酒気帯び詩集

煮干しを待つ亀

私は煮干しを待つ亀。
昔の女性がウイスキーを飲み干したので、喉は乾いていない。
煮干しを待つ。

主人はでくの坊だ。
決して服従などしない。
常に私の傲慢な背中の上でいやらしいステップを踏んでいる。

二十二年間、私は煮干しを待った。
今の女性がウイスキーの瓶を叩き割らないよう私は祈った。
彼女は詩人なのだ。
あと二十二年間は喉が乾かない。
煮干しは私の背中にある。
コケに塗れて死んだ魚が。

ああ、目線は常に困惑していた。
早く、僕にかぶりついて。

「死んだ魚の目をした亀」
と、港じゃ噂らしいのだが、私から何を奪うというのだ人間たちよ。
今の女性は片手に鉛筆、片手にウイスキー。
テーブルの上には申し訳程度の煮干しがある。
どこに行こうと煮干しだらけ。

待つ事待つ事待ち疲れ、私は彼女に訴えた。
生きてる者より死んだ者！
奴らが煮干しを持ち去った！
彼女の喉が燃えてゆく。
心臓が
胃が
白く長い指が

私はウイスキーを待つ亀。