夏夜の帰り道

1.1

　人間か。自己正義なんて法の罪の定義によって遂行する事もできず、ただ只管に強いそれをうちに秘め、他者と打つかる。指示に従っているけども、イライラを溜めきれず唸る犬みたい。

　深泥のような朝。朝日など私は呼んでなくて、目覚まし時計の鳴り響く音のみが、小さな部屋を駆け巡る。
　きっと鏡越しなんだ。まだ五時で、鳴ったのは時計の勘違い。まだ眠っていられる。世界に顔を出さなくていい。

　そんなグズを出しても意味の無い事だとは知っている。朝がやってきた。意味のない朝が、私を起こしに来たんだ。

　小さな部屋、四畳半の鳥籠から出なければ行けない。野生の蔓延る外の世界へと。
「実鴣ミコ。起きなさいよ。朝ご飯出来てるから」

　起きなくちゃ。この震える手をどうにか隠して。

　ハチミツのようにゆっくり動き、濡れた枕を放した。制服に身を包み短く揺れる髪をヘアピンで止め姿見で体を見たけど、いつも通り白々しい顔をしている。
　唄は折れた翼で羽撃くと謳った。
　私は飛べる。それだけ。私は飛べる。


　漠然とした不安と恐怖。ただそこに意味はない。ただ怖いだけ。原因もない怖さに耐えるだけ。

　そうだよね？　そうであってほしい。