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番外編 ジークのお散歩
#04
しおりを挟む翌日、夕日が紅に染まる頃、シドが帰って来ると子供達が彼に群がった。
相変わらず言葉は少ないし、特に遊んであげるような素振りもないのに、皆が彼の元へ集まるのは、そうさせる何かがあるのだと思う。
シドがアダムの姿を見てチョイチョイ、と指で側に来るように指示を出す。
「シドさんおかえりなさい」
「ああ、悪かったな、アレのせいで帰りが遅くなった」
「あー……、ジークさんですね。でも、まだ元の姿に戻れてないですよね?」
「……ああ」
シドが凄く機嫌が悪いのはジークのせいなのは分かったけど、アダムは久しぶりに顔が見れて安心した。
ジョエルが国からシドを呼びに来る度に、もう帰って来ないかも知れない、と切ない孤独感を味わうし、今回はたまたまジークが国に帰ってくれたから良かったけど、気が変わって帰らなかったり、途中で何かあったら、シドと会えるのはいつになるか分からないのだから、不安になるのも仕方の無いことだった。
それに、こんな気持ちも、好きな相手がいるから湧く感情だと思えば、贅沢な物なのかも知れない、とアダムは久々に見るシドを見つめた。
「コホンっ……で?」
「え……?」
「何も無かったのか?」
「特に何もありませんでした」
アダムは変なことを聞くシドに首を傾げた。
確かにジークのせいで子供達にそわそわさせてしまったけど、子犬の状態の彼が悪戯出来ることと言えば粗相をすることくらいだ。
じっと顔を見つめて来るシドが「本当に何も無いのか?」と聞いてくるので「はい」とアダムは返事をする。
彼が何かを言いかけた時、自分の背後から、「あれ、シドさん帰って来てたんですね」と教会の用事を済ませたフィリップが声を掛けて来た。
「ああ、さっき戻って来た」
「そうですか、ご苦労様でした」
フィリップと神父のレナードには、シドがディガ国の獣人だと言うことは伝えてあるが、平和維持をする為に存在している神の使徒で聖獣王だということまでは伝えてない。
ただ、神父は古い文献のことを多少知っているようで、ディガ国のことも薄っすらだが、理解しているようだった。
フィリップが思い出したように、「あ、そういえばあの子犬、何処に行ったの?」と聞いて来る。
「あー……、飼い主の元に帰った見たい」
「そうなんだ? アダムの寝相が悪くて帰ったんじゃ……?」
「え、僕、寝相悪くないと思うけど……」
「冗談だよ」
くすくす笑っていたフィリップが急に顔を凍らせた。
「あ、俺、何か変なこと言ったっぽい……」と、さっさと逃げて行く様子を見つめながら、理解出来ないアダムは首を傾げる。
「アダム」
「はい? ……え? ぇ? ちょ、っと、何処へ?」
よく分からないままアダムはシドに荷物のように持ち上げられると、シドの屋敷へと拉致された――――。
「あの、っ、ま、まだ、僕、仕事が……」
あっと言う間にシドの部屋の寝台の上で全裸にされ、全身を隈なく凝視してくる彼に無駄な抵抗をしてみる。
「シドさん! どうしたんですか?」
「朝方、ジークが上機嫌で帰って来た理由を探そうと思ってな」
「え……?」
「まさかとは思うが……」
「……んっ、やぁ」
シドは何を思ったのか、アダムをくるんとうつ伏せにすると、迷うことなく後孔をペロっと舐め始める。
「ま、まって、駄目!」
「ふむ、ここは無事か、では……」
「あ、……っ、あ、ぁ」
何を勘違いしているのか大体の察しがついたアダムは、息も絶え絶えになりながら、「ジークさんは直ぐにディガ国へ向かったから、本当に何も無かったんです」と懸命に伝えた。
「ほぅ、では何故、うちの弟は上機嫌で帰って来て、婚約をすることを嬉しそうに承諾したんだ?」
「そ、そんなの知りません。ジークさんに聞いて見たらいいじゃないですか」
「……癪に障る」
そんな……、とアダムは細々と声を出した。
「まあ、いい、序だ……」
「ついで? って、……や、ぅ」
そのままシドが覆い被さって来ると、かすめるような口づけをした後、じゃれつくようにアダムを抱き起こす。
既に衣類は全て剥ぎ取られているし、力では到底無理なのも承知の上で「シドさん、駄目です……ぅ」と胸を押す。
「せっかく帰って来たと言うのに、お前は、すぐ駄目と言う……」
しゅんと落ち込むシドに、胸がきゅうんとなる。
最近おぼえた耳をペチャリと垂れ耳にするワザをアダムに見せつけながら、「どれだけお前を想っていたか……、この胸を引き裂いて見せようか」などと言う。
人間界で有名な恋愛小説の影響らしく、近頃のシドはビビアンから教えてもらった、色恋のワザも身に着けたようだった。
「も、もぅ……、シドさんは、どうして……」
「なんだ?」
首を傾げながら、アダムが少しだけですよ? と言うのを待っているのが見て取れる。
けれど、アダムにはまだ仕事が残っているし、取りあえず、「あの、仕事が終わってから……?」と言えば、絶望するような溜息を吐き、「信じられない」と大袈裟に言う。
「どれだけ離れていたと思っている」
「……えっと、6日くらいでしょうか?」
「いいや、6日もだ」
「はい……」
「6日も離れていたというのに、よくそんな落ち着いた返事が出来るな……」
聞かれたから、正直に答えただけなのに、怒られている理由が分からなくて、アダムはシドの顔を覗き込んだ。
くすっと笑みを浮かべた彼が、「よし、では続きを……」と言うので、慌ててアダムは脱がされた衣類を手に取り反論をした。
「ごめんなさい、シドさん、僕、神父様に報告しなければいけないことがあるのです」
「お前は、俺と神父とどちらが大事なんだ?」
え? とアダムは驚いた。
答えられない、と言うよりも、どう答えて良いのか分からなかった。
比べるような対象ではないので、「どちらも大事ですよ」と笑顔を見せれば、カっと目を見開き「なんだと……」と彼が落胆気味に呟いた。
そんなに変な返事だったかな? とアダムはシドに、「とにかく先に仕事を終わらせてからすぐ来ます。待ってて下さいね」と言い残し、教会へと急いだ。
もちろん、シドは不貞腐れたままだったが、いつもの事だとアダムは気にも留めなかった――――。
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