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雲の糸「一章」
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窓の外。そこには入道雲が堂々と浮かんでいる。
食道に異物が逆流する感覚。同時に肺は押し潰されるように、萎んだ。息をしようと肺を膨らませるように力を入れるが、それは逆に異物を吐き出す力に変換された。
空気ではなく、物ばかりが外に出ていく。
口を始め、鼻の中にも物は入ってきた。
ぼとぼとと、水に落ちる音が聞こえるがそれで所ではない。
雲は私に囁き問いかける。そう私は囚われの身。
この世に生きる物の代表して、捧げられた物。
雲に殺される。
それが、私の運命。
あの日。あの夢。あの場所。
あれは、夢だった。山の辺りにある、錆びれた機械仕かけの神社。そこに私は立っていた。
学校の帰り道に一度だけ入った事のあるこの神社で、私は「水」に会った。
かろうじて、人の形をしていたが、その輪郭は空中に放り出された水のように絶えず形を変えていた。
それは、私に手を差し伸べた。体はそれに引っ張られるように近づき自身の手を伸ばした。
ここで夢は覚めた。
私は、その現地に行こうと思った。
何故だか分からない。しかし呼ばれているような気がしてならなかった。
軽い身支度を済ませ、家を飛び出す。
時刻は朝の五時頃だろうか、市場に人の姿は無かった。しかし、棚には野菜や魚と言った品物が並べられ、まるで人が居るような雰囲気を醸し出していた。逆に人だけがいなくなった。そんな言い方もできる。
私は東日を浴びながら田んぼ道を駆け抜け、山に入る。
例の神社はそこにあった。
後付けしたかのような空間に、夢で見た機械仕かけの建物はあった。
その前には夢と同じく、輪郭が不安定な人がいた。「水」だ。
それは、微笑んで私を呼び寄せた。そして手を伸ばし私の体に触れる。それは私の体の中に入ってくる。ウネウネと動き触れた部分からどんどん奥に入ってくのがわかる。
痛みはない。それに逃げようと言った気は湧かなかった。
ただ、中に入られる事を許し受け止めていた。
気づけば、「水」の姿はなかった。
体がずしっりと重たく感じるが、気のせいだろう。私は、何事もなかったように家に帰ろうと足を動かす。だが、足は動かない。それどころか、体が動かない。
不意に、足が動いた。自分の意思ではない。一人でに足を進める。そして機械仕かけの神社の鳥居の前で止まった。
その鳥居の色は青かった。
その日からは私は「水」の声を聞くようになった。命を蝕みながら。
日に日に私の視界は色褪せていきとうとう色がなくなった。それは「水」と出会って一年後の私だ。
「縁? 大丈夫」
ノイズの乗った母の声がする。
「大丈夫だとは思う」
喉から掠れた声が出る。
便器の中には色のない液体が漂っている。水でも油でもない液体。私以外の生物が触ると消えてなくなる液体。最近は口にした食物は全てこれに変換された。
これは母も含めて誰にも言っていない。言ったところで何も起こらない。
「日向ちゃん来てるわよ」
「縁ちゃん大丈夫ー?」
私は、トイレを流しドアを開けた。
「ごめん。日向ちゃん。じゃぁ海行こっか」
玄関に立っていた日向は不安そうな表情を浮かべていた。
「体調悪いんじゃないの? 今日やめておく?」
「ううん。大丈夫」
「なら良いけど」
「ありがたいけどそんなに心配しなくて大丈夫だから。ね? 行こ」
そう言って日向を玄関から連れ出す。
食道に異物が逆流する感覚。同時に肺は押し潰されるように、萎んだ。息をしようと肺を膨らませるように力を入れるが、それは逆に異物を吐き出す力に変換された。
空気ではなく、物ばかりが外に出ていく。
口を始め、鼻の中にも物は入ってきた。
ぼとぼとと、水に落ちる音が聞こえるがそれで所ではない。
雲は私に囁き問いかける。そう私は囚われの身。
この世に生きる物の代表して、捧げられた物。
雲に殺される。
それが、私の運命。
あの日。あの夢。あの場所。
あれは、夢だった。山の辺りにある、錆びれた機械仕かけの神社。そこに私は立っていた。
学校の帰り道に一度だけ入った事のあるこの神社で、私は「水」に会った。
かろうじて、人の形をしていたが、その輪郭は空中に放り出された水のように絶えず形を変えていた。
それは、私に手を差し伸べた。体はそれに引っ張られるように近づき自身の手を伸ばした。
ここで夢は覚めた。
私は、その現地に行こうと思った。
何故だか分からない。しかし呼ばれているような気がしてならなかった。
軽い身支度を済ませ、家を飛び出す。
時刻は朝の五時頃だろうか、市場に人の姿は無かった。しかし、棚には野菜や魚と言った品物が並べられ、まるで人が居るような雰囲気を醸し出していた。逆に人だけがいなくなった。そんな言い方もできる。
私は東日を浴びながら田んぼ道を駆け抜け、山に入る。
例の神社はそこにあった。
後付けしたかのような空間に、夢で見た機械仕かけの建物はあった。
その前には夢と同じく、輪郭が不安定な人がいた。「水」だ。
それは、微笑んで私を呼び寄せた。そして手を伸ばし私の体に触れる。それは私の体の中に入ってくる。ウネウネと動き触れた部分からどんどん奥に入ってくのがわかる。
痛みはない。それに逃げようと言った気は湧かなかった。
ただ、中に入られる事を許し受け止めていた。
気づけば、「水」の姿はなかった。
体がずしっりと重たく感じるが、気のせいだろう。私は、何事もなかったように家に帰ろうと足を動かす。だが、足は動かない。それどころか、体が動かない。
不意に、足が動いた。自分の意思ではない。一人でに足を進める。そして機械仕かけの神社の鳥居の前で止まった。
その鳥居の色は青かった。
その日からは私は「水」の声を聞くようになった。命を蝕みながら。
日に日に私の視界は色褪せていきとうとう色がなくなった。それは「水」と出会って一年後の私だ。
「縁? 大丈夫」
ノイズの乗った母の声がする。
「大丈夫だとは思う」
喉から掠れた声が出る。
便器の中には色のない液体が漂っている。水でも油でもない液体。私以外の生物が触ると消えてなくなる液体。最近は口にした食物は全てこれに変換された。
これは母も含めて誰にも言っていない。言ったところで何も起こらない。
「日向ちゃん来てるわよ」
「縁ちゃん大丈夫ー?」
私は、トイレを流しドアを開けた。
「ごめん。日向ちゃん。じゃぁ海行こっか」
玄関に立っていた日向は不安そうな表情を浮かべていた。
「体調悪いんじゃないの? 今日やめておく?」
「ううん。大丈夫」
「なら良いけど」
「ありがたいけどそんなに心配しなくて大丈夫だから。ね? 行こ」
そう言って日向を玄関から連れ出す。
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