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#29
しおりを挟む宿屋で少し休憩した後、夕食を食べに近くの食堂へ向かう。
ここは酒場も同じ場所にあるようで、大勢の客で賑わっており、活気のある
雰囲気に気後れしそうになる。が、それとは別にアダムは嫌な気分も味わっていた。
目の前にいる踊り子が、ベッタリっと誰かに擦寄っている。布生地が少ない衣装の女性に擦寄られて微動だにしないシドを見て、アダムはモヤっとする。
――うー……何だか面白くない。
シドは静かに酒を口にしているが、隣にいる踊り子は、ずっとシドを見つめている。その視線に応えるように、彼が隣にいる踊り子に口を開いた。
「踊らなくてもいいのか?」
「あら? 見たいの?」
「どちらでも……」
「私の出番はもう終わりなのよ」
踊り子の人差し指が、ツっとシドの手に伸びる。それだけではなく、周りの女性の視線が熱い。ただ、これに関してはアダムも分からなくもなかった。
シドは一般的な人間の衣類を身に着けてはいるが、隠しきれない美貌とオーラが漏れているし、それに、どこからどう見ても、貴族がお忍びで遊びに来ました感が漂っている。
そして……、ベタベタとシドに触る踊り子の様子を見ていると、モヤモヤと不快な感情が湧いて来る。ぐっと込み上げる黒い感情を押し殺していると。
「アダム、こっちで遊ぼうぜ?」
とレナルドにポンと後ろから肩を叩かれた。
「何して遊ぶのですか?」
「カードゲームだ」
「って……、レナルドさん! ど、どうして裸!?」
「剥ぎ取られた」
「剥ぎ取られたって誰にですか……?」
「まあ、大丈夫だ! お前が勝てば取り返せる!」
アダムは上半身裸で下着姿のレナルドに言われるまま、ガタイのいい男達がいる場所へ連れられると、冒険者らしき人物が、お酒を片手にアダムを見てニヤニヤ笑う。そして周りにいる酔っ払い気味の男達から揶揄が飛んできた。
「おい~。お子様は寝る時間だろ~? まあ、いいか」
「いいじゃん、コイツも全部剥ぎ取ろうぜ~」
目の前の男から、ふーっと長く息を吐き出され、お酒の匂いが漂ってくる。自分の横に立ったレナルドが鼻を鳴らすと――、
「ふん、コレはただのエサだ。本命は他にいる」
「はっ? 何言ってやがる?」
きょとんとした顔で、ガタイのいい男がレナルドを見つめた。
「アダム悪いな、ちょっと目を瞑れ」
一瞬、えっ? となったが、レナルドに言われるまま、とにかく目を瞑った。
彼の手が腰に回される。何となく顔が近付いて来る気配がしたが、あっと言う間にその気配は消えた。
「痛ぇ!」
「アダムに触るな」
「そんなに思いっきり叩く事ねぇだろ!」
「不埒な事をするからだろう」
知らない間にシドがレナルドの後ろにいた。
目を瞑った瞬間に何があったのか、アダムには分からないが、何かシドの勘に触ることをした事だけは理解出来た。
レナルドがコソっとシドに耳打ちをすると、彼の表情が一気に曇り、酔っ払い達を睨むと、カタっと椅子を引きシドが座った。
「レナルドさん……、最初からシドさんに声かけたら良かったのでは?」
「お前、俺がシドに声かけて、素直に応じると思うのか?」
「それも、そうですね」
アダムは納得し、カードゲームの行く末を見守ることにした。
次から次へと勝負が決まり、あっと言う間にレナルドの服と掛け金も返って来た。
「いや~、儲けたな~」
「くだらん。単純な遊びだ。古びたカードは所々欠けているし、覚えやすい。それに相手の顔を見れば一目瞭然だ」
無事に帰って来た衣類に袖を通しながら、レナルドがシドに感謝した――――。
食事が終わり、各自部屋に戻る途中で、レナルドが咳払いをする。
「ゴホンっ、あー、俺、隣の部屋だから……、その……声は控えめにな?」
「な、何言ってるんですか!」
言い難そうにレナルドに言われ、一気に身体に熱が集まった。「じゃあ、おやすみ」とレナルドが部屋に入るのを見て、アダム達も部屋に入った。
扉を閉めた瞬間、シドが自分を抱きしめる。ふわりと酒の匂いがして、そのまま耳朶を齧られ、その些細な刺激に、「ンっ」と甘い声が思わず出てしまった。
「あっ、の……今日は…」
「なんだ?」
「えっ」
何か問題でもあるのか? とでも言いた気に対面すると、唇を奪われ、彼の膝で股間を刺激される。グリっとシドの太腿で擦られると。
「っ……ふ」
アダムから出た声に、シドが笑みを見せると、スっと屈んだ。自分が着ている衣類は聖職者が着るローブに近い物で、女性のドレスと変わらない仕様だった。
彼の手が迷うことなく、裾をたくし上げるとスッポリ中に入ってしまう。少し膨らみ主張し始めたアダムの性器を、下着越しにツンと舌を尖らせ舐め始めた。
「あ、や……っ、だ」
布越しと言う事もあり、モゾっと動く手の感触が、まどろっこしくて、そわそわしてしまう。
吐き出されるシドの吐息が下半身に吹き掛けられ、何とも言えない感覚に、自ら腰が揺れ始めた。しかも部屋の扉の前で、こんな行為をしていることに羞恥が倍増していく。
「あぁ、っ、あ、ベッドに……」
「なぜ? 今日はしないと聞いたが?」
「んっ、そう、だけど……」
自分も、そう伝えようとしたのに、どうしても彼のペースに嵌ってしまう。ささやかな抵抗で内股に力を入れているが、いとも簡単にツっと下着を降ろされた。
視界は完全に塞がれ、触れられる感覚しか分からない。ぬるりとした湿った感触が、性器に伝わって来ると脳が一気に痺れたようになる。しかも誰かが通ったら……? と思うと声も出せない。
――だ、め、……きもちいい。
快感で震える膝が崩れそうだった。彼の肩に手を付きながら、漏れてしまいそうな感覚を必死で我慢し、喘ぎ声が出るのを堪えた。
シドに自分のふしだらな性器を見られていると思うと、勝手に皮膚の温度が上昇して、全身が燃えるように熱い。
「まっ、て……、ぁっ」
シドは容赦なく、舌を尖らせ愛撫を続ける。体を抱き込まれ、逃げる手段も無く、絶え間ない口淫の刺激に、体の芯から熱いモノがせり上がってくる。
「やっ……、でちゃ……うから、離して」
お腹の熱がきゅうと啼き喚いてくる。聞えている筈なのに、アダムの声にまったく反応してくれない。それどころか彼はアダムの性器を、更に激しく口で吸いあげ、陰茎を絶え間なく刺激する。ピリピリと痺れる快感に、もう、出てしまうと、シドの背中を叩いた。
「っー……ンー-ーっ!」
アダムは堪え切れず、与えられる快感に負け、そのまま精を放ち絶頂を迎えた。一気に力が抜け、屈んでいるシドへ倒れ込むと、瞬時にシドが支え、ベッドへと運んだ。
「お前は、全てが甘い味がする……」
「……だ、め、って言ったのに」
信じられない行為をするシドを見上げた。アダムが放った吐精を飲み込んでしまったのだ。どうして彼は恥ずかしい事ばかりするのだろう?
ぼやける視界で彼を見つめると、着ている服を脱いだ。ギっとベッドが軋む音に、トクトクと自分の胸が躍り始める。
結局、アダムの言う事など彼は聞いてはくれない。それどころか、シドに触れられたら、自分の方が我慢できなくなってしまう。
「さて、どうするんだ?」
「ず、ずるいです」
「何が?」
この余裕たっぷりなシドの表情が崩れる事があるのだろうか?言いなりになってしまう自分が情けない。どうすれば抵抗出来るのかとシドを見つめた。
「返事がないな」
「へんじ?」
「どうされたいのか聞いてる」
「だ、だから今日はしないです」
そう、今日は何もしない約束だったのに…。気が付けば衣類は全て剥され、胸元の飾りを弄られている。
尖った飾りをトンっと指で弾かれ腰が浮く。何度も同じことをされ、息が熱くなり、一度は放った熱が上昇しはじめる。それに気が付いたシドが、揶揄うように…。
「可愛らしいモノが、また膨れて来たようだが?」
「うーっ……」
「芳香も、な?」
アダムの手を取り、ペロっと刻印を舐め上げると、彼の瞳がユラユラと揺れ、黄金色の瞳が茜に染まり始める。
「ふ……ぅ、たまらなく気分がいい……」
胸の奥へと響くようなシドの声と言葉に、身体が震えてしまう。決して恐怖ではなく、彼の発する色香が自分の本能を刺激した。
シドの与えてくれる快楽が、どれだけ甘美で淫靡な物か知ってしまったからだ。結局、そのまま彼に弄ばれ快楽の波に沈んで行った。
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