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13 筆頭婚約者候補
前王太子の死亡から半年。
立太子の祝の夜会はせずに、アーサーが王太子になったと発表だけがあった。
寝込んでいた王妃は静養のために湖畔の離宮にこもっていて城へ来ることもなくなってしまった。
半身不随のエスカペイドは懸命にリハビリをしているが。
何とかベッドで身体を起こせるまでにはなったがまだまだ先は長い。
そして…婚約は解消された。
フェリーチェのもとに来客があった。
またも突然、エスカペイド王子の婚約者だったセビリアーナともう一人、着飾った令嬢だった。
「お久しぶりですね。息災でしたか。私はエスカペイド様の婚約者でなくなったので今後、こちらに来ることはございませんけども…今日はこちらの私の友人が貴女に会いたいと仰ったのでお連れしました。」
フェリーチェはまたもや高位貴族の令嬢相手に緊張していた。
今回は二人相手なのだから尚更だ。
侍女はお茶を淹れると部屋の隅に控えた。
フェリーチェは立ち上がると二人に向かってカーテシーをした。
「お初にお目にかかります。フェリーチェ・ネージュと申します。」
今日のフェリーチェのドレスは飾りの少ない物であったが、素材や宝飾品等は格式の高いものでアーサーの思い入れがわかる。
エマはフェリーチェを上から下まで見回すとにこりと笑った。
「かわいらしいお方ね。はじめまして。私は公爵家の次女でエマ・ハミルトンと言うのよ。」
彼女は美しい仕草でお茶を一口飲んで少し考えるような顔をした。
「アーサー殿下が立太子されたと発表がございましたわ。ご存じよね?」
「はい。」
「殿下のご年齢で婚約者がいないということは珍しいことなのですよ。私としては、則妃のお子であるアーサー殿下との縁談は今まで興味がなかったのですわ。でも王太子になられましたから。後ろ盾のない殿下には3大公爵家の娘である私との婚姻が必要になります。私は殿下の筆頭婚約者候補ですの。」
エマに何かを伺うような目で見つめられても、フェリーチェは何も答えられなかった。
一体、エマが何を言いたいのかわからないのだ。
「それで、貴女はいつまでここにおられるのかしら?セビリアーナ様の話ですとあなたのような立場の方は王子に婚約者ができるまでのお役目と聞いたのだけど何か言われまして?」
「いいえ。殿下からはまだ何も言われておりません。」
「そうなのね。でも、貴女もそういう心づもりでいらしたほうがいいわ。それがいつになるかわかりませんけど近いうちだと思いますわよ。もう、貴女とは会うことはないかもしれないから言っておきますわね。今まで殿下をありがとう。ご苦労さまでした。」
その時、寝室側のドアをカリカリとかく音が聞こえた。
怪しい音にエマとセビリアーナは眉をひそめる。
「あっ。心配しないでください。猫を飼っているんです。」
「猫?動物を飼ってらっしゃるの?ああ…どうりで…。」
2人の令嬢はフェリーチェに見下すような視線を向けた。
「いえね…何か臭うと思っていたのですわ。なんだか獣がいると聞いて気分が悪くなってきましたわ。私達は失礼いたしますわね。」
「それでは御機嫌よう。」
令嬢たちは何やら目を見合わせるとクスリと笑って出て行った。
フェリーチェは何ともいえない嫌な気分を味わった。
猫を飼うこと自体、貴族の中では少ないのかも知れないが、あの臭うと言ったのはきっと自分の身分のことを馬鹿にされて笑われたのだろう。
アーサー様に、とうとう婚約者ができるんだ。
でも、あんな意地悪そうな目をした人が婚約者になるなんて、生まれで人を見下すような人がアーサー様の伴侶に相応しいのだろうか?
あんな人が未来の王妃なんて…。
そもそもあの人達は何のためにここに来たのだろうか?
でも…婚約者ならば身分差があって一緒にはなれないけど愛されている私がいたら気になるわよね…。
フェリーチェは寝室に入りキティを抱くとベッドに横になった。
しょんぼりして寝室に入るフェリーチェをセリーヌは同情しながら見つめていた。
立太子の祝の夜会はせずに、アーサーが王太子になったと発表だけがあった。
寝込んでいた王妃は静養のために湖畔の離宮にこもっていて城へ来ることもなくなってしまった。
半身不随のエスカペイドは懸命にリハビリをしているが。
何とかベッドで身体を起こせるまでにはなったがまだまだ先は長い。
そして…婚約は解消された。
フェリーチェのもとに来客があった。
またも突然、エスカペイド王子の婚約者だったセビリアーナともう一人、着飾った令嬢だった。
「お久しぶりですね。息災でしたか。私はエスカペイド様の婚約者でなくなったので今後、こちらに来ることはございませんけども…今日はこちらの私の友人が貴女に会いたいと仰ったのでお連れしました。」
フェリーチェはまたもや高位貴族の令嬢相手に緊張していた。
今回は二人相手なのだから尚更だ。
侍女はお茶を淹れると部屋の隅に控えた。
フェリーチェは立ち上がると二人に向かってカーテシーをした。
「お初にお目にかかります。フェリーチェ・ネージュと申します。」
今日のフェリーチェのドレスは飾りの少ない物であったが、素材や宝飾品等は格式の高いものでアーサーの思い入れがわかる。
エマはフェリーチェを上から下まで見回すとにこりと笑った。
「かわいらしいお方ね。はじめまして。私は公爵家の次女でエマ・ハミルトンと言うのよ。」
彼女は美しい仕草でお茶を一口飲んで少し考えるような顔をした。
「アーサー殿下が立太子されたと発表がございましたわ。ご存じよね?」
「はい。」
「殿下のご年齢で婚約者がいないということは珍しいことなのですよ。私としては、則妃のお子であるアーサー殿下との縁談は今まで興味がなかったのですわ。でも王太子になられましたから。後ろ盾のない殿下には3大公爵家の娘である私との婚姻が必要になります。私は殿下の筆頭婚約者候補ですの。」
エマに何かを伺うような目で見つめられても、フェリーチェは何も答えられなかった。
一体、エマが何を言いたいのかわからないのだ。
「それで、貴女はいつまでここにおられるのかしら?セビリアーナ様の話ですとあなたのような立場の方は王子に婚約者ができるまでのお役目と聞いたのだけど何か言われまして?」
「いいえ。殿下からはまだ何も言われておりません。」
「そうなのね。でも、貴女もそういう心づもりでいらしたほうがいいわ。それがいつになるかわかりませんけど近いうちだと思いますわよ。もう、貴女とは会うことはないかもしれないから言っておきますわね。今まで殿下をありがとう。ご苦労さまでした。」
その時、寝室側のドアをカリカリとかく音が聞こえた。
怪しい音にエマとセビリアーナは眉をひそめる。
「あっ。心配しないでください。猫を飼っているんです。」
「猫?動物を飼ってらっしゃるの?ああ…どうりで…。」
2人の令嬢はフェリーチェに見下すような視線を向けた。
「いえね…何か臭うと思っていたのですわ。なんだか獣がいると聞いて気分が悪くなってきましたわ。私達は失礼いたしますわね。」
「それでは御機嫌よう。」
令嬢たちは何やら目を見合わせるとクスリと笑って出て行った。
フェリーチェは何ともいえない嫌な気分を味わった。
猫を飼うこと自体、貴族の中では少ないのかも知れないが、あの臭うと言ったのはきっと自分の身分のことを馬鹿にされて笑われたのだろう。
アーサー様に、とうとう婚約者ができるんだ。
でも、あんな意地悪そうな目をした人が婚約者になるなんて、生まれで人を見下すような人がアーサー様の伴侶に相応しいのだろうか?
あんな人が未来の王妃なんて…。
そもそもあの人達は何のためにここに来たのだろうか?
でも…婚約者ならば身分差があって一緒にはなれないけど愛されている私がいたら気になるわよね…。
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