【完結】自傷探偵と日南くん。〜ときどき幽霊〜

あいう

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ep35.調査開始⑤

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「『本物』って……これか?」
 不気味な“それ”は手のひらに収まるほど小さい紙だった。広げてみるとそれはヒトガタの形をしている。二つのヒトガタが黒い糸と赤い糸で繋がれている。紙にはセロハンテープで爪のかけらのようなものが張りつけてある。そうではないもう一つは短い髪の毛が貼ってある。それを見て気が付いた。
「これって……」
 よく見てみると赤い糸の上から縫われている黒い糸は「糸では」ない。貼り付けられているものとは違うものだが、恐らく髪の毛だ。黒い髪の毛で紙同士を繋げている。気持ち悪い。これを姉が……?
「これを燃やせばいいのか……? そうすれば姉さんは星川から……」
 ポケットからジッポを取り出す。さて、燃やそうとするとスマートフォンのバイブがアウターのポケットの中で震えた。電話番号は登録していない。こんな時に誰からだろう。なんの疑いも無く通話ボタンを押すと、聞きなれた声が聞こえてきた。
「はい、もしもし」
『ああ、新かー』
 高宮の声だ。高宮とは高校の付き合い、メッセージアプリでの連絡先交換が主であった当時の自分達は電話番号の登録をしていない。でも、だったらアプリにかけてくればいいのに、どうしてわざわざ電話の方にかけてきたんだろう?
『そろそろ見つかったかー?』
「たぶんな、アプリで写真送るから見てくれねえ?」
『おー、あ、あとな。それ燃やさなくていいから』
 写真を撮り、メッセージアプリで画像を送信する。その途中でそんなことを言われ一瞬手が止まった。
「え、燃やさなくていいのか? 星川どうするんだよ」
『いや、なんかなんとかなったわ。星川先生はもう大丈夫だから家に帰したよ。お前も早く家に帰れよなー』
 そう言った高宮はぷつりと電話を切った。なんとかなったって……と思ったが、高宮はその道のプロだ。実際やってみたらできた、なんてこともあるのかもしれない。
 でも、なんだか嫌な予感がする。ヒトガタは持ってちゃんと見てもらおう。実際呪いの媒体の様なものがあるのだし、星川に影響を与えている物だったら大変だ。俺はスマホカバーにヒトガタを挟むと、玄関で靴をひっかけ部屋を出た。さて、また寺に行かなければならないわけだが……、面倒だ。そう思った時だった。
 メッセージアプリが電話が入ったことを知らせる。また高宮からだ。はいはい、と通話ボタンを押すと、高宮の興奮した、もしくは焦りでパニックになったような声がスピーカーに響いた。
「あ、高宮? どした?」
『お前さっきの写真のブツ燃やしたか!?』
「え、燃やしてないけど。お前がもう終わったって言ったんじゃん」
 そう言うと高宮は『今すぐ燃やせっ!』と叫んだ。
『オレは電話してない! それとお前の姉ちゃんが逃げたからそっちに接触してくる可能性が高い! 今やばいのは星川サンじゃなくて動いてるお前なんだよ』」
 そういえば、電話での高宮は星川の事を「星川サン」ではなく「星川先生」と呼んでいた。俺は「知り合いが姉にとり憑かれているという事情」を高宮には話したが、星川が先制だったことは話していない。つまり、さっきの電話は――……。
「キミッ! 止まりなさいッ!」
「——え?」
 上から影が落ちてくる。
『新!? おい! 新!?』
 ガン、と地面になにか固いものが落ちた音がした。
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