蒸奇装甲スチームアーマーはその性能や兵装など、先ほどまで見せていた大会の物とは段違いであろう。しかし相手が悪すぎたのか、目を見張るような活躍は見られない。いやむしろ、この特殊兵装だからこそここまで凌げているのかもしれないが。

「このままではジリ貧ですわ。何かあれに明確なダメージを入れなくては……」
「分かってはいるのでありますが……どうにもいけませんね……」

 巨竜から視線だけは決して外さず、だが弱音を漏らす二人の下にミーナが跳躍してやってきた。

「ミーナ、どうですの?」
「甲殻の様子を見てきましたが、あれはいけませんね。魔力を分散させる力を持つ鉱石をふんだんに含んでいます。あれでは例えクロエさんが極大魔法を放ったとしても効果があるかどうか……何発か放てば確実に効果はありましょうが、このあたりの様々なバランスが崩れかねません。それに、他にも問題はありますし、ね。」

 ミーナが難しい顔で言った言葉にサラはとあることに思い至った。それはクロエの中にある魔神の存在、クロエに莫大な魔力を使わせた際に、それにどのような影響があるか分からない。最悪の場合、巨竜は殺せたとしても魔神が再臨してしまうかもしれないのだ。それだけは避けねばならない。
 もはや万策尽きたか、三人の心中に諦めが浮かびかけたその時、背後からとある声がかけられた。振り向いた先、そこにはヒフミに肩を貸してこちらへ向かうクロエの姿があった。

「クロエさん! どうしたんですの?」

 サラが声をかけて近づいた。ヒフミとルウガルーもすぐに駆け寄りクロエからヒフミを預かる。

「実は、一つ作戦を思いついたんです。このままだと時間がたっていくばかり。なので少し大胆な行動に出てみようと思って。」
「その作戦、お聞かせ願えますか?」

 ヒフミの様子を見ていたミーナがクロエへ問いかけた。彼女も同じ気持ちだったのだろう。このままではかの巨竜に押し切られてしまう、と。だが有効な手段が思いつかなかった故に、まんじりと同じ行動を繰り返すしかなかったのだ。
 ミーナの言葉にクロエは頷きを一つ返すとすぐに作戦を話し始めた。それはとても単純なものだった。場面さえ変わればだれもが思いつくであろう物。しかし、それが逸脱種フリンジであるかの巨竜に通じるかどうかは分からない。もし失敗すれば後がないのだ。

「どうですか? ボクは正直これに掛けるしかないと思っています。」
「……ヒフミ様は、どうなのですか? この作戦、何よりもヒフミ様のお力が必須ですが……」

 ミーナの問いかけにヒフミは笑みを浮かべると、すこしふらつきながらも緩やかな動作で立ち上がった。

「大丈夫です。私としても正直こんな作戦上手くいくかどうかわかりませんが、これ以外に思いつかないのも事実ですから。」
「そうですか……なら、私からはなにも文句はございません。与えられた役目を全う致しましょう。お嬢様は如何ですか?」

 ミーナがサラに問いかけた。問われたサラはフッと一笑すると、何を今更と言わんばかりに髪を払うと、自信に満ちた声で口を開いた。

「愚問ですわ。クロエさんの力は知っていますもの。私はそれを力の限り支えるだけですわ。」

 サラとしてもこの状況を理解していたのだろう。このまま三人で効果があるか分からない攻撃を仕掛け続けたとしても、グラン・ガラドヴルムは倒すことは出来まいと。
 不意にヒフミがルウガルーにむかって

「ルウ。お前はどうだ?」
「じ、自分でありますか……?」

 かけられた声に一瞬詰まるルウガルー。クロエの力を疑うわけではないが、この中で一番彼女の事を知らないのもまた事実なのだ。本当にそんなことが可能なのか信じがたくはある。
 だが、周囲を見回して、そしてはるか後方の祖国の事を思い浮かべる。どちらにせよ、ここでかの巨竜を打ち倒さねばガンク・ダンプの受けるダメージは計り知れない。周囲に国がないからこそ周辺国からの援助は望めない。ならば、ここで自分たちが食い止めるほかないだろう。
 それに、彼女自身が敬愛するヒフミは、クロエの力を信用している。彼女の目を見れば、作戦の失敗を微塵も疑っていないことが分かった。故にルウガルーはほんの少しだけ見せた逡巡をすぐにかき消して頷いて見せたのだった。

「確かに、この中では自分が一番浅い付き合いであります。しかし! それでもクロエでの端信頼に足るお方であると分かっているであります! この命、この作戦に掛けましょう!」

 ルウガルーの言葉にヒフミは勿論の事、クロエやサラとミーナも嬉しそうに頷く。ここに五人の結束は最高潮に高まっていた。
 ふと振り返り遠くのグラン・ガラドヴルムを見る。かの巨竜はゆっくりと、しかし確実にこちらの方向、ひいてはガンク・ダンプへその巨体を進ませていた。その一歩は大きく、ここで止めねばすぐにでも国を壊滅させるだろう。

「……行こう。最終決戦だ!」

 クロエの掛け声とともに、それぞれが動き出すのだった。

 ―続く―
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