再利用率が見える俺の異世界工房〜再利用チートで村も町も豊かにします〜

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ゴミ捨て場から始まる仕事

第7話 村の外からのお客さんと工房の一員

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小屋の前に停まった見慣れない荷車から降りてきたのは、村人より少し質の良い上着を着た人物だった。
革靴の足取りは軽く、周囲を見る目が落ち着いている。旅慣れた人間の雰囲気だ。
レントは作業の手を止め、工房かと聞かれたので、外へ出て軽く頷いた。

「そうだ。修理なら順番に受けてる。少し待っててくれ」

「助かります。突然お邪魔して申し訳ありません」

相手は丁寧に頭を下げた。
声は低めで、口調は柔らかい。どこかの匂いがした。

「村の外の方ですか?」

リーナが帳簿を抱えたまま、小屋の入口から顔を出す。

「はい。行商をしております、セレスと申します」

名乗りながら、セレスは荷車の積荷を指で示した。木箱がいくつも積まれている。
レントは、目を細めて木箱を注視した。
村の小さな工房に来る理由は一つしかない。噂だ。

「もう村の外まで?」

リーナが、噂の広まりの早さに目を丸くした。
その言葉に、セレスは小さく笑った。からかった笑いではない。
という、親しみを含んだ笑みだ。

「行商人というのは、物だけでなく噂も運ぶ仕事でしてね。助かる場所の話は、思った以上に早く広まるんです」

噂を拾って回っているのかと、行商人がどういう人間なのか分析していた。
そして、分析しながらもレントは一度頷き、リーナに目配せした。
リーナもすぐに察して、受付の位置に戻る。

「それで、本日は修理のご依頼ですか?」

リーナが帳簿を開くと、セレスは丁寧に頷いた。

「はい。修理をお願いしたい品があるのですが、よろしいでしょうか」

「もちろんです。順番に承りますので、お名前と品物を確認させてください」

セレスは荷車の後ろから小さな木箱を取り出し、両手で慎重に運んで作業台の端に置いた。
蓋を開けると、中には欠けた短剣、歪んだ金具、折れた工具がいくつか入っている。
レントが短剣を手に取る。

【鉄製短剣(刃欠け)】
再利用効率:83%
修復推定成功率:71%

再利用効率も成功率も悪くなく、村の包丁より素材がいいなと感じた。
すぐに視線を移し、歪んだ金具を見る。

【金具(変形)】
再利用効率:78%
修復推定成功率:67%

折れた工具にも視線を移す。

【工具(亀裂)】
再利用効率:59%
修復推定成功率:44%

工具に関しては、直すのは厳しいと感じたが、すぐさま代案を思いつく。
レントは箱を閉じ、短く結論を出した。

「短剣と金具は直せる。工具は、応急処置ならできるが......長くは持たない」

セレスは、驚いたように目を瞬かせたが、行商人らしく顔に出してはいけないと、すぐに表情を整えた。

「ここまで即答できる方は珍しいですね。それでは、短剣と金具を優先でお願いできますか。工具については、できる範囲で構いません」

「分かった。少し時間がかかる。だが、適当な仕事はしない。そこは、保証させてもらう」

「ええ。お時間は問題ありません」

リーナが、帳簿にペンを走らせる。

「セレスさん。預かり品として記録します。返却予定日は......」

リーナはレントに視線を投げた。
レントは作業量と修復の手間を頭の中で計算する。村人の依頼が最優先だ。だが、預かりは預かりで期限が必要だ。

「3日後の夕方。急ぎなら無理だ」

セレスは、すぐに首を振った。

「急ぎではありません。3日後、承知しました」

リーナが帳簿に【預かり:短剣/金具/工具】【返却:3日後夕方】【代価:後日見積り】と書き込む。

セレスは小屋の中を見回した。壁の隙間、簡素な作業台、道具の少なさ。
それでも、作業場としての流れがあることを見抜いた目をしていた。

「失礼ですが、こちらの工房、まだ始めたばかりですよね?」

「そうだ」

「この規模で、すでに列ができている。村の方々にとって、相当助かる存在なのでしょう」

セレスは言葉を選んで続ける。

「街ですと、修理は高くつくか、買い替えを勧められることが多いのです。しかし村では、買い替えが難しい......修理をちゃんと受けてくれる場所があるだけで生活が変わりますよ」

セレスは、少し興奮しながら、レントの工房の重要性を語る。

「大げさだ」

「いえ。行商をしていると、こういう差を何度も見ます。道具が直るだけで、仕事が前に進む。仕事が進めば、暮らしが守られます」

言い切る声が、少しだけ強くなった。
商人は数字だけを追うと思っていたが、セレスは現場を見ているなとレントは感じた。
だが、同時に商人とは利益のためならなんでもする生き物だとも理解しているので、油断ならないと考えた。
レントがそう思っていると、リーナが少し前に出た。

「セレスさん、村の外でもこういう修理の需要はありますか?」

セレスは、にこりと笑う。

「ありますよ。特に少し壊れたけれど捨てるのは惜しいもの。街の職人は、になる大仕事を優先しがちですから」

リーナが、街でも需要があることを聞いて目を輝かせる。

「じゃあ、この工房も......」

「ええ。やり方次第で、いくらでも広がります」

レントはそれ以上の話に入る前に、線を引くように言った。

「まずは村の分だ。ここが回らなきゃ意味がない」

セレスは、レントの言葉にすぐ頷いた。

「もっともです。基盤が先ですね。本日は、依頼を受けていただき、ありがとうございました」

そう言って、セレスは丁寧に頭を下げた。
荷車へ戻る前、セレスは少しだけ声を落とす。

「また伺います。もし今後、材料や廃材の仕入れに困ることがあれば、相談に乗れますので」
仕入れと聞いて興味を抱いたが、レントは返事を急がなかった。
今はまだ、村の壊れ物で回っている。だが、いつか尽きる。
そのとき、外からの供給が必要になる。
セレスは、余計な押し付けをせず、荷車へ戻った。
馬が小さくいななき、荷車はゆっくりと村道へ溶けていく。
リーナが帳簿を抱えて、小屋の中へ戻る。

「行商人さん、すごく丁寧でしたね」

「商売だからな」

「でも、ちゃんと村のこと分かってました」

レントは作業台の上の依頼品を見下ろした。
短剣の素材は良い。丁寧に仕上げれば、村の道具以上に違いが出ると思った。

「預かり品が増えたな。管理は頼む」

「任せてください」

リーナは即答し、帳簿のページに指を添えた。
その仕草が、もう仕事人の動きになっている。
レントは一瞬、会ったばかりの自分に、ここまで親身になってくれる理由を考えかけた。
だが今は、そんな野暮なことを考えるより目先のことだと思い直す。

夕方、列が一段落したころ。
レントは作業台を拭き、道具の置き場所を整えた。

「今日も、なんとか終わったな」

「終わってませんよ」

リーナが帳簿を指で叩く。

「預かり品が増えましたし、急ぎ枠の相談も2件ありました。あと、支払いの物々交換の品、置き場が必要です」

そう言われてレントは棚の隅を見た。薪、干し肉、野菜、代価が少しずつ積み上がっている。

「確かに。置き場所を作るか」

「それと」

リーナが少し言いにくそうに続ける。

「これからは、工房の仕事をもっと本格的に手伝いたいです」

「雑貨屋は?」

「弟と分けます。午前は工房、午後は店。ちゃんと回します」

リーナは、言葉と同様、目も真剣だった。
レントは少し考えてから、短く言った。

「無理はするな」

「無理じゃないです」

リーナは、小さく笑った。
こうして頼られる場所ができたことが、嬉しかったからだ。

「ここ、好きなんです。誰かの役に立ってるって分かるから」

その言葉が、胸の奥に静かに刺さった。
レントも同じことを感じていたからだ。
しばらく沈黙が落ちて、レントはぽつりと言った。

「正式に頼んでもいいか」

「何をです?」

何を頼まれるのかは、ほとんど分かっていた。それでも、ちゃんと口にしてほしかった。

「この工房の帳簿係。受付と預かり管理。支払いの記録も」

リーナは目を丸くしてから、嬉しそうに頷いた。

「はい! 任せてください!」

小屋の中に、明るい声が響く。
工房に、もう一つの柱が立った音のように感じられた。
外では風が草を揺らし、夕陽が畑を赤く染めている。
その向こうから、また別の荷車の影が近づいてくるのが見えた。
レントは手袋をはめ直し、作業台の前に立った。

「まだまだ終われなそうだ。続きをやるか」

工房は、少しずつだが確実に村の外へ繋がり始めていた。
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