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26 宿る命 ①
「フェリーチェ様は?」
「少しお休みになられるみたいよ。」
「そう?」
「そう言えば、昨日もお昼すぎに寝室に入られたわ。」
「体の具合が悪いのかしら。」
シャネルとセリーヌは食器を片付けながら話していた。
「実は、その気になることがあるんだけど。貴女も気がついてるんでしょう?」
「…ええ。たぶん。」
「アニエスも気づいてるかしら?」
「どうかな。あの子は入ってそんなにたってないから。」
二人はお互いを探るように見つめ合った。
「フェリーチェ様は2ヶ月、月のものが来てないわ。」
「昨日も今日も体がだるいと仰ってた。」
「どうするの?もし妊娠だったら…私たちはどうなる?解雇だけで済むかしら。」
「でも…陛下はもう3カ月以上いらしてないのよ?それにご結婚前は来られてたけどすぐに帰ってらしたから閨事はされてないはず。」
「誰のお子だというの?」
「常に私たちがいたのよ。陛下以外とそんな事を出来るはずがないわ。」
「では何か病気とか?猫が死んだ時みたいに心労から来てるとか?」
「どうする?医師に診ていただく?」
「でも…それだと陛下に許可を取らなければならないわね。もしも妊娠だったら…。」
ふたりともいい案が見つからなかった。
「どうする?アニエスにもどう思うか聞いてみる?」
「あの子、今日はサヴォア家に帰ってるわよ。」
「そう…。ねえ、ブラスバン公爵に報告する?しなくちゃ駄目よね。」
「もし、違ってたら?大騒ぎになるわ。」
「なら、今月いっぱい様子を見ましょう。それで…月のものが来なければ、医師を手配してもらわないと。あまり育つとお子を流すときにフェリーチェ様の身体にご負担がかかるわ。」
シャネルは腕を組むとブルリと震えた。
「ねえ。まだ、妊娠してても不安定な時期でしょう?だから自然に流産してもらったらどう?初期なんだからフェリーチェ様のお体にもそう負担にはならないはずよ。」
「えっ。」
「動いてもらえばいいのよ。重いものを持ったり、外に出る回数を増やして。疲れさせて…お腹を圧迫するような事を…。」
「ええっ。そんな事をさせるの?」
「仕方ないわ。フェリーチェ様もきっと妊娠は望んでおられないと思うわ。」
「まだ…妊娠だとは。」
「フェリーチェ様自身も気がついてないなら、知らないうちに流れる方がいいわよ。」
アニエスにはフェリーチェ様は陛下のお渡りがなくて気落ちしておられるから、できるだけ外に出てもらい明るい気分になってもらいましょうと伝えた。
フェリーチェは侍女たちに外に行こうと言われ、暑い中裏庭に行きしゃがんで猫の墓に花を捧げ、馬車で外出する時も郊外へ行こうと誘われて長時間連れ回された。
それも履かされるのは決まってハイヒールなのだ。
気分転換にはなるが長い時間の馬車移動はフェリーチェの体にひびいた。
郊外の砂利道をハイヒールで歩くのはとても疲れた。。
毎日、疲れて眠り微熱が出る日もあった。
「あの、お聞きしたいのですが。お二人がフェリーチェ様を無理矢理連れ出しているように感じるのですが。あれではそのうち体調を崩されてしまいます。今日もこんなに暑い中、わざわざ郊外まで出掛ける必要があったのでしょうか?」
アニエスにそう言われてセリーヌもシャネルも何も言えなかった。
「フェリーチェ様は微熱が出ておられます。しばらくは部屋でゆっくりされた方がいいのではないですか?」
「それじゃあ、駄目なのよ!」
「まさかフェリーチェ様の体調を崩すのが目的で連れ回しているのですか?」
アニエスの目つきが鋭くなり声が低くなった。
「っ。仕方ないでしょう…お子が流れないとフェリーチェ様も私たちも大変なことになるわ…。」
シャネルは泣き出し、セリーヌは祈るように手を組んだ。
「もう時期3ヶ月になるわ。大きくなったらフェリーチェ様の身体に負担がかかるわ。」
「どうして宮廷医師を呼ばないのですか?」
「陛下の許可がいるからよ。」
「では、私がサヴォア家から医師を派遣してもらいます。お子を流すにしても医師に処置していただいたほうが安全なはずでしょう?」
「バカね。そんな事をしたらそくブラスバン公爵にも筒抜けよ。妊娠を防ぐために私たちはいるんだもの。陛下が来ないから避妊薬はずっと差し上げてなかったのよ。いつも閨の翌日に服用する薬湯だったから。」
「ああ…私たちは侍女の座を追われるわ。失態だから紹介状もなく追い出されてしまうわ。いえ、何か罰を受ける可能性だってあるわ!どうすればいいの。」
そう言うとシャネルはへたり込んでしまった。
「あの…それでは誰のお子なのですか?」
「…。」
「…分からないわ。私たちが全く気づかないうちにそんな事をしたなんてありえないわ。でも…。」
「フェリーチェ様に会う男の方というのは陛下とニュイ様とユージェニー様だけですよね…。」
「でも私たちは夜遅い時間には下がるでしょう?アニエスが来るまで私たち二人でのお世話の期間があって就寝の時間が過ぎたら下がってたから。その後に誰か来ても分からないわ。」
「あっ…もう一人いるわ!カマユー様とよく出掛けられてたじゃない。仲良くされてたわ。」
「…それを言うなら、あの日、陛下の結婚式の日は私たち早い時間から留守にしたじゃないの!その時に…。それなら妊娠の時期は合うわ。」
「カマユー様とは誰ですか?」
「カマユー様は王妃様の婚姻に同行されてたカカヤン連合国の外交の方よ」
アニエスは何やらじっと考えていたがしっかりした声で言った。
「思いますに、とにかく妊娠が確実なのか確かめましょう。サヴォア家は通さずに私が医師を用意いたします。あの…それで、フェリーチェ様は堕胎をお望みなんでしょうか?」
「少しお休みになられるみたいよ。」
「そう?」
「そう言えば、昨日もお昼すぎに寝室に入られたわ。」
「体の具合が悪いのかしら。」
シャネルとセリーヌは食器を片付けながら話していた。
「実は、その気になることがあるんだけど。貴女も気がついてるんでしょう?」
「…ええ。たぶん。」
「アニエスも気づいてるかしら?」
「どうかな。あの子は入ってそんなにたってないから。」
二人はお互いを探るように見つめ合った。
「フェリーチェ様は2ヶ月、月のものが来てないわ。」
「昨日も今日も体がだるいと仰ってた。」
「どうするの?もし妊娠だったら…私たちはどうなる?解雇だけで済むかしら。」
「でも…陛下はもう3カ月以上いらしてないのよ?それにご結婚前は来られてたけどすぐに帰ってらしたから閨事はされてないはず。」
「誰のお子だというの?」
「常に私たちがいたのよ。陛下以外とそんな事を出来るはずがないわ。」
「では何か病気とか?猫が死んだ時みたいに心労から来てるとか?」
「どうする?医師に診ていただく?」
「でも…それだと陛下に許可を取らなければならないわね。もしも妊娠だったら…。」
ふたりともいい案が見つからなかった。
「どうする?アニエスにもどう思うか聞いてみる?」
「あの子、今日はサヴォア家に帰ってるわよ。」
「そう…。ねえ、ブラスバン公爵に報告する?しなくちゃ駄目よね。」
「もし、違ってたら?大騒ぎになるわ。」
「なら、今月いっぱい様子を見ましょう。それで…月のものが来なければ、医師を手配してもらわないと。あまり育つとお子を流すときにフェリーチェ様の身体にご負担がかかるわ。」
シャネルは腕を組むとブルリと震えた。
「ねえ。まだ、妊娠してても不安定な時期でしょう?だから自然に流産してもらったらどう?初期なんだからフェリーチェ様のお体にもそう負担にはならないはずよ。」
「えっ。」
「動いてもらえばいいのよ。重いものを持ったり、外に出る回数を増やして。疲れさせて…お腹を圧迫するような事を…。」
「ええっ。そんな事をさせるの?」
「仕方ないわ。フェリーチェ様もきっと妊娠は望んでおられないと思うわ。」
「まだ…妊娠だとは。」
「フェリーチェ様自身も気がついてないなら、知らないうちに流れる方がいいわよ。」
アニエスにはフェリーチェ様は陛下のお渡りがなくて気落ちしておられるから、できるだけ外に出てもらい明るい気分になってもらいましょうと伝えた。
フェリーチェは侍女たちに外に行こうと言われ、暑い中裏庭に行きしゃがんで猫の墓に花を捧げ、馬車で外出する時も郊外へ行こうと誘われて長時間連れ回された。
それも履かされるのは決まってハイヒールなのだ。
気分転換にはなるが長い時間の馬車移動はフェリーチェの体にひびいた。
郊外の砂利道をハイヒールで歩くのはとても疲れた。。
毎日、疲れて眠り微熱が出る日もあった。
「あの、お聞きしたいのですが。お二人がフェリーチェ様を無理矢理連れ出しているように感じるのですが。あれではそのうち体調を崩されてしまいます。今日もこんなに暑い中、わざわざ郊外まで出掛ける必要があったのでしょうか?」
アニエスにそう言われてセリーヌもシャネルも何も言えなかった。
「フェリーチェ様は微熱が出ておられます。しばらくは部屋でゆっくりされた方がいいのではないですか?」
「それじゃあ、駄目なのよ!」
「まさかフェリーチェ様の体調を崩すのが目的で連れ回しているのですか?」
アニエスの目つきが鋭くなり声が低くなった。
「っ。仕方ないでしょう…お子が流れないとフェリーチェ様も私たちも大変なことになるわ…。」
シャネルは泣き出し、セリーヌは祈るように手を組んだ。
「もう時期3ヶ月になるわ。大きくなったらフェリーチェ様の身体に負担がかかるわ。」
「どうして宮廷医師を呼ばないのですか?」
「陛下の許可がいるからよ。」
「では、私がサヴォア家から医師を派遣してもらいます。お子を流すにしても医師に処置していただいたほうが安全なはずでしょう?」
「バカね。そんな事をしたらそくブラスバン公爵にも筒抜けよ。妊娠を防ぐために私たちはいるんだもの。陛下が来ないから避妊薬はずっと差し上げてなかったのよ。いつも閨の翌日に服用する薬湯だったから。」
「ああ…私たちは侍女の座を追われるわ。失態だから紹介状もなく追い出されてしまうわ。いえ、何か罰を受ける可能性だってあるわ!どうすればいいの。」
そう言うとシャネルはへたり込んでしまった。
「あの…それでは誰のお子なのですか?」
「…。」
「…分からないわ。私たちが全く気づかないうちにそんな事をしたなんてありえないわ。でも…。」
「フェリーチェ様に会う男の方というのは陛下とニュイ様とユージェニー様だけですよね…。」
「でも私たちは夜遅い時間には下がるでしょう?アニエスが来るまで私たち二人でのお世話の期間があって就寝の時間が過ぎたら下がってたから。その後に誰か来ても分からないわ。」
「あっ…もう一人いるわ!カマユー様とよく出掛けられてたじゃない。仲良くされてたわ。」
「…それを言うなら、あの日、陛下の結婚式の日は私たち早い時間から留守にしたじゃないの!その時に…。それなら妊娠の時期は合うわ。」
「カマユー様とは誰ですか?」
「カマユー様は王妃様の婚姻に同行されてたカカヤン連合国の外交の方よ」
アニエスは何やらじっと考えていたがしっかりした声で言った。
「思いますに、とにかく妊娠が確実なのか確かめましょう。サヴォア家は通さずに私が医師を用意いたします。あの…それで、フェリーチェ様は堕胎をお望みなんでしょうか?」
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