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ep34.調査開始④
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辺りはすっかり夕方になってしまった。高宮の寺から星川の部屋までが遠すぎる。タクシーを使うのもためらわれるレベルだ。高宮は高校の友人だから、勿論住んでいる地域は違うのは仕方が無いのだが、今日ほどどこでもドアが欲しいと思ったことはない。
(しっかし……どこから探せばいいものか……って感じだよな)
星川の部屋は状況が状況だったのでよく見ていないが、姉の考えていたことなんて今もわからない。高宮が言う『本物』だってなんなのか予想もつかないのだ。どうしろと言う。
とぼとぼと一人で星川家まで歩く。マンションはもう目の前に見えていた。俺はポケットから鍵を取り出すと星川のマンションに入っていく。エレベーターが無いのが厳しい。鍵を刺して回すと扉は簡単に開く。
「お邪魔しますよ……っと」
さて、どこから探すか。俺は物取りの様に棚や引き出しを漁る。普段はこっちの家には住んでいないのか最低限の食料と衣類しかない。通帳の類すらどこにもない。つまりは全く『本物』の見当がつかない。
「大体呪われてる本人に心当たりが無いなら他人の俺にわかるわけねえよなあ……」
よく青年漫画とかで見るのはストーカーがぬいぐるみとかにカメラを仕込んだり、コンセントに盗聴器を仕込んだりが定番だが見渡す限りそんなものは無い。自分が姉なら、どこに呪いを隠す? 姉は掃除が苦手な星川の部屋を掃除したと言っていた。どこまで掃除したんだろう。あまり考えたくは無いけど、寝室とか?
そんな気持ちで入ってみたものの、寝室にはベッドしかない。試しに枕の中に何か隠していないかとぽすぽす触ってみても何もない。
姉が星川と一緒にいる為に自殺を決心してからあまり期間は経っていなかった。だからそんなたいそうなものでは無いと思うのだがそこから間違っていたのだろうか。
「……俺が隠すとしたら……」
星川は確かに引くほど掃除が出来ないが(霊障の可能性もあるが)ああいうタイプは部屋が汚くてもどこに何があるかわかっている人間が多い。だからわかりやすい所には隠さないだろう。木を隠すなら森の中というし、ものを隠すならゴミの中と思うのも想定できるが、あの状態の姉にそんなことが考えられるだろうか。
「……俺が隠すとしたら」
周りを見渡す。何もない部屋だ。カレンダーすらも飾られていない、何もない……。
「……ん?」
ひとつだけ不自然なものが目に入る。花瓶だ。花瓶に花が飾られている。
一見、それ自体は変な事でもない。だが、カーテンが閉められた薄暗い、割れたグラスなどが散乱した部屋。その中に新鮮で綺麗な生花が飾られている。星川はそこまで気が回る男ではないと思うのだが。
(そうだ、花……)
そういえば日記には花がどうこう書かれていた。透明ではなく、白い陶器の花瓶に白い薔薇が飾られている。基本的に星川は姉の言いなりだ。この花も姉の指示だとしたら。
「まさか、な……」
花瓶の裏になんかお札があったりして。そう苦笑いして花瓶を持ち上げて底を触ると、陶器ではない違和感があった。なにかある。それを確かめる為にシンクに花瓶を持っていき、中身を出して花瓶を裏返した。
花瓶の裏にはフェルトが張り付けられている。滑り止めだろうがと思ったが嫌な予感がしてそれを無理矢理剥がす。
「———あった」
フェルトと花瓶の間、そこには紙らしきものが挟み込まれていた。
(しっかし……どこから探せばいいものか……って感じだよな)
星川の部屋は状況が状況だったのでよく見ていないが、姉の考えていたことなんて今もわからない。高宮が言う『本物』だってなんなのか予想もつかないのだ。どうしろと言う。
とぼとぼと一人で星川家まで歩く。マンションはもう目の前に見えていた。俺はポケットから鍵を取り出すと星川のマンションに入っていく。エレベーターが無いのが厳しい。鍵を刺して回すと扉は簡単に開く。
「お邪魔しますよ……っと」
さて、どこから探すか。俺は物取りの様に棚や引き出しを漁る。普段はこっちの家には住んでいないのか最低限の食料と衣類しかない。通帳の類すらどこにもない。つまりは全く『本物』の見当がつかない。
「大体呪われてる本人に心当たりが無いなら他人の俺にわかるわけねえよなあ……」
よく青年漫画とかで見るのはストーカーがぬいぐるみとかにカメラを仕込んだり、コンセントに盗聴器を仕込んだりが定番だが見渡す限りそんなものは無い。自分が姉なら、どこに呪いを隠す? 姉は掃除が苦手な星川の部屋を掃除したと言っていた。どこまで掃除したんだろう。あまり考えたくは無いけど、寝室とか?
そんな気持ちで入ってみたものの、寝室にはベッドしかない。試しに枕の中に何か隠していないかとぽすぽす触ってみても何もない。
姉が星川と一緒にいる為に自殺を決心してからあまり期間は経っていなかった。だからそんなたいそうなものでは無いと思うのだがそこから間違っていたのだろうか。
「……俺が隠すとしたら……」
星川は確かに引くほど掃除が出来ないが(霊障の可能性もあるが)ああいうタイプは部屋が汚くてもどこに何があるかわかっている人間が多い。だからわかりやすい所には隠さないだろう。木を隠すなら森の中というし、ものを隠すならゴミの中と思うのも想定できるが、あの状態の姉にそんなことが考えられるだろうか。
「……俺が隠すとしたら」
周りを見渡す。何もない部屋だ。カレンダーすらも飾られていない、何もない……。
「……ん?」
ひとつだけ不自然なものが目に入る。花瓶だ。花瓶に花が飾られている。
一見、それ自体は変な事でもない。だが、カーテンが閉められた薄暗い、割れたグラスなどが散乱した部屋。その中に新鮮で綺麗な生花が飾られている。星川はそこまで気が回る男ではないと思うのだが。
(そうだ、花……)
そういえば日記には花がどうこう書かれていた。透明ではなく、白い陶器の花瓶に白い薔薇が飾られている。基本的に星川は姉の言いなりだ。この花も姉の指示だとしたら。
「まさか、な……」
花瓶の裏になんかお札があったりして。そう苦笑いして花瓶を持ち上げて底を触ると、陶器ではない違和感があった。なにかある。それを確かめる為にシンクに花瓶を持っていき、中身を出して花瓶を裏返した。
花瓶の裏にはフェルトが張り付けられている。滑り止めだろうがと思ったが嫌な予感がしてそれを無理矢理剥がす。
「———あった」
フェルトと花瓶の間、そこには紙らしきものが挟み込まれていた。
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