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後編

告白 試練 新たな一歩

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 冬の訪れとともに、二人の空気は変わり始めた。
 結衣ゆいは彼女の秘密を晴はれに打ち明けることを決め、晴は結衣の変化を感じていた。

 寒空の下、二人は川沿いの遊歩道を歩いていた。結衣は沈黙を破り、ついに晴に自分の病気について話し始める。

「晴くん、私……もう長く生きれないの。病気でもうすぐ死ぬんだって」
 晴は衝撃を受け、言葉を失った。

「そんなに元気そうなのに……」

 彼は結衣の明るさと強さの裏に隠された苦悩を想像もしていなかった。
 結衣は晴の手を握りながら、自分の残された時間を最大限に生きるという決意を語った。

「私は悲しいんじゃないの。本当に大切なことは今をどう生きるか、死ぬまでどれだけ精一杯生きるかだと思う。晴くんと出会えたこと、一緒に時間を過ごせたこと、すごく嬉しかった、幸せだよ」
 と結衣は微笑んだ。

 結衣の姿はとても眩しくて美しかった。

 晴は涙をこらえながら、結衣に対する深い愛情と尊敬を感じ、手をきつく握り返した。


 その日から、晴は結衣との時間をより大切にするようになった。彼は結衣の残された日々を彩るため、小さなサプライズや楽しいイベントを企画した。

 二人は一緒に映画を観たり、美術館を訪れたり、時にはただ静かに話をするだけの日もあった。

 そんな些細な日常が結衣にはとても大切なことだった。

 結衣の病気は彼らの間に悲しみをもたらしたが、同時に二人の絆をより一層強くした。晴は結衣のためにできる限りのことをしようと決意し、結衣は晴がそばにいてくれることが何より励みとなった。


 結衣の病気が進行していく中、晴は彼女の強さと生き様に深く魅了されていた。

 結衣は自分の状況にもかかわらず、いつも前向きで、周りの人々に幸せを与えようとしていた。そして彼女は自分の生を満喫して精一杯生きていた。彼女はいつも幸せそうに笑うのだった。

 晴は彼女から多くのことを学び、自分自身も変わっていくのを感じていた。


 結衣の病状は日に日に進行し、彼女の日常は困難なことが増えていった。晴は結衣のそばで、彼女の支えとなることを決めていた。

 ある冬の日、結衣は病院で長期入院することになった。

 晴は毎日彼女の病室を訪れ、結衣の気を紛らわせるために本を読み聞かせたり、一緒に音楽を聴いたりした。

 結衣はそんな晴の愛情に深い感謝をするとともに、彼の存在が自分にとってどれほど大切なものかを改めて実感するのだった。

 晴は結衣の様子に心を痛めつつも、彼女の生き方にひどく心を動かされていた。彼は結衣のために何かをすることで、自分にとって本当に大切なものが見え始めていた。


 結衣は、晴との思い出を胸に、病気と戦い続けた。
 
 彼女は晴に、
「あなたと過ごした時間が私の宝物だよ。晴大好き、ありがとう」
 と何度も伝えた。

 二人の絆はさらに深まっていくのだった。


 しかし、結衣の病状は回復することなく、彼女の体力は徐々に衰えていった。

 晴は結衣が病床で過ごす時間が増えるにつれ、彼女の苦しみと戦いの様子を目の当たりにし、深い無力感に苛まれた。彼は結衣に何かをしてあげたいという切ない願いと、彼女の状況を受け入れることの難しさの間で激しく葛藤していた。


 結衣は晴の苦悩を察して、

「晴くん、ごめんね、辛い思いさせて……。でもね、君がいるから、私はこんなにも強くいられるし、幸せなんだよ」
 と弱々しい声で話した。

 彼は涙を流しながら結衣の手を握り続けるしかなかった。


 病院の窓から見える雪景色を眺めながら、二人は過去を振り返り、これまでの思い出を語り合う。

「……晴くんと出会って、本当によかった。私、いっぱい幸せをもらったよ。晴くんも自分の人生をしっかり生きてね、私の分まで、絶対」

 結衣は晴に力のない優しい微笑みを向けた。その瞳には強い輝きを宿していた。
 晴はその眼差しを受けて強く頷いた。

「君のおかげで僕は変われた。君の分まで僕は僕の人生を精一杯生きてみせるよ。必ず。結衣、愛してる」

 二人はそっと口づけを交わした。

 それから晴は結衣の病室で一晩中、彼女の手を握りながら過ごした。

 静寂に包まれた暗闇の中で、結衣の弱々しい呼吸の音が静かに響いている。晴は彼女のためにささやかな祈りを捧げ、結衣がこれ以上苦しまないよう願った。


 夜明けが近づくにつれて、結衣の呼吸はさらに弱くなっていった。彼女は最後の力を振り絞り、晴に向かって微笑んだ。

「晴くん、私はとても幸せだったよ。ありがとう」

 その言葉を最後に、結衣は静かに眠りについた。

 晴の泣き叫ぶ声だけがいつまでも病室に響き渡っていた。


 結衣の死後、晴は深い悲しみに包まれた。
 彼女と過ごした日々は、彼にとってかけがえのない宝物となっていた。しかし、結衣が残した強さと愛情は、晴に生きる力を与えた。

 春が訪れ、花々が咲き乱れる中、晴は結衣との思い出の場所を訪れた。
 公園のベンチに座り、彼は結衣と過ごした時のことを思い返していた。
 彼女の笑顔、彼女の言葉、そして彼女の生き方は、晴の心に深く刻まれていた。

 晴は結衣が愛した本を読み、彼女が関心を持っていた芸術に触れ、そして何より、彼女が大切にしていた人々とのつながりを大切にしようと心に誓っていた。

 晴は大学での勉強にも力を入れるようになり、積極的な姿勢で学び始めた。彼は結衣のように、人生を精一杯生きていた。

 
 ある日、晴は結衣と出会った図書館に行き、彼女が好きだった本の一冊を手に取った。本を読みながら、彼は結衣との思い出に浸り、彼女の存在が自分の人生にどれ だけ大きな影響を与えたかを改めて考えた。


 晴は結衣の墓前に立ち、静かに語りかけた。

「ありがとう。君との時間は僕の宝物だよ。君との約束を死ぬまで忘れない。僕は人生を精一杯生きてみせる」

 晴の言葉には、はっきりとした強い意志が感じられた。

 晴は結衣の墓前で深く一礼し「また来るよ」と笑った。


 夕日が街をオレンジ色に染め上げる中、彼の表情は生きる希望に溢れ、瞳は未来を見ていた。
 




 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 次回作も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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