42 / 103
王宮の毒花と森の片隅のお花屋さん
糸口を掴むための花
しおりを挟む
三日後。
オルガは両手いっぱいに鉢植えや包みを抱えて、にこにことご機嫌なまま城門をくぐった。
「……オルガ嬢!」
門番からの報せを受けたレオニダスが、慌てた様子で駆けつけてくる。目に入ったのは、彼女が抱える大荷物。思わず眉をひそめた。
「まさか……その荷物、全部持って歩いてきたのか?」
「うん。今日はいい天気だったし、歩いたほうが早いかなってー。荷物もね、そんな重くないよ。両手で持てばなんとかなる」
「……はぁ」
深いため息をつきながら、レオニダスはオルガの手から鉢植えのひとつをそっと受け取る。蕾はまだ固いが、花びらが薄く透明で、光を微かに反射していた。
「持ってくれるの? ありがとー。でもね、それ、もしかしたら舌がぺろって出て……べろーんって舐められるかもよ?」
「……なっ──」
咄嗟に鉢を持ち直したレオニダスが目を見開く。
隣で、オルガが小さく吹き出す。
「ふふ、冗談冗談。……たぶん」
「……!」
「大丈夫だよー。それ、観賞用。たぶんね?」
飄々と笑うオルガの顔は、いつもと変わらない。ただ、鉢から漂う得体の知れない気配に、レオニダスの眉がわずかに動く。
「これは……この前言っていた“使えそうな花”か?」
「んー、まぁ、使えるといいなってやつ。おたのしみってことで」
問いをかわすように言って、オルガは他の荷物を腕で持ち直した。
レオニダスは、それ以上は問わなかった。
「……わかった。とりあえず騎士団塔へ。そこでどうすればいいのか聞かせてくれ」
「はーい。あと、置く場所ちょっと工夫しなきゃならないからみんなで会議だねぇ」
***
「で、この鉢植えをどうしたらいいんだ?」
騎士団塔の執務室で、ルーカスが机に置かれた透明な蕾の鉢植えをじっと見つめていた。
「簡単簡単。怪しいと思ってる相手の近くに、この子と──」
オルガは袋からもう一つ、小さめの鉢植えを取り出して、透明の蕾の横に並べる。
「──この子をセットで置くだけ。並べて、なるべく日当たりのいい場所にね。暗いとこはだーめ。絶対だめ」
「それだけでいいのか?」
「うん。あとは、この子たちが教えてくれるから。ねー?」
オルガが鉢に向かってにっこり笑うと、どちらの蕾もほんの少しだけ揺れたように見えた。
「わかった。なら、この二つを”あの方”の部屋に置くよう、手配してくれ」
「セフォラに侍女のふりをさせて、移動魔法で侵入。設置までやらせます」
レオニダスが二つの鉢を丁寧に持ち上げ、執務室を出ていく。
「そうそう、騎士団塔の裏手、陽当たりのいい場所が空いていてさ、勝手ながら、そこを畑に使わせてもらうことにしたよ」
「えっ、ほんとに!?」
オルガの顔がぱっと明るくなった。
「やったー!じゃあ、時々様子見に来るね!タネ代だけもらう感じでいい?」
「経費で落ちるから、多少ぼったくられても問題ないよー」
「わーお、太っ腹。じゃあ、遠慮なく~」
ルーカスは少し声のトーンを落とし、真面目な表情で言った。
「それと、畑の件は陛下からの褒美とは別だ。だから、欲しいものがあれば別で考えておいてね」
「うーん?」
オルガは腕を組んで首をひねったが、何も思いつかず、唸るだけ唸って終わった。
そんなところに、レオニダスが無言で戻ってきた。
「よし。レオニダスも戻ってきたことだし、ちょっと畑見にいきますかねぇ」
「いえーい!!」
三人は連れ立って、陽の差す塔の裏手へと向かっていった。
オルガは両手いっぱいに鉢植えや包みを抱えて、にこにことご機嫌なまま城門をくぐった。
「……オルガ嬢!」
門番からの報せを受けたレオニダスが、慌てた様子で駆けつけてくる。目に入ったのは、彼女が抱える大荷物。思わず眉をひそめた。
「まさか……その荷物、全部持って歩いてきたのか?」
「うん。今日はいい天気だったし、歩いたほうが早いかなってー。荷物もね、そんな重くないよ。両手で持てばなんとかなる」
「……はぁ」
深いため息をつきながら、レオニダスはオルガの手から鉢植えのひとつをそっと受け取る。蕾はまだ固いが、花びらが薄く透明で、光を微かに反射していた。
「持ってくれるの? ありがとー。でもね、それ、もしかしたら舌がぺろって出て……べろーんって舐められるかもよ?」
「……なっ──」
咄嗟に鉢を持ち直したレオニダスが目を見開く。
隣で、オルガが小さく吹き出す。
「ふふ、冗談冗談。……たぶん」
「……!」
「大丈夫だよー。それ、観賞用。たぶんね?」
飄々と笑うオルガの顔は、いつもと変わらない。ただ、鉢から漂う得体の知れない気配に、レオニダスの眉がわずかに動く。
「これは……この前言っていた“使えそうな花”か?」
「んー、まぁ、使えるといいなってやつ。おたのしみってことで」
問いをかわすように言って、オルガは他の荷物を腕で持ち直した。
レオニダスは、それ以上は問わなかった。
「……わかった。とりあえず騎士団塔へ。そこでどうすればいいのか聞かせてくれ」
「はーい。あと、置く場所ちょっと工夫しなきゃならないからみんなで会議だねぇ」
***
「で、この鉢植えをどうしたらいいんだ?」
騎士団塔の執務室で、ルーカスが机に置かれた透明な蕾の鉢植えをじっと見つめていた。
「簡単簡単。怪しいと思ってる相手の近くに、この子と──」
オルガは袋からもう一つ、小さめの鉢植えを取り出して、透明の蕾の横に並べる。
「──この子をセットで置くだけ。並べて、なるべく日当たりのいい場所にね。暗いとこはだーめ。絶対だめ」
「それだけでいいのか?」
「うん。あとは、この子たちが教えてくれるから。ねー?」
オルガが鉢に向かってにっこり笑うと、どちらの蕾もほんの少しだけ揺れたように見えた。
「わかった。なら、この二つを”あの方”の部屋に置くよう、手配してくれ」
「セフォラに侍女のふりをさせて、移動魔法で侵入。設置までやらせます」
レオニダスが二つの鉢を丁寧に持ち上げ、執務室を出ていく。
「そうそう、騎士団塔の裏手、陽当たりのいい場所が空いていてさ、勝手ながら、そこを畑に使わせてもらうことにしたよ」
「えっ、ほんとに!?」
オルガの顔がぱっと明るくなった。
「やったー!じゃあ、時々様子見に来るね!タネ代だけもらう感じでいい?」
「経費で落ちるから、多少ぼったくられても問題ないよー」
「わーお、太っ腹。じゃあ、遠慮なく~」
ルーカスは少し声のトーンを落とし、真面目な表情で言った。
「それと、畑の件は陛下からの褒美とは別だ。だから、欲しいものがあれば別で考えておいてね」
「うーん?」
オルガは腕を組んで首をひねったが、何も思いつかず、唸るだけ唸って終わった。
そんなところに、レオニダスが無言で戻ってきた。
「よし。レオニダスも戻ってきたことだし、ちょっと畑見にいきますかねぇ」
「いえーい!!」
三人は連れ立って、陽の差す塔の裏手へと向かっていった。
18
あなたにおすすめの小説
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
魔法使いとして頑張りますわ!
まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。
そこからは家族ごっこの毎日。
私が継ぐはずだった伯爵家。
花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね?
これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。
2025年に改編しました。
いつも通り、ふんわり設定です。
ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m
Copyright©︎2020-まるねこ
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる