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第11章 壊れかけのラメルシェル
32 合流、そして空へ
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「誰もいない……かな?」
試しに集中力を上げて辺りを探ってみるが、近くに魔力や気配は感じなかった。念のため探知魔術を何度か行使してみても反応は何も帰ってこない。
「私の眼で見ても人の姿は見えないわ。恐らく大丈夫だと思うけど、ここからどうするの?」
「とりあえず操縦室を目指す。上手くいけばそこから全て操作できるはず」
プレアデスの眼で見てもいないということは本当に無人なのだろう。であれば安心して隠密行動をやめて最速で行動することができる。
そして飛空船だが、ほとんどの船は太古の時代に造られた物が遺物になっている。
私がよく知るものはエスペルト王国やグランバルド帝国、北の大陸で使われていた船くらいだが、内装が多少違うだけで基本的な造りは一緒だった。
現代では再現できない失われた技術を多く用いている飛空船は、どこの国でもあまり改造せずにそのまま運用している可能性が高かった。
しばらく船首の方向へ歩き続けて、いくつかの扉を潜り抜けると広い場所へと出る。そこには、様々な計器や舵輪やレバーなどが存在し、外を一望することができる窓があった。
「よし……当たりみたいだね」
パッと見た感じでは私が知っている造りと大きく変わっているところはない。少しだけ安堵してホッと胸を撫で下ろす。
「動かせそう?」
「多分大丈夫かな……ここから一通り動かせそう」
艦橋にある艦長席には動力系の制御をはじめ操縦系、兵装系の制御までできる仕組みらしい。
船の中や席を行ったり来たりしなくて済むため、出航までの時間を早めることができそうだ。
私は手順を言葉に出して思い出しながら船を動かしていく。
「魔力炉ロック解除。稼働率上昇」
最低限の力で稼動していた魔力炉を制御可能な安全圏ぎりぎりまで稼動させる。そうすることで魔力炉によって増幅した魔力が飛空船全体に行き渡ると船内を照明が照らしだした。
「動力炉接続。エンジン起動。圧力上昇……プレアデスお願いがあるんだけど紫陽に船に載ってと伝えてくれない?」
「わかったわ。すぐ出発できるの?」
「出発だけならね。ただ荒っぽくなるから船内に入って欲しいの」
プレアデスが一つ頷いて実体化を解いたのを見て、再度船の操作に戻る。エンジンの圧力を一定以上までに上げて飛行するための直前状態で待機させた。
「魔力砲回頭。充填開始……」
本来、飛空船というものは飛行機とヘリコプターを兼ね備えたような動きを可能にしていた。ここの格納庫のように四方が壁に囲まれていても垂直飛行することで上部からの出入りができる。
しかし、垂直飛行の操作方法は私が知るものと異なるらしくやり方が分からなかった。となると、私が採ることができる手段は一つだけになる。
『紫陽と船の中に入ったわ。ただ敵が数人近付いているから気をつけて!』
『分かった。どこかに捕まっていて!』
プレアデスからの念話に返した私はレバーを一気に押し上げる。同時に舵輪を引きながら魔力砲の照準をできる限り前に向けて引き金を引き続ける。
船の魔力砲からは、魔力弾が打ち出されて格納庫の壁を徐々に破壊していった。
「あとは船体が持てば……」
飛空船がエンジンからの魔力噴射に推されて前へ動き出す。同時に船体が地面に擦れていることで、ガガガガと飛空船全体を揺らしていた。
少しして飛空船が宙に浮き揺れが収まると同時に船体に一際大きな衝撃が襲いかかってきた。
その揺れはプレアデスたちにも伝わっていて心配そうな声が聞こえてくる。
『ちょっと大丈夫?落ちないのよね?』
『きっと大丈夫……多分。もう少しで落ち着くはず』
魔力砲を掃射しても格納庫の壁を全て破壊することは難しかった。だからこそ、できる限り破壊して壁を脆くした状態で、飛空船ごと体当たりするしかなかったわけだ。
結果として、船体がいくつか損傷したが落ちるほどの傷を負うことなく飛び立つことができた。
『多分って……まぁいいわ。紫陽をティアの元に連れていくわ。それから黒羽にも伝えておくね』
『ありがとう。助かる』
プレアデスにお礼を伝えた私は、船体を安定させようと調整をする。
本当であれば上空でそのまま滞空させたかったが、操作方法がわからない。仕方がないので、できる限りの低速でゆっくりと旋回することにした。大体の魔術が届かないぎりぎりの高度を維持する。
そして、しばらくすると人の気配と共に扉が開く音がした。どうやら紫陽とプレアデスが戻ってきたようだった。
「お待たせしました。黒羽ももうすぐ来るようです」
紫陽は少しだけ疲れを見せた様子で言葉にする。
ふと視線を向けると衣服などが少し汚れて傷ついていた。恐らく戦闘があったのだろうが大きな怪我などはしていなさそうだったので少し安心した。
「下の様子はどうだった?」
「流石に敵にばれましたね。数十人単位で攻めてきましたが雑兵ばかりで助かりました」
「それは助かったけど……少し腑に落ちないね。せめて皆の避難が間に合えばいいな……」
コルキアスやルドルフ並みの強さと行かなくても副官並みの強さを持った人間は何人かいるのが普通だ。
本当に派遣されていなかったのか別働隊にいるのか分からないがアイラたちの無事を祈るばかりだった。
「ちょうど黒羽も到着したみたいね」
すると、プレアデスが視線を外に向けながら呟く。どうやら黒羽も飛空船への到着したらしかった。
「じゃあ、急いでここを発とうか!」
黒羽が船内に入ったのを確認した私は舵輪を引き上げて船の高度を上げようとした。
試しに集中力を上げて辺りを探ってみるが、近くに魔力や気配は感じなかった。念のため探知魔術を何度か行使してみても反応は何も帰ってこない。
「私の眼で見ても人の姿は見えないわ。恐らく大丈夫だと思うけど、ここからどうするの?」
「とりあえず操縦室を目指す。上手くいけばそこから全て操作できるはず」
プレアデスの眼で見てもいないということは本当に無人なのだろう。であれば安心して隠密行動をやめて最速で行動することができる。
そして飛空船だが、ほとんどの船は太古の時代に造られた物が遺物になっている。
私がよく知るものはエスペルト王国やグランバルド帝国、北の大陸で使われていた船くらいだが、内装が多少違うだけで基本的な造りは一緒だった。
現代では再現できない失われた技術を多く用いている飛空船は、どこの国でもあまり改造せずにそのまま運用している可能性が高かった。
しばらく船首の方向へ歩き続けて、いくつかの扉を潜り抜けると広い場所へと出る。そこには、様々な計器や舵輪やレバーなどが存在し、外を一望することができる窓があった。
「よし……当たりみたいだね」
パッと見た感じでは私が知っている造りと大きく変わっているところはない。少しだけ安堵してホッと胸を撫で下ろす。
「動かせそう?」
「多分大丈夫かな……ここから一通り動かせそう」
艦橋にある艦長席には動力系の制御をはじめ操縦系、兵装系の制御までできる仕組みらしい。
船の中や席を行ったり来たりしなくて済むため、出航までの時間を早めることができそうだ。
私は手順を言葉に出して思い出しながら船を動かしていく。
「魔力炉ロック解除。稼働率上昇」
最低限の力で稼動していた魔力炉を制御可能な安全圏ぎりぎりまで稼動させる。そうすることで魔力炉によって増幅した魔力が飛空船全体に行き渡ると船内を照明が照らしだした。
「動力炉接続。エンジン起動。圧力上昇……プレアデスお願いがあるんだけど紫陽に船に載ってと伝えてくれない?」
「わかったわ。すぐ出発できるの?」
「出発だけならね。ただ荒っぽくなるから船内に入って欲しいの」
プレアデスが一つ頷いて実体化を解いたのを見て、再度船の操作に戻る。エンジンの圧力を一定以上までに上げて飛行するための直前状態で待機させた。
「魔力砲回頭。充填開始……」
本来、飛空船というものは飛行機とヘリコプターを兼ね備えたような動きを可能にしていた。ここの格納庫のように四方が壁に囲まれていても垂直飛行することで上部からの出入りができる。
しかし、垂直飛行の操作方法は私が知るものと異なるらしくやり方が分からなかった。となると、私が採ることができる手段は一つだけになる。
『紫陽と船の中に入ったわ。ただ敵が数人近付いているから気をつけて!』
『分かった。どこかに捕まっていて!』
プレアデスからの念話に返した私はレバーを一気に押し上げる。同時に舵輪を引きながら魔力砲の照準をできる限り前に向けて引き金を引き続ける。
船の魔力砲からは、魔力弾が打ち出されて格納庫の壁を徐々に破壊していった。
「あとは船体が持てば……」
飛空船がエンジンからの魔力噴射に推されて前へ動き出す。同時に船体が地面に擦れていることで、ガガガガと飛空船全体を揺らしていた。
少しして飛空船が宙に浮き揺れが収まると同時に船体に一際大きな衝撃が襲いかかってきた。
その揺れはプレアデスたちにも伝わっていて心配そうな声が聞こえてくる。
『ちょっと大丈夫?落ちないのよね?』
『きっと大丈夫……多分。もう少しで落ち着くはず』
魔力砲を掃射しても格納庫の壁を全て破壊することは難しかった。だからこそ、できる限り破壊して壁を脆くした状態で、飛空船ごと体当たりするしかなかったわけだ。
結果として、船体がいくつか損傷したが落ちるほどの傷を負うことなく飛び立つことができた。
『多分って……まぁいいわ。紫陽をティアの元に連れていくわ。それから黒羽にも伝えておくね』
『ありがとう。助かる』
プレアデスにお礼を伝えた私は、船体を安定させようと調整をする。
本当であれば上空でそのまま滞空させたかったが、操作方法がわからない。仕方がないので、できる限りの低速でゆっくりと旋回することにした。大体の魔術が届かないぎりぎりの高度を維持する。
そして、しばらくすると人の気配と共に扉が開く音がした。どうやら紫陽とプレアデスが戻ってきたようだった。
「お待たせしました。黒羽ももうすぐ来るようです」
紫陽は少しだけ疲れを見せた様子で言葉にする。
ふと視線を向けると衣服などが少し汚れて傷ついていた。恐らく戦闘があったのだろうが大きな怪我などはしていなさそうだったので少し安心した。
「下の様子はどうだった?」
「流石に敵にばれましたね。数十人単位で攻めてきましたが雑兵ばかりで助かりました」
「それは助かったけど……少し腑に落ちないね。せめて皆の避難が間に合えばいいな……」
コルキアスやルドルフ並みの強さと行かなくても副官並みの強さを持った人間は何人かいるのが普通だ。
本当に派遣されていなかったのか別働隊にいるのか分からないがアイラたちの無事を祈るばかりだった。
「ちょうど黒羽も到着したみたいね」
すると、プレアデスが視線を外に向けながら呟く。どうやら黒羽も飛空船への到着したらしかった。
「じゃあ、急いでここを発とうか!」
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