カジャタン・ペンシュー

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神の意思

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人生の何たるやを、“私より”賢く知性があり客観性も主観性も併せ持ち、
それでいてしっかりとした論理的思考で多くの学者やひいては思想家や政治家がそれぞれに考え、それっぽい名言を残し、さもわかったような事を難しく遠回しに言うことで、学のない人間たち言いくるめてきた。
それはキリストに始まり、ヒトラーにも言える、その両者を平行同列に語れば黙っていない者がいたかもしれないが知ったことではない。
名をあげればきりがないし、偉人の名と名言を連ねたところで何の意味もない。
ただ言えるのは連中は良くも悪くも世界を今の形にした。
今起こっている戦争や世に蔓延る不幸は連中が作ったものだ。幸せや平等があるから、他人より劣れば不幸であり不平等に感じるのだから。
それは悪とは呼ぶまい、もちろん善とも。ただ連中全員いなければ、まだ我々は文明こそあれど、猿よりはだいぶマシな程度であってここまでの格差や不幸はないのではないか。
教育は悪ではないが、教育がなければそもそも不登校児などいない、学歴の格差も無い。
金の概念、とくに紙幣などが出来たことは世にとって取りようによれば悪であり、それを生み出した人物もまた悪となる。
金がなければ貧富の差などというものもないのだから。
ただ、過去は変えられないし概念を覆すことは出来ない。もちろん、地球が平面だと思っていたように大きく覆される概念も存在するだろうが、もう人類の思考は停滞し滅びへと向かっていく事だろう。
繰り返すが過去は変えられないのだから。

しかし、私は全知全能ではないが、神である。
過去は変えられないし平凡な人間並みの知能と思考能力しかないが神である。
だが重ねて言うが私はそこまで賢くはない。なのでいわゆる偉人達の言葉にいちいち納得し、それが正しいと思ってきた。が、連中の言うことをまとめるとやはり矛盾が生じたり、時代によって真実と虚像が入り乱れたりする。
心を読む力なんて物もないので、連中の本意はわからない。すべての偉人達が全員サイコパスで自分に都合のいい虚言を並べ立てたところで私にはわからない。まあ中には「調子の良いことを言っているな」と思う奴もいたが、さすがに民衆も騙されなかったし、もっと聞こえの良い事を言う者に簡単に手の平を返した。
そもそも騙される奴らは互いにだまし合う傾向がある、お隣さんがこうだと言うから私も同じように思います。と、島に2軒しかない家庭がお互いにそう思い合っていたらそれはもはや自己催眠だ。
だがそれが3軒も100軒も変わらないのだ、結局自分に都合がいいことを真実だと思いたがる。
その思考が宗教という合法的な詐欺を生み出した。祈れば幸せになる、そのためのお寺や協会や寺院や仏像が無ければならない、そのために金をくれと坊主が言えば進んで金を出す。
「とても良い行いをしましたね、きっと神の元へいけるでしょう。」「天国へいけるでしょう」「来世で幸せになれるでしょう」と。
だが私が知る限り、神は私だが、死んで私の元へ来た者もいなければ、死ねば終わりで天国はない、この世界だけが全てであって次の世界や来世もない。
神ですら過去を変えられないのだ、祈った位で金をつぎ込んだくらいで起こってもいない未来を確約できる筈もない。

ああでも死ぬのは怖いのだ、死んだら無になるなんて知りたくないのだ信じたくないのだ、なので縋る。そして騙される。
神は私なのに。
何度も言うが私は全能ではない、それゆえ完璧ではないし間違いもするし騙される。もちろん人類に干渉もしない、だが後から確かめることは出来る。
歴史は変わらないが、過去に戻り偉人の元へ赴くことは出来る。
私にも罪悪感はある、神とは無感情に平等であるように思うかもしれないが、感情もあるし贔屓もする。なので、とりあえず客観的に見て悪であると皆が思うものから試してみた。

まずはヒトラーを呼び出し、
「本当にユダヤは悪なのか」問いただした。それが正しいと先導し民衆をあおり大量の罪のない人間を殺したお前は本当に正しいのかと
最初は色々と持論をまくし立ててきたし、私もつい騙されそうになったが、とりあえず一度彼が間接的にでも殺した全員の人生を追体験させた。600万人ほど殺していたので、ヒトラーは600万回死んだ。
そうすると涙をボロボロと流し「私が悪かった、間違っていた、神よ、もっと過去に戻り、大勢の人を殺す前に私を殺してくれ」と懇願してきた。
だが過去は変えられず、未来も変わらないのだ、
スターリンと毛沢東にも同じ事をしてみたが、皆同じ反応だった。
人類史に残っていないが私だけが知っているような悪行をしてした連中にも、捕まっていない連続殺人鬼にも、同じ事をしたが、皆口をそろえて「自分が悪かった」と懺悔し、神たる私にすがり、過去の自分を殺せと宣う。

いよいよやけくそになってきた私はキリストや善なる指導者にも会ってみた。
キリストはナニカわかったような顔をするばかりで話にならなかった、彼は神がいると信じていたし私が神だと伝えると信じたし崇めたが、彼の中の神像かみぞう)を押し付けてくる。だが彼は別段祈れば救われるだとか天国にいけるなどとは思っていなかったようで、拍子抜けするほど普通の男だった。
彼については美化され信奉者達によって捏造され、一部は金儲けや政治の道具として改変され伝わっていたようだ。
彼の顔を殴ったが「神よいきなり何をするんです」と非難されただけで、「反対側もお願いします」とは言われなかった。
他の連中もそうだ、建前はやはりあるのだ。

この世界の暦で2583年、人類は男4人だけになった。
70歳と54歳の双子と、0歳の赤ん坊だ。母親はその赤ん坊を生んで死んだ。
人の胚などから人工的に赤ん坊を産み出すような事もしていたし成功もしたのだが、そうやって産まれた連中はというと不完全であり子作りをしない
それにその4人は学者ではなかったし、もう50年も前に文明はほぼ無くなってしまった。
戦争もあったし、人間が怠惰になり、引きこもるようになったのも原因だ。
そしてその赤ん坊は18歳のときに肺炎になり死んだ。
88の老人と、72歳の双子が残されたが、赤ん坊の死を見て老人は自ら命を絶ち、双子も後を追った。
西暦2601年、人類は滅びた。
それから38億年経ち、火星が地球に衝突する今日まで文明は産まれなかった。
人類は信じていたが、宇宙に他の生命体はいなかった。
ウイルスやプログラムのような増殖する物質はいたが、人が滅びなかったとしても観測する事は出来なかっただろう。

私もまた偶然、宇宙のどこかで何かが産まれるまで、過去の人々全てと話したりして時間を潰すしかない。
それまではこの壊れた世界にとどまり、うつらうつらとしてみるのも悪くないかもしれない。
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