カジャタン・ペンシュー

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宇宙人

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平穏な生活を求めていたはずだった。
いや、平穏な生活、などというものは求めすらせずとも当たり前にあると思っていたはずだった。こうなる前は。

この星でも西暦でいうところの2022年頃に最後に戦争が行われたが、その国の人たちも同じように思ったことだろう、願わずとも求めずとも平和とはそこに有るものだと

そこからさらに300年ほどした今、正確な西暦を知る術は無く、もちろん毎年指折り数えていけばいいのだろうが実際にそれだけ生きれる者はおらず、500年たっていたとして誰もそれを証明できない。
一応コンピューターや、物理的な記録は存在するのだが、この星は何度と無く破壊の限りを尽くされ今ではその地図は100年前とですら大きく違うらしい。

あいつ等が来た!
小さな畑を育てていたが、これももうあいつ等に踏みつぶされ燃やされ毒されてしまうのだろう
あいつらの容姿は四足歩行をかろうじてしているが、哺乳類や爬虫類とは違う、真っ黒や銀色の土のような表皮でまさに泥が歩いているような、、、動の真ん中に大きな口が有るが、奴らはそれで色々な者を噛み砕く。食すのとはまた違い、噛み砕きまき散らし、その色を奪う。
詩的な意味ではなく、たとえば植物なら枯れ、生き物なら血の気を失い、土も水分を失う。
生きた色を失う。その物体が何であれ、死んだ状態だとわかる、あまつさえ噛み砕くのだから生き物は確実に死ぬ。

しかも、いたずらに噛み砕くだけで全く食べたり飲み込んだりはしていない。
何かエネルギーだけ奪われたようになると表現してもいいのかもしれない、そして有る程度何かを食べると立ち止まり、体の回りに高温のガスをまき散らし火がつく。
その瞬間がチャンスだと各銃火機や、物理的な罠等で攻撃を仕掛けるが、奴らの土くれのような体が分断されるだけで、その土くれそれぞれが小さなあいつらとなり動き回る。
小さすぎて奴らにならなかった土くれは、そこにとどまり土壌を犯す。

最初に奴らが来たときは巨大怪獣だったのだが、大きな爆弾で倒したと思ったのもつかの間、散り散りになった奴らのやっかいさがましただけだった。
とはいえ徐々に個体数が減ってはいる。
1メートル以下程になると動かなくなる。
そして爆弾というのが核爆弾だったせいで、動かなくなった土くれは放射能を含み土壌汚染するというわけだ。

私が生まれた頃にはもうそうだったから、私や私を含めた兄弟や友人らはそれを受け入れていたが親世代はそうもいかない、
なにせ折角遠路はるばるこの星にやってきて子育てを始めた頃には他の星から侵略者が来たのだから。
あの化け物も、連中の送り出してきた生物兵器にすぎない。
高度な知能を持たない土くれの怪物を繰り出し、大きいうちはその星の都市を破壊しつくす。
反撃にあうのは想定済みで、細かく分散していくうちに星全ての攻撃的な動物を全て殺害し、星の浄化をしていく。

核兵器の使用も、想定済みであり、そもそも他の星の文明兵器の使用は不可能ではないが困難である。なのでそれを使用される事で、連中が移住してきたときに解体や無力化をせずにすむわけだ。
移住してほっとしたときに事故など起こればそれこそたまらない、我らのように。

我らはうまくやっていた、この星の先住民には圧倒的な戦力差を見せつけ、しかし資源がないので土地の一角を借りた。お互いに血は一滴も流していない。
だがそんな我らの武器は、連中には通用しない。何枚も上手ということだ、、、、

いつかは、故郷の星に父や母と戻りたい、観光に行きたい等と話していたが、、、それも叶わないようだ。
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