王女の夢見た世界への旅路

ライ

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第3章 エスペルト王国の動乱

9 戦い明けのとある日

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 帝国軍とのにらみ合いが続くなか、私たち王国軍は交替で休暇を取るようにしている。
 状況が状況のため、基本的には都市にいることになるけれど、今日1日私は休日だった。

「リーナ。今日は休みだから、街を散策するわよ。いつもどおり目立たないように、こっそりとよろしくね。」

「かしこまりました。では行きましょうか。ティア。」

 久しぶりの一般庶民ティアとしての行動である。なお髪型と髪色、瞳の色だけでは、休暇をとっている兵士と遭遇したときにばれそうなため、さらに眼鏡による変装もしている。



 セプテンリオの街の中を歩く機会は意外となかった。こちらに来て以降、街の中にいても城門と領城の行き来がほとんどであったし、他は街の外で砦にいることがほとんどだったからだ。

 街に住む人々は、帝国との戦争で不安もあるだろうけど、街を歩く人々もお店を開いている人々も笑顔で溢れていて、王都とも遜色ないくらいの賑わいを見せている。

(街の中のこの日々が、いつまでも続くと良いわね…そのためにも負けられないわ!)

 内心で改めて決意をして、街の中へ歩いていった。



「国境にあるだけあって、王都ではあまり見ないものも多いわね。」

「そうですね。商人はこの状況でも帝国とやり取りしていますし、他の国から輸入しているものもあるでしょうから。」

 グランバルド帝国と戦争中の今でも商人たちのやりとりについては制限していない。
 無論、入国する際の検査は厳しくなっているが、入国基準は変わらないままだった。
 というのも、仮に間諜などが入国する場合、ここじゃない他の都市から入ったら同じだろうということで、あまり意味がないからだ。

(もっとも、こちらの情報は帝国も得ていたから間諜はいるでしょうね。あるいは…)

「どこから行きますか?」

「そうね、とりあえずご飯でも食べましょうか?」

 リーナの呼びかけに応えて、近くの店内に入る。
 サンドイッチを注文すると、この辺りの特産品をふんだんに使った品が出てきた。

「王都であまり出てこない野菜や果物が多いから新鮮ね。」

「ええ、美味しいです。私も初めて食べました!」

 食事をしながら、周りの会話にも耳を傾ける。
 やはり話題は帝国とのことが多かった。もともと険悪ではあったものの、こうして直接衝突が起きたのはここ数十年なかったはずだ。幸い街の中では特に悪い変化はなさそうだった。

 食事を終えると、市場を見て回る。いろいろなお店を見て、珍しいものや人気のあるものなどを買っていく。
 最後に花屋によって拠点へ戻る。

「おすすめはなにかありますか?」

「この季節だとサルビアや文目かねぇ。あとは最近だとツツジやケシ、菫もおすすめだね。」

「…ではおすすめの花を使って、部屋に飾るように見繕ってくれませんか?」

 最後に部屋用の花を受け取って拠点へと戻る。

 途中、遠回りしているとスラム街の近くに着いた。

(やっぱりこの辺りは王都もここも変わらないわね。孤児やスラムへの援助は、教会が基本的に取り仕切っている。本当は、国としてもなにかできればいいけど…今の私じゃ政治的にどうこうすることはできない。そういう意味でも力をつけないとね…)



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 一方で、王都にあるグラディウス公爵家の本邸。
 俺、アドリアスは父上に相談していた。

「ふむ…魔剣が欲しいと。」

「ええ、直接戦ったわけではありませんが帝国の将軍は相当な強さだと思われます。もし此度の戦いで攻めてきた場合、厳しいと考えています。」

「…若いうちは通常の武器で慣らしておいて、正式に軍属になったときに渡すつもりであったが、今のお前なら使えるかもしれないな。着いてこい。」

 そういうと父上は、家の地下に降りていく。しばらく階段を降りてついたのは、ひとつの部屋だった。

 扉を開けると数々の武器や防具が見えてくる。
 父上が中に入るので、慌ててついていく。すると立て掛けてある剣の前で止まった。

「これをお前に託す。魔槍アルカナスト。持ち主に強大な力を与える槍だ。いずれお前も元帥になったとき、聖槍を使うことになるだろう。そのための準備だと思うと良い。この手の武具は、持ち主を選ぶ。それだけは覚えておけ。」

「ありがとうございます。父上の期待に添えるよう頑張ります。」

 俺は魔槍アルカナストを携えてセプテンリオへと戻る。

(相手が将軍だろうと誰であろうと、必ず勝つ!この国を、ラティアーナを護る。)
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