白銀の百合が枯れるまで【HARD CORE】

宇宙外星命体(仮称)

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第二・五話(閑話) Deutzia crenata

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  6月22日 8時06分
 ヴィラフォリダニア近辺 魔王城

 勇者一行とマイラの作戦会議を丸々全て盗聴していた魔王。これからクエストという事でギルドを出た一行の会話も盗聴しながら、マイラの処遇について考えていた。

魔王「うーむ、明後日出発か。という事は帰ってきている余裕は無いな……」

アルミナ「勇者一行と、主にあの小娘を迎え撃つ準備は出来ています。」

魔王「……アルミナ、もしかしてマイラのこと嫌いか?」

アルミナ「いえ?遊びがいがあるのでそこまででもないですよ?」
魔王「玩具として好きとかそういうのではなくてだな。」

 アルミナは何故そうまでしてマイラに対抗意識を持っているのか。確かに、アルミナは私が魔王として名乗りを上げた時から仕えてくれている。私が指示したことは完璧にこなし、指示を出す前から既に行動をしてくれていることもある。まさに、彼女の言う通り私の真の右腕と言ってもいい存在だ。そんな彼女が何故マイラを目の敵にするのか…………もしかして、前に私がマイラを右腕呼ばわりしたのがそこまで気に入らなかったのか……?

アルミナ「まぁ、いいじゃないですか。それよりも、帰って来れないことに何か問題でも?」

魔王「いや、こっちからもスパイとして行かせたのに、その役目が二週間も無いとなると、それ以降の役職はどうしたものかと……」

アルミナ「あぁ……残りの足にロープを括りつけて天井から逆さ吊りにしておけばデコイになりますよ。」

魔王「いやまぁ……目には止まるがデコイにはならんだろう……」

アルミナ「なりますよ。人間なんてちょろいので、あのくらいの小娘の醜態でも晒しておけば釘付けになるはずです。」

魔王「……やっぱお前マイラのこと嫌いだろ?」

アルミナ「いいえ?魔族には珍しい恥じらいというものを持つ個体なのでそれをじっくり堪能してみたいだけですよ?」
魔王「だから遊ぼうとするなって。」

アルミナ「別にいいじゃないですか。あの小娘が一人増えようが減ろうが困らないんですから。」

魔王「いやまぁ……特に仕事は任せてないし、大きな成果を出した訳でもないが……」

 確かに、これまでもただ在籍させていただけであって、何かしら仕事を任せていた訳では無かった。仕事を任せようにも何を任せればいいのか分からないし……目が見えない以上は大抵の仕事は危険が伴うしな……人の世に生きていたと言うことから、他の魔物達にも字を学ばせようとも思ったが、やはり見えないことが災いしてか読めるような字は書けなくなっているようだった。
 今はまぁスパイとして送っているが、大きな成果という程のものはあまり出せていない。限界に近い彼女にしてはよくやっている方だとも思うのだがな……増えようが減ろうが困らないと言われると断固として否定してやれない部分もあるのは事実かもしれない。

魔王「……いや待て、増えるのは困るな。」

アルミナ「……困りますね。」

魔王「アイツが増えたら流石に身が持たん。」

 補助する分には特に何も思わないが、暇な時に毎度私の元に暇潰しに来られると流石に面倒臭い。ある程度の過去は聞かせてもらったが、だとしても甘やかし過ぎるのは良くないし、甘えてくるのも加減をして欲しい。素の部分で接してくる時のストレスが少しばかり多いので、流石に増えるのだけは勘弁して欲しい。

アルミナ「本当ですよ。その分お風呂に入れたり、トイレに連れて行ったり、着替えさせたりするの誰だと思ってるんですか。それ全部やってあげているの私ですよ?」

魔王「まぁ、目が見えなくなる前も着替えは基本人にやって貰っていたらしいが。」

アルミナ「え?お嬢様か何かなんですか?」

魔王「……まぁ、身なり的にはおかしくは無いか。」

 今思い返してみれば普段から身につけているドレスも、人の世ではかなり高価そうなものだったか。今はしていないようだが、この城に初めて来た時にはかなり細々とした細工のなされた髪留めも着けていたはず。あの杖だってそうだ。あれだけ様々な機能を持つものであれば易々と買えるものでは無いだろう。というか、特注なら平気で数十万飛んでもおかしくは無い。それだけの金を、ぽんと出せる辺り本当にどこかの貴族の娘でもおかしくは無い……か?

魔王「それに、一応マイラの方が歳上だからな……本当に、どう接したもんかな……」

アルミナ「ちなみに、今魔王様はおいくつですか?」

魔王「ん?一応今年で164歳だが、魔族としては若い方か。」

 魔族と呼ばれている種の寿命を平均しても、おおよそ四千前後。人間に例えると……まだ四歳程度にしかなっていないのか。魔族で見ればまだ私も幼いのか。まぁ、私の種で164歳となると成人過ぎ辺りだがな。

アルミナ「えっ……私の四倍……」

魔王「まだまだ青いな。というか、幼い部類なのか?アルミナも見た目は成長して立派な女性だが、まだまだ幼いんだな。」

アルミナ「魔王様より歳上ということは、あの娘……いや、あのロリババア一体いくつなんですか……!?」

魔王「口の利き方に気をつけた方がいいぞ、下手したら寝首を掻かれるかもしれないからな。」

 というか、正面からあの杖で撲殺されてもおかしくない発言だな。種族的に、まだ比較的若いというか幼いような見た目ではあるが、一万年代以前から名を連ねているとなると、最低でも千年以上……人間についての知識も豊富なことも踏まえると、まさか人間がこの星に来る前から……?

魔王「……うーむ、イルブズエルフの寿命より長い時間の可能性もあるか……?」

アルミナ「はぁ……?イルブズの寿命って……七、八千年ですよね……?稀に一万年とも呼ばれていますが、まさかそれより長生きしてるんです……?」

魔王「そうでもなければ、古代の言葉を知っていたり、大昔の人間の知識を持っていることの説明がつかんだろう。アースとかいう星にまだ人間が住んでいた頃の話とやらをするやつだ、別に不思議では無いがな。」

アルミナ「…………」

魔王「まぁ、現実的に考えるなら、彼女がリトルエルフだとして、その成人年齢から少し過ぎた三千歳辺りが妥当だろうな。人間の歴史など、人間に紛れて学べば身につくだろうしな。」

アルミナ「貴族の娘かつ三千歳……こ、今度から敬語を使うようにしたほうが……?」

魔王「余計嫌がられそうだからやめておけ。」

アルミナ「……じゃあ、どうしましょうね……?」

魔王「……考えても無駄だな。どうせ貴族生まれの歳上だとしても、下手に出てくれるんだ。その優しさに甘えようじゃないか。」

アルミナ「甘えるついでに遊ぶのは?」

魔王「……やるなら自己責任でやれ。私は知らんぞ。」

アルミナ「分かりました。」

 分かっちゃダメな気もするが、この際無視だな。無視。あいつの事だ、ある程度の手加減はしてやるだろう……

アルミナ「根本的な話、何故あの……あのロリババはあんな状態に?」

魔王「あ~……これ勝手に話していい話か……?プライバシーの侵害になりそうだが……」

アルミナ「魔族や魔物に法的な権利は認められてませんからいいんじゃないですか?」
魔王「発言諸共ダメだろ。」

 本人からは“上層部で知りたいやつには伝えて良い”とは言われているが、あまり気軽に話せた内容では無いしな……聞いている側としても気分のいい話では無かったものを、態々話すべきなのだろうか。

アルミナ「お話して頂けませんか?そうすれば、彼女に対する見方も変わるかもしれませんので。」

魔王「……他言無用だぞ。」

アルミナ「はい。」

魔王「……あの腕と脚の話だが、あれは事故や病気による切除による欠損では無い。かと言って、知っているとは思うが、産まれた時から無かった訳でもない。」

アルミナ「まぁ、なんか鉄のキャップみたいなの着いてますもんね。」

魔王「あぁ。勇者に切り落とされたらしい。」

アルミナ「……勇者に……ですか?勇者“が”切り落とされたんじゃなくて?」

魔王「まぁ……それもアイツならやりかねないが、残念ながら切られたのはマイラの方だ。」

アルミナ「そうなんですか?まぁ、ここに来てからも大人しいですし、何も出来ずに殺されかけていてもおかしくは無いですもんね。」

魔王「……現在進行形で城の改築工事をしているだろう?言っておくが、あれの原因の九割はマイラだからな。」

アルミナ「……私の知らないところで何があったんです?」

魔王「いや何、丁度お前が魔王補佐集会で席を外していた時にな、アイツ城を半壊させやがってな。」
アルミナ「あの時のやつですか!?」

 丁度私とアルミナがそれぞれ席を外していた時に、彼女は城を半壊させたことがあった。その時のことはよく覚えている。帰ってきたら城の西側がえぐれて、ほぼ何も無くなっていたのは実に衝撃的だったからな。もう言葉が出なかったし。

魔王「確か……3ヶ月前だったか?何か、イタズラの報復にミサイル数発と爆弾投げまくって城半壊させたらしいぞ。」

アルミナ「そんな事でこの城の半分壊れます?」

魔王「まぁ、大昔の人間の兵器をかっぱらって改造したって言ってたしな。威力がぶっ飛んでいてもおかしくは無いが。」

アルミナ「そうですか……でも、それだけの威力なら自分への被害も凄そうですが……」

魔王「何か説教した時にゴツイ服着て盾みたいなのを持ってたぞ。」

アルミナ「怪我の心配はしていませんが、音は大丈夫なんですかね?」

魔王「直接じゃ無ければ命には関わらないんだと。悪びれる様子もなく言ってたから、まぁキツめに叱った。」

アルミナ「そりゃそうですよね。」

 お陰様で城に住んでる者は全員、二週間ほどほぼ野宿だったからな。まぁ、その分改築費用の七割を請け負ってくれたから幾らか許してはいるが、今でも警戒は怠れない。何をしでかすか分かったものじゃないからな。あの見た目とは裏腹にあの暴れよう、恐ろしいものだ。

アルミナ「でも、話を戻しますが、そんなに強いのであれば勇者程度に腕を切り落とされることも無いのでは?」

魔王「まぁ、そう思うよな。勇者とはいえ所詮は人間。城を半壊させるような奴に易々と勝てるとは到底思えない。それは我々にとっても普通の感覚だな。」

アルミナ「では、私達では想像もつかない手段で勝ったとでも?」

魔王「いや、そうでもない。が、実行するとなると、彼女のような生き方が必要になるだろうな。」

アルミナ「……?彼女のようなというと……人間に溶け込んで、彼らと仲良く暮らすとかいう腑抜けた生き方ですか?」

魔王「あぁ……そうか、お前はそういうのが許せないタイプだったな。」

アルミナ「人間は嫌いです。それと仲良しこよしでつるんでいる彼女も。」

魔王「……もし、お前が一切隙のない相手を殺すならどうやって殺す?」

アルミナ「えっ?それはもう、スパイでもするなりなんなりして、相手の懐に潜り込んで、心を奪ったところで………………まさか…………いえ、人間がそんな事を……?」

 やはり、そういう反応をするか。人間は馬鹿正直で、倫理や道徳に従って生きるという不便で非効率的な生き物だ。そんなものに縛られて、自分を傷付けるものに、必要以上の報復もままならない弱々しい生き物。特に、勇者パーティーに入っている者ともなると、それらに背くようなことなどまず有り得ない。人間の中の世間からのイメージもそうだろう。しかしそれが、我々魔物や魔族を貶める罠になりうることもあるらしい。

魔王「……ところでアルミナ、我々の活動の源は何だ?」

アルミナ「えっ……飲食物ですか?」

魔王「あぁ……まぁ…………間違いじゃないんだが……」

アルミナ「えっ?じゃあ……魔力?」

魔王「そうだな。その魔力を使い過ぎたらどうなる?」

アルミナ「使い過ぎたら……?魔力が切れかけてその場から動くのも大変になりますね。」

魔王「うむ。では、我々がギリギリ生きられる程度まで魔力が放出させられてしまったらどうなる?」

アルミナ「そんなの動くどころか過呼吸になって魔素を必死に取り込むくらいしか出来なくなりますよ……って、そんな状況になる事はまずありませんし。」

魔王「そうか……なら……」

 魔王は懐からとても小さな小瓶を取り出し、アルミナに差し出した。何が入っているのかも分からないものを差し出されて少し困惑しているようだが、一先ずその小瓶を受け取り、その中の液体をまじまじと見つめていた。無色透明の謎の液体。振ってもさほど泡立つわけでもなければ、光に当てれば変色する訳でもない。パッと見、ただの水。

アルミナ「……何ですかコレ。」

魔王「それを飲んでみて欲しい。一滴分だけならそれなりにいい薬だ。」

アルミナ「……?い、頂きます……?」

 小瓶の蓋を空け、その液体を一滴だけ口の中に垂らし、飲み込む。ほんの少しだけ甘味はあるものの、この一滴程度ではまるで何も分からないとでも言いたげな様子で、少し首を傾げながら魔王に聞き返した。

アルミナ「……これが何か意味あるんですか?」

魔王「何か体に異常はないか?」

アルミナ「異常……ですか……?……特にはありませんが、強いて言うなら身体が少しだけ熱くなってきた気はします……辛くも無いのに汗もかきますし……何なんです?コレ……」

魔王「それは、人間の世界に流通している魔力排出薬というものらしい。一般的には、犯罪者が魔法で抵抗出来ないようにそれを飲ませて、魔力を空にし、体内の魔力生成を止めるために使うそうだ。」

アルミナ「そんなものを飲ませないでくださいよ……突然汗をかいたのってそういう事だったんですね……汗と一緒に魔力排出……若干涙も出てきますし……もしかしてこれ、もっと飲む量が多ければ、汗や涙以外にも……?」

魔王「まぁ、汗や涙、鼻水や唾液、尿や吐瀉物などで魔力を体外に自然排出するのは人魔共通だからな。」

アルミナ「……二度と飲ませないでください。こんな所で粗相なんて出来ませんし……万が一嘔吐などしたら魔王様の謁見の間が穢れてしまいます……」

魔王「大丈夫だ。それ以前に、それだけの量を飲めばお前は死ぬからな。」

アルミナ「はい?……あぁ、魔力切れでということですね……?」

 魔力切れは名前の通り魔力を使い切った状態のことを指す言葉である。人間はよく死闘の後に魔力切れで息を切らしているが、魔法生物である魔物や魔族にとって魔力切れというものはその比では無いほど危険な状態である。何せ、魔力が生命維持の要になる種なのだ。そんなものが尽きようものなら、それ即ち死を意味すると言っても過言では無い。

魔王「あぁ、だからその一滴だけ飲ませたんだ。」

アルミナ「なるほど……確かにあと数滴多ければ、私や並の魔族でも命に…………」

魔王「……アルミナ、お前にとって、さっきの液体はどう見えた?」

アルミナ「……ただの水にしか……」

魔王「そうだな。もし、お前がかなり信頼している人物に、差し入れだと水のボトルを与えられたら、お前はそれを飲むか?」

アルミナ「………………」

魔王「……だよな。きっとアイツだってそうだったろう。だからこそ、抵抗も出来ずに腕や脚を取られたのだろうな。」

アルミナ「……でも、分かりません……もしそうなら、彼女は既に死んでいるはず……」

魔王「言っておくが、魔力量は魂に依存する。例え肉体が幼かろうと衰えようと、積み重ねた年数次第ではおぞましい量になりえる。実際、使えはしないが魔力の保有限界で言えば彼女の方が私より圧倒的に多いだろうし、何も失っていなかった当時ならなおのことだろうしな。」

アルミナ「でもっ……!それならいっそ殺してしまえば……!」

魔王「だな。その方が世間からの印象も良いだろうし、報復の恐れも無いだろう。だが、こういう考え方もあるだろう?死にたくても死ねない状態で泳がせておけば、従来の死以上の苦痛を与えられる。そうは思わないか?」

アルミナ「………………それは……痛いほど…………」

 魔物や魔族に倫理などというものは存在しない。確かに、ある程度の良識はあるが、憎むべき相手に対してであれば、必要以上の苦痛を与えることも厭わない。そういった考えは、彼らにとっては割と普通なことなのである。だからこそ、彼女にもその考えが理解出来たのであろう。人間を酷く嫌う彼女にとって、人間をただ殺すだけでは飽き足らないのと同じように、一部の人間にとってもまた、魔族をただ殺すだけでは飽き足らないのであろう。

魔王「……まぁ、その勇者の唯一のミスを出すとすれば、彼女にその考えを抱いたことだな。マイラなら、あの程度では絶望もしないだろうし、寧ろ、報復の為の殺意を燃え上がらせたことだろう。さっさと殺しておけば、同等の苦しみに悶えることも無かっただろうに。」

アルミナ「……その勇者は……どこですか…………」

魔王「殺すつもりならもう間に合ってると思うぞ。マイラの報復で、そいつは既に植物人間状態らしいからな。」

アルミナ「……なら……いいですが…………どうやって報復を……?」

魔王「過去の新聞でも漁ってみればどうだ?勇者と魔女のニュースなんて、そう無いだろうし、あったとすれば大見出し記事だろうしな。」

アルミナ「……はい。」

魔王「腕と脚はそんなところだ。視覚と聴覚は…………また今度の方がいいか?」

アルミナ「……はい、少し時間を置いてからでお願いします…………」

魔王「そうだな。こんな話を立て続けにしては気が滅入るしな。」

 だが、分からんな。彼女ほど用心深い者ならば、勇者ごときの策略にまんまとハマるはずがないと思うのだが……それほどまでに彼女は、勇者に心を許していたと?私以上に人間を憎む彼女が、か?それとも、そうならざるを得ない程に精神的に追い詰められていたのか?
 …………人間はそうだが、魔族でありながらもそのような状態になる彼女の事を、私は理解出来る気がしない。

魔王「で、彼女の事が少しは理解出来たか?」

アルミナ「……少しは。」

魔王「なら、この時間は無意味な時間ではなかったと捉えるが、それでいいか?」

アルミナ「えぇ、有意義な時間でした。まぁ、だからといってデコイ作戦を潰すつもりはありませんが。」

魔王「私怨でもあるのか?」

アルミナ「いえ、個人的な恨みは特には。」

魔王「……ま、程々にな。それより、頼んでおいたアレはどうなった?」

アルミナ「はい。昨夜から今朝6時時点で二万件ほど意見が集まっております。」

魔王「早くないか?」

アルミナ「魔王様、時代は魔導機械ですよ。過去の人間の技術、“ねっと”を元にした便利な情報収集手段があるのですから、さほど時間はかかりませんし、手軽なんですよ。もちろん、紙で提出された方も沢山いましたよ。」

魔王「むぅ……機械はよく分からん……」

アルミナ「機械音痴ですもんね。」

 遠慮というものを知らないのか、胸にグサグサと刺すような言葉を平気で発してくる。まぁ、いつもの事なので深くは突っ込まないが…………機械音痴は治さねばな……魔王たるもの、機械に振り回されてどうするのだ。分からないなりに学ばなくては……

魔王「それは置いておいて……早速だが、全部チェックするぞ。徹夜は覚悟しておけ。」

アルミナ「……え、魔王様も確認するんですか?」

魔王「当たり前だろう。私が部下の意見に目を通さなくてどうする。」

アルミナ「……流石です。では、仕事部屋の方で見れるよう準備しておきます。」

魔王「うむ、頼んだぞ。」

 さて、どれだけかかることやら……マイラが来る前には対策を済ませておかねばならん。恐らく、猶予は一週間もない。全ての魔物や魔族の為にも、私が頑張らなくては。



第二・五話(閑話) 終
tips
「アルミナ」
魔王に仕える専属メイド。魔王城のNo.3であり、魔王の右腕。仕事の際は冷静かつ迅速な行動を取り、休憩時も魔王の次の仕事のことや自身の次のスケジュールの再確認など、城内でも珍しいかなり仕事の出来る魔族。種族はミノタウロス系のミュンヴィレというものの為、筋力があり近接戦に強いのだが、それを悟られないように悪魔系のデーモン(中位)のような姿で生活している。人間を嫌っており、また人間とつるむ魔物や魔族も嫌いであるため、マイラの事をよく思っていない。魔王に強い忠誠を誓っており、それに加えて魔王の右腕というポジションに酷く執着している。魔王がマイラを右腕だと言った為、そこから更にライバル意識が強くなったが、自身の力を理解しているため、無謀な戦闘はしないようにしている。毒舌な面が強く、忠誠心の割には魔王にも毒を吐くことがある。お気に入りの武器は、魔王に貰った簡素な黒いシックル。重すぎず軽すぎず、人間の首を取るにはちょうどいいと言うが、その度に血が付着する為、それをくれた魔王に申し訳なくなるという。


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