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第13章 2度目の学園生活
65 私の気持ち
しばしの間、お茶会のような緩やかな時間が流れていく。
切り分けてくれたカルトカールがお皿から消え、いつのまにかワインボトルの中が少なくなっていた。楽しい時間はあっという間に過ぎていくのだと改めて感じているとローザリンデが姿勢を正して私のことを見る。
「もうそろそろ本題に入りましょうか。気分だけでも酔っていた方が恥ずかしさもマシになるでしょうし」
恥ずかしいという言葉で2人が何を話したいのか大体察することができた。一応他の人の目がある時は態度に出していないはずだが、よく気づくものだなと感心しているとローザリンデが答えを教えてくれた。
「お姉さまとコルネリアスのことは外からは分からないと思いますよ。クラスの担任として長く見ているカトレア様はともかく、わたくしはコルネリアスから相談を受けなければ気づきませんでしたし」
「相談?」
コルネリアスがローザリンデに相談していたことに少しだけ驚いた。いくら甥と伯母の関係とはいえ、あまり2人が話しているところを見たことがなかったからだ。
「どちらかというと相談よりは根回しに近いかもしれませんね。コルネリアスがお姉さまのことを振り向かせるために行動を起こすので、いざという時は危険に巻き込まれないよう守ってあげてほしいと……それでお姉さまとしてはどうなのですか?告白したときにすぐ断っていないということはコルネリアスのことを少なからず想っているのですよね?」
コルネリアスのことをどう想っているかと言われるとなかなかに難しい部分がある。人として好意は抱いているし、話している時は楽しいと思っている。会える時も嬉しいし彼が笑顔でいてくれたら幸せだとも思う。
けれど、この感情が恋なのか分からない。ラティアーナだった頃から恋愛というものに憧れはあったが、恋愛がどういったものなのか想像もできていない。
「コルネリアスのことは好きで愛情を抱いているとは思っているのだけど……恋愛と言っていいのか、それともただの家族愛なのか友愛なのか分からない……混ざり合い過ぎて複雑なのよ」
「……え?」
ローザリンデは意外そうな表情で目をパチパチと瞬く。
「なに?」
「いえ……お姉さまが意外なことをおっしゃったので……」
「別におかしなことじゃないと思うわよ?貴女って人の事にはよく気付くのに、意外と自身のことになると鈍くなるから」
「……気のせいだと思うけど」
カトレアの言葉に思わず言葉に詰まりそうになった。
確かに恋愛関係についてはよく分からないところはある。それでも私自身に向けられている感情を察することは得意のはずだ。今回はコルネリアスが一枚上手だったというだけで、コルネリアスの想いを知ってから私の想いを自覚しただけだ。決して鈍いわけではないと信じている。
「敵意に鋭くても好意には疎いというか……分かってはいても感情の大きさまでは気付いていないというか……本当に鈍くないというなら言われる前に自信の気持ちに気付くものじゃない?」
私が考えていたことはカトレアには筒抜けらしい。今度こそ返事する言葉が見つからずに僅かに視線をずらすことしかできない。
「し、仕方はないでしょう。今の私は貴族でもないからコルネリアスと恋をするなんて考えもしなかったのだから……」
「ティアは変なところで常識に囚われているわよね。確かに王太子妃や王妃なんて普通の平民出身だったら難しいと思うわよ。それでも後ろ盾となる貴族がいれば養子縁組とかの手段もあるわけで、本人に全てを掛ける覚悟さえあれば不可能でもないと思うわ」
「本当に平民が妃になろうとした場合でも可能性がゼロではないのです。お姉さまなら問題ないですよ」
王立学園の授業でも貴族としての教養は学ぶが、あくまで貴族としての最低ラインを超えるためのものだ。特に妃として王族入りするような場合は高位貴族の令嬢でさえも妃教育を行うのだから王妃や王太子妃の立場は簡単に務まるようなものではない。
「でも私には後ろ盾も何もないのよ?私の存在がコルネリアスの弱点になることだって……」
「後ろ盾くらいお姉さまでしたら、どうとでもなるでしょうに。それに、お姉さまの願いなら、いくらでも味方になりますから」
「わたくしだって今はしがない男爵夫人だけど……個人的な貴族の繋がりは今でも持っているから力にはなれるはずよ」
「そ、それにコルネリアスはラティアーナにとって甥に当たるわけで……もし本当のことを話したらどう思うか……」
話しているうちに私の心に引っ掛かっていた部分に気づいた。
コルネリアスが私がラティアーナだということを知って私への気持ちに変化が訪れてしまうのが怖かったのだ。そもそも中途半端な状況で王位を渡すことになり、リーファスやコーネリアの立場を不安定なものにしてしまった負い目がある。
もしかしたらコルネリアスにとってラティアーナの存在は好ましく思ってないかもしれない。
「大丈夫だと思いますよ。表には出していないですけど2人とも今でもお姉さまのことを大切に思っています。少なくとも嫌ってはいないでしょう」
「それに甥と伯母での結婚なんて貴族においては珍しくないことはティアが一番知っているわよね?他国や精霊教の信徒ならともかく、エスペルト王国の、特に高位の王侯貴族において一番重要なのは血の繋がった子へ繋げていくこと。過去には兄妹や姉妹で結婚したことだってあったじゃない」
「それはそうだけど……やっぱり怖いものは怖いじゃない?でもそうだよね……」
誰だって自分の気持ちを相手に告げることは怖いことだと思う。現状を変えようとするのは、とても勇気がいることだろう。だとしたら、次は私の番なのかもしれない。
「明日、生徒会が終わったらコルネリアスに答えるわ。私の隠し事も全部伝えて……それでもコルネリアスが想ってくれるなら私はコルネリアスと2人の未来を歩んでみたい。2人とも協力してくれる?」
「もちろんです」
「もちろんだわ」
「ありがとう」
2人の優しさにお礼を告げると私は明日のことでいくつかお願いをした。
それから更に半刻ほど話してから、この日の集まりは解散となった。
切り分けてくれたカルトカールがお皿から消え、いつのまにかワインボトルの中が少なくなっていた。楽しい時間はあっという間に過ぎていくのだと改めて感じているとローザリンデが姿勢を正して私のことを見る。
「もうそろそろ本題に入りましょうか。気分だけでも酔っていた方が恥ずかしさもマシになるでしょうし」
恥ずかしいという言葉で2人が何を話したいのか大体察することができた。一応他の人の目がある時は態度に出していないはずだが、よく気づくものだなと感心しているとローザリンデが答えを教えてくれた。
「お姉さまとコルネリアスのことは外からは分からないと思いますよ。クラスの担任として長く見ているカトレア様はともかく、わたくしはコルネリアスから相談を受けなければ気づきませんでしたし」
「相談?」
コルネリアスがローザリンデに相談していたことに少しだけ驚いた。いくら甥と伯母の関係とはいえ、あまり2人が話しているところを見たことがなかったからだ。
「どちらかというと相談よりは根回しに近いかもしれませんね。コルネリアスがお姉さまのことを振り向かせるために行動を起こすので、いざという時は危険に巻き込まれないよう守ってあげてほしいと……それでお姉さまとしてはどうなのですか?告白したときにすぐ断っていないということはコルネリアスのことを少なからず想っているのですよね?」
コルネリアスのことをどう想っているかと言われるとなかなかに難しい部分がある。人として好意は抱いているし、話している時は楽しいと思っている。会える時も嬉しいし彼が笑顔でいてくれたら幸せだとも思う。
けれど、この感情が恋なのか分からない。ラティアーナだった頃から恋愛というものに憧れはあったが、恋愛がどういったものなのか想像もできていない。
「コルネリアスのことは好きで愛情を抱いているとは思っているのだけど……恋愛と言っていいのか、それともただの家族愛なのか友愛なのか分からない……混ざり合い過ぎて複雑なのよ」
「……え?」
ローザリンデは意外そうな表情で目をパチパチと瞬く。
「なに?」
「いえ……お姉さまが意外なことをおっしゃったので……」
「別におかしなことじゃないと思うわよ?貴女って人の事にはよく気付くのに、意外と自身のことになると鈍くなるから」
「……気のせいだと思うけど」
カトレアの言葉に思わず言葉に詰まりそうになった。
確かに恋愛関係についてはよく分からないところはある。それでも私自身に向けられている感情を察することは得意のはずだ。今回はコルネリアスが一枚上手だったというだけで、コルネリアスの想いを知ってから私の想いを自覚しただけだ。決して鈍いわけではないと信じている。
「敵意に鋭くても好意には疎いというか……分かってはいても感情の大きさまでは気付いていないというか……本当に鈍くないというなら言われる前に自信の気持ちに気付くものじゃない?」
私が考えていたことはカトレアには筒抜けらしい。今度こそ返事する言葉が見つからずに僅かに視線をずらすことしかできない。
「し、仕方はないでしょう。今の私は貴族でもないからコルネリアスと恋をするなんて考えもしなかったのだから……」
「ティアは変なところで常識に囚われているわよね。確かに王太子妃や王妃なんて普通の平民出身だったら難しいと思うわよ。それでも後ろ盾となる貴族がいれば養子縁組とかの手段もあるわけで、本人に全てを掛ける覚悟さえあれば不可能でもないと思うわ」
「本当に平民が妃になろうとした場合でも可能性がゼロではないのです。お姉さまなら問題ないですよ」
王立学園の授業でも貴族としての教養は学ぶが、あくまで貴族としての最低ラインを超えるためのものだ。特に妃として王族入りするような場合は高位貴族の令嬢でさえも妃教育を行うのだから王妃や王太子妃の立場は簡単に務まるようなものではない。
「でも私には後ろ盾も何もないのよ?私の存在がコルネリアスの弱点になることだって……」
「後ろ盾くらいお姉さまでしたら、どうとでもなるでしょうに。それに、お姉さまの願いなら、いくらでも味方になりますから」
「わたくしだって今はしがない男爵夫人だけど……個人的な貴族の繋がりは今でも持っているから力にはなれるはずよ」
「そ、それにコルネリアスはラティアーナにとって甥に当たるわけで……もし本当のことを話したらどう思うか……」
話しているうちに私の心に引っ掛かっていた部分に気づいた。
コルネリアスが私がラティアーナだということを知って私への気持ちに変化が訪れてしまうのが怖かったのだ。そもそも中途半端な状況で王位を渡すことになり、リーファスやコーネリアの立場を不安定なものにしてしまった負い目がある。
もしかしたらコルネリアスにとってラティアーナの存在は好ましく思ってないかもしれない。
「大丈夫だと思いますよ。表には出していないですけど2人とも今でもお姉さまのことを大切に思っています。少なくとも嫌ってはいないでしょう」
「それに甥と伯母での結婚なんて貴族においては珍しくないことはティアが一番知っているわよね?他国や精霊教の信徒ならともかく、エスペルト王国の、特に高位の王侯貴族において一番重要なのは血の繋がった子へ繋げていくこと。過去には兄妹や姉妹で結婚したことだってあったじゃない」
「それはそうだけど……やっぱり怖いものは怖いじゃない?でもそうだよね……」
誰だって自分の気持ちを相手に告げることは怖いことだと思う。現状を変えようとするのは、とても勇気がいることだろう。だとしたら、次は私の番なのかもしれない。
「明日、生徒会が終わったらコルネリアスに答えるわ。私の隠し事も全部伝えて……それでもコルネリアスが想ってくれるなら私はコルネリアスと2人の未来を歩んでみたい。2人とも協力してくれる?」
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