王冠の乙女

ボンボンP

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久しぶりに私室に戻ったアーサーに、すぐに来客が伝えられた。

やって来たのはガートル・ブラスバンだった。

ブラスバンは人払いをすると早速アーサーを睨みつけるように言った。
「もしやと思うが王子、貴方はあの娘をもうすでに抱いたのですか?」

アーサーは疲れていたこともあり、王子に対して不遜な態度のガートルを疎ましく思った。

「貴方がフェリーチェに愛されるようにと僕に言ったんだろう。フェリーチェは僕を愛してくれて身体を捧げてくれたんだ。僕たちがいつ結ばれたとしても君にそのことまで指図されるつもりはない。」

「私は、言ったはずだ!王冠の乙女に愛された者、つまり身体を繋げた者が王座を得ると!アーサー殿下が王太子になるには時期尚早だった。こちらも貴族達に根回しをしている最中だったのに。」

「まさか、フェリーチェを抱いたからだというのか、本気でそんなことを言っているのか?いい大人の貴方が。僕が次代の王になるためにはウイリアムの命を奪い、エスカペイドの身体を不自由にするしかなかったと?そこまでしないと僕には王冠が回ってこなかったと?『王冠の乙女』の力とはそのように禍々しいものなのか!」

「禍々しいとは、なんという言い草だ。しかし、言っておくぞ。もう王冠の乙女と身体を繋げてしまったからにはあの娘の不興を買ってはならない。前にも言ったが国に厄災が起こるからだ。だから王子はあの娘を決して蔑ろにしてはならない。これだけは覚えておけ。それと、子供を産ませてはならないぞ。」

アーサーは2カ月間フェリーチェに会っていないことに思い至った。
後で会いに行かなくては。


「しかし…賢いと言われ、婚約者探しもしていなかった王子がまさかこうも早く娘に手を出すとは思わなかった。王子はもっと理性の利く方だと思っていたのだが、若さゆえか…こうなってしまった以上、貴方のために優秀な文官をすぐに手配する、支える事は約束しよう。」

「ああ。頼む。文官は何人いても良い。」

「アーサー王子。我ブラスバン家が貴方に『王冠の乙女』を与えたことをお忘れなきよう。探し出し苦労して手に入れたのですから。」

「探し出して?苦労して?フェリーチェはネージュ家の遠縁の娘なのだろう?」


ガートルは腕を組むとフーっと大きく溜息をついた。

「詳しくは言えません。しかし5歳の頃にあの娘を見つけ問題なくネージュ家の養子にする為に、父親を馬車の事故にあわせ母親には薬を使い…孤児院で暮らすように仕向けたのですよ。それからネージュ家に入れて…世間からは隔離して、今貴方の元にいるのです。長い時間と金を費やしているのです。まあ…それほど我々も現在の国のあり方に、この国の未来を危惧しているのです。だから王子にはくれぐれもあの娘を大事にしてもらいたい。」


フェリーチェは『王冠の乙女』として見つかってしまったばかりに両親を殺され不自然な形で男を愛するように仕向けられ、自分の元に送られたのだとアーサーは初めて知ったのだった。

「ブラスバン公爵は…大切にしろと言いながらフェリーチェに何と酷い仕打ちをしたのだ!!」
「本人は何も知らないのだから良いではないですか。いいですか?王子は次期王になる。あの娘を大切にしているだけで国は厄災から免れるのです。大切なのはこれからです。」

そう言うとガートルは深々と頭を下げて出て行った。



アーサーはフェリーチェの境遇を思うと可哀想で仕方がなかったが、彼女の出地が気になりユージェニーに調べるようにと指示した。

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