王女の夢見た世界への旅路

ライ

文字の大きさ
457 / 505
第13章 2度目の学園生活

67 新しい関係

 ゆっくりと顔を離して熱を持った顔を誤魔化すように照れ隠しの笑みを浮かべる。
 その間もコルネリアスは呆気に取られて目を見開いたまま固まっていた。呆然としたまま彼が唇を指先で触れるとパチパチと私の口元に視線を向ける。
 少しして私が何をしたかを理解したようで頬を赤く染めて恥ずかしそうに視線を逸らした。

「不意打ちは……ずるいだろう……」

「想いが通じ合った後だし……誰もいないのだから口付けくらいいいでしょ。コルネリアスだって嫌じゃないよね?」

 大胆な行動をしたせいで鼓動がどくどくと荒くなっているが、恥ずかしさ以上に幸福感に包まれていた。口付けをした時のことはスピカから何度か話を聞いている。当時は想像でしかなかったが今となってはスピカの気持ちがよく分かる気がした。

「夢にまで見ていた事なのだからもちろん嬉しいが……少しは心の準備をさせてくれ。心臓に悪いぞ」

「ごめんごめん。こういった事も少しの間はお預けになると思ったら……ね?」

 正式な婚約者となるまではコルネリアスとこのような密室で2人になる機会はあまりないだろう。仮に今回のように誰かの協力を得られたとしてもたまの機会になるはずだ。
 想いを自覚した私は意外と積極的になるのだなと考えながら言い訳をしてみた。

「早く婚約者となって堂々と触れ合いたいものだ」

 コルネリアスも名残惜しそうに大きく息を吐いた。

「それで、これからどうするの?リーファス……国王陛下は私のことを認めていないのでしょう?」

「なかなか難しいだろうな。地道に説得は続けるつもりだが……とりあえず私とティアが恋仲であることを皆に示しておこうかと考えている。ティアには迷惑をかけてしまうかもしれないがな」

「いいと思うよ。私たちのことを皆に知ってもらった方が牽制できるし……その方がある程度は堂々と会えるからね」

 まだ婚約者ではないため周りに人がいる場で触れ合うことは難しいだろうし外聞を気にする必要もあるが、それでもコルネリアスと親しげに話すことはできる。
 何より婚約者の立場を狙っている令嬢たちを牽制できるのは嬉しく感じた。気持ちを自覚した今となっては、下心を抱いて彼に近づいてくる相手を見るのは不愉快だ。できることなら彼の隣は私だけの場所だと知らしめたい。

「婚約を認めさせることは私が頑張るべき問題だ。ただ貴族令嬢の中にはティアのことを排してでも婚約者になろうと考えるものもいるだろう。きっと面倒をかけると思う」

「大丈夫。私はコルネリアスの妃として隣にいたいから……そのために必要なことは何だってやるもの」

 何の後ろ盾もない平民で孤児に近い私がコルネリアスと結婚し王太子妃となり最後は王妃となるわけだ。ラティアーナが女王となった時よりも険しい道になるだろう。
 けれど、好きな相手と2人での人生を歩くための苦難であればいくらでも受け入れよう。今度こそ最期まで生きるためにも全力を尽くすだけだ。

「そうか……ありがとう」

「こちらこそ」

 この時間を名残惜しいと感じながらも一度だけ抱擁を交わした。約束の半刻までは少し時間があるが、この部屋をいつまでも占拠しているのは悪いだろうと学園長室を後にした。

「その様子だと上手くいったようですね」

 エントランスの近くではローザリンデが本を読みながら私たちのことを待っていた。私とコルネリアスの顔を交互に見て納得すると優しげな笑みを浮かべた。

「おかげさまでね。私はコルネリアスの恋仲になった……これからは妃になれるように頑張るわ」

「伯母上もありがとうございました」

「2人には幸せになってもらいたいですから。何かあればいつでも協力しますから遠慮なく言ってくださいね」

「ありがとう」

 ローザリンデにお礼を言うと彼女はもう一度笑みを浮かべて大きく頷いた。

 それからコルネリアスと共に寮に戻った私はアスカルテの部屋がある高位貴族向けの女子寮へ向かった。
 入り口にいる騎士にお願いして「上手くいった」とアスカルテに伝言を伝えてもらうと部屋の中で少し話をしたいと返事がくる。
 許可をもらって寮の中に入り、懐かしさを覚えるエントランスや廊下を進んでアスカルテの部屋がある最上階へと登る。この階は王族や公爵家専用となっていて、今年はアスカルテとレジーナしか使っていないフロアでもあった。

「ようこそ。今日のうちに来るとは思わなかったので驚きました」

 ドアノッカーを鳴らすとアスカルテが出迎えてくれた。普段から見ている制服やドレスのような格好ではなくワンピースのようなネグリジェを着ているところを見ると部屋の中で寛いでいたらしい。
 初めて見る格好でとても新鮮な気分だ。

「できるだけ早く報告をと思ってね。改めてコルネリアスとは正式に恋仲になったわ」

 その様子だと上手くいくと確信していたようだが、きちんと言葉にして伝えるとアスカルテは「嬉しいです」と自分のことのように喜んでくれた。
感想 1

あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼
ファンタジー
白髪碧眼の美少女公爵令嬢に転生した主人公が「私って、主要人物なの!?」となり、読書のため脇役を目指し奮闘するお話です。 読書時間を満喫したいという思いから、あれやこれやと頑張りますが、主要人物である以上、面倒ごとに巻き込まれるのはお決まりのこと。 腹黒(?)王子にウザ絡みされたり、ほかの公爵令嬢にお茶会を持ちかけられたり。あるときは裏社会へ潜入して暗殺者を従者にし、またあるときは主要人物と婚約し……ん? あれ? 脇役目指してるのに、いつのまにか逆方向に走ってる!? ✳︎略称はあくモブです ✳︎毎週火曜日と金曜日午前0時更新です。 ✳︎ファンタジー部門にて6位になりました。ありがとうございます(2025年10月7日) ✳︎カクヨムでも公開しております →https://kakuyomu.jp/works/16818093073927573146

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

前世は厳しい家族とお茶を極めたから、今世は優しい家族とお茶魔法極めます

初昔 茶ノ介
ファンタジー
 代々続くお茶の名家、香坂家。そこに生まれ、小さな時から名家にふさわしくなるように厳しく指導を受けてきた香坂千景。  常にお茶のことを優先し、名家に恥じぬ実力を身につけた彼女は齢六十で人間国宝とまで言われる茶人となった。  しかし、身体は病魔に侵され、家族もおらず、また家の定める人にしか茶を入れてはならない生活に嫌気がさしていた。  そして、ある要人を持て成す席で、病状が悪化し命を落としてしまう。  そのまま消えるのかと思った千景は、目が覚めた時、自分の小さくなった手や見たことのない部屋、見たことのない人たちに囲まれて驚きを隠せなかった。  そこで周りの人達から公爵家の次女リーリフィアと呼ばれて……。  これは、前世で名家として厳しく指導を受けお茶を極めた千景が、異世界で公爵家次女リーリフィアとしてお茶魔法を極め優しい家族と幸せになるお話……。   ーーーーーーーー  のんびりと書いていきます。  よかったら楽しんでいただけると嬉しいです。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。 この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ 知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?