王冠の乙女

ボンボンP

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フェリーチェは何か甘い飲み物が欲しくて寝室から出ようとしていた。
微熱があるせいで身体がとてもだるかったし一刻も早く寝たかった。

寝室のドアを開けようとした時、興奮したシャネルの声が聞こえた。
侍女たちの話を盗み聞きしてしまったのだ。


妊娠?
確かに月のものは止まっていた。

やはりあの夜、私の知らないうちにカマユー様がそういう事をしたんだわ。
どうすればいいの?アーサー様のお子ではないのに…


でも、アーサー様の子ではないなら産んでもいいのでは?
よくないか…
でも、ご結婚もされて、もう3月もお会いしてないし…その前から何かよそよそしい感じもしてた。

そろそろ、私は解放されるのかしら。
もしも、まだここから出してもらえなくても自分の子供がいれば耐えられる気がするわ。
この際、誰が父親でも関係ない、私の本当の家族ができるかも知れない。
もう一人で待つだけの生活は嫌だった。

それに…本当に赤ちゃんができたのならその命を自らの意思で絶つことは嫌だった。


フェリーチェはドアを開けて部屋に入った。

侍女たちが一斉にフェリーチェを見つめた。
みんなこちらを伺うような顔だった。

「甘い飲み物が欲しいのだけど、何かありますか。」

「はい、すぐにお持ちします。」
シャネルがすぐに出て行った。

アニエスがフェリーチェの前に進み出た。
「私たちの話を聞いておられたのですか?」

フェリーチェがコクリと頷くとセリーヌが叫ぶように謝った。
「も、申し訳ございません。お子が流れた方がいいと思い、良からぬことを考えてしまいました。本当に…申し訳ございません。」

「あなた達の気持ちはわかるけど…私が何も知らないうちに流産させようとするなんて、許せることではありません。先ほどの話しぶりではあなたとシャネルが考えたのね。」

「申し訳ございません!フェリーチェ様。」
床に頭を付けて泣くセリーヌをちらりと見たアニエスが言った。

「フェリーチェ様。とりあえず医師を連れてきます…いえ、こちらから行ったほうがいいかもしれないですね。妊娠してるか診てもらいましょう。予約を入れてまいりますのでお待ち下さいませ。それから…お聞きしますが陛下のお子でしょうか?」

「…違います。半年ほど陛下と閨を共にしていません。」
「どなたとのお子か聞いても良いですか?」

「もう、この国にはおられない方です。」
「そのお方と情を交わしたのでしょうか?私ごときがお聞きすることではございませんが。」

「いいえ。確かに素敵な方だったけど私はアーサー様に頼まれて街案内をしていたに過ぎません。短い期間でしたが贈り物などももらいましたが…。そう言った関係ではありません。」

「ならば、無理矢理襲われたのですか?」
「…何と言ったら良いのか、私が知らないうちにそのようなことをされていたのです。」

戻って来たシャネルは床で頭を下げるセリーヌを見てその横隣に頭を下げて床に座った。

私はあの日の夜のことを話した。
油断してカマユーを部屋に入れてしまったこと。
ワインを飲んでそのまま寝てしまって気がついたら朝だった。
どうも身体に違和感があったがカマユーに確認することができなかったこと。
そして、今、侍女の話を聞いて妊娠したと気づいたこと。

侍女たちは真剣に話を聞いていた。

アニエスが苦々しく言った。
「フェリーチェ様、ワインに薬を入れられたのですよ。薬を用意してたということは、絶対にその日に貴方様を抱くことが目的だったのでしょう。もし侍女がいたとしても無礼講だと言って同じく薬入りのワインを飲ませたか、部屋から出ていくように命じたかは分かりませんが。でも相手にとってはその日、フェリーチェ様が一人だったので誰にも邪魔されず実行出来たということです。」

フェリーチェもやはりおかしいとは思っていたのだ。

ワインもグラスに半分ほどしか飲んでいなかった。
いくら寝てしまったとしても性交を全く覚えていないなんて、最中に目を覚まさないなんてありえるんだろうかと。

セリーヌとシャネルはカマユーに好意的だったので、ショックを受けているようだった。

「フェリーチェ様。これはお伝えしたほうがいいのか分かりませんが、言いましょう。カマユー様は王妃様の実兄でございます。カマユー・ヨーク様は前回王太子のお祝いで我国に来られた際に、妹のスタリナ様と陛下を引き合わせました。そして…お二人はご結婚されたのです。」

「王妃の兄?ならばどうして私の所に?アーサー様はそんな事を一言も仰らなかった。」

「陛下の意図はわかりません。でも仮に、私が恋人のいる男性と結婚するとなれば、兄はきっと反対するか、男性に対して恋人と別れるように言うでしょう。陛下もわざわざ結婚する相手の兄に、自分が王宮に住まわせている恋人を紹介するなんて普通では考えられません。」

アニエスの言うことはわかる。
「ならば、アーサー様は断れない何かがあってカマユー様を私に紹介した。カマユー様は…私が浮気をしてアーサー様に追い出されるのを狙ったのかしら?確かに…妊娠しているならば言い逃れはできないわね。あんなに親切にしてくださってたのに…私に好意を持たせようとしていたのね…。」

みんな下を向いて押し黙ってしまった。

何だかとても自分が惨めになってしまった。
どうして、知らないところで疎まれてこんな目に合わなければならないのか。


「ごめんなさい。しばらく休むわ。夕食は何か軽いものをテーブルに置いておいて下さい。食べられるかわからないけど。」








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