番になんてなりませんっ!

あいう

文字の大きさ
16 / 22

16話

しおりを挟む
「……っ、ここは……」
「ヨォ、起きたか」

暗い体育用具室、男は体育マットの上に足を組んで座っていた。 

「転校生でアイツの手つきのΩ、前から気になってたんだよなァ」
「何?レイプする為にこんな二週間も我慢してたのか?随分なこって。まぁ、残念だけどそこまで読んでる。すぐに会長が来るだろうよ」
「こっちも読んでるよ。今アイツは俺のダチの相手してるだろうな」

と、なると救援が来る可能性は低い。タイマンなら一人でなんとかできなくもないが、先程から妙に頭がクラクラするのが引っかかった。体も熱い。まるでヒートの時みたいだ。

それをわかっているみたいに男は口角で笑い小さな瓶を振りながら見せつけた。中には液体が入っている。

「ヒート誘発剤だ」 

まずい、と八雲は思った。
ヒート誘発剤は違法薬物に分類される。詳しいことはわからないがオメガに無理やりヒートの状況を作り出すドラックだ。番持ちには効果が薄いとは聞くが、この感覚だといつものヒートと変わらない。

「……そこまでしてΩを犯したいかよ」
「あぁ、αに産まれたならΩを犯すのが義務みてえなもんだろ?ムカつく奴の手つきや女なら尚更だ。もしガキが出来てもα様の子供なら箔がつくだろうしwin-winじゃねえか」

狂ってる。コイツはクソ野郎だ。
八雲は悔しさから歯噛みを抑えきれなかった。αのほとんどはいつもそうだ。弱いものの都合なんて考えない。叶や御影が特殊なだけなのだ。

ついに八雲は膝をついた。身体が火照る。息が熱い。

ヒートが、来た。

「……会長様お抱えのΩもそんなもんか」

残念そうな男に押し倒される。抵抗するもされるがままに服を脱がされ、八雲はシャツ一枚の姿にされた。
レイプされかけた記憶がフラッシュバックする。
気づけば震えた情けない声で八雲は男に懇願していた。

「……やめろ」
「聞くかよ」

あと数センチで触られる、そんな時だった。
大きく音を立てて開かれる扉、そしてシャッターの音。
そこにいたのは紛れも無い叶だった。

「撮影成功。連続レイプ犯の証拠とったりってわけだ」
「西野……」

どうして叶が、戸惑う八雲の目の前に御影が現れる。叶の後ろで御影はレイブが未遂に終わったことを知るとホッとしている表情をしていた。

「二年A組、東條考二。学内でのドラッグ使用、他生徒への暴行から保険医ならびに生徒会顧問として職員会議にかけさせて貰う。退学を覚悟しておけ」

冷たい声で言い放たれた判決。だが男はそれを歯牙にもかけず余裕の表情で答えた。

「ハッ、そんなもんで証拠になるとでも?第一職員全員親の奴隷だ。いつものように揉み消すだろうよ」
「それはどうかな。……御影」
「はい」

叶の一言で御影は胸ポケットから小さな機械を取り出した。

『ヒート誘発剤だ』
『……そこまでしてΩを犯したいかよ』
『あぁ、αに産まれたならΩを犯すのが義務みてえなもんだろ?ムカつく奴の手つきや女なら尚更だ。もしガキが出来てもα様の子供なら箔がつくだろうしwin-winじゃねえか』

いつの間に仕込まれたのだろう。レコーダーから流れてきたのは男の暴言の数々だった。

「違法薬物であるヒート誘発剤の使用、この学校での差別意識、それから暴行未遂。いくら大口の顧客だとは言えこんなイメージダウンに繋がる生徒をウチが囲うと思うか?」
「……チッ」

男は舌打ちをすると御影を突き飛ばして体育準備室を出て行った。
残ったのは自分と、叶と、それから御影だけ。

口火を切ったのは叶からだった。白衣を脱ぎ、それを八雲の肩にかけてやる。ふわっと、タバコとシトラスの香水の混ざった匂いが鼻孔をくすぐった。

「御影、データバックアップ取っておけ」
「は、はいっ!」
「それから、生徒だけで無茶をするな。必ず大人に相談しろ。何のために教師がいると思ってる」
「すいません……」
「次から気をつけろ。お前は来期からのトップなんだからな。わかったら仕事に戻れ」
「はい!」

いつも横暴な御影があんな態度をとるのなんて初めて見た。意外な叶の一面に惚けていると、叶は八雲に向き合い顔を覗き込んだ。 

「何もされて無いか?」
「うん。誘発剤も、番がいるからあんまり酷くはな……」
「八雲!」

そこからの記憶はない。
ただ、叶が自分を抱き上げてくれたのはぼんやりと覚えていて、やっぱり安心するなあとホッとして八雲は微睡みの中に身を寄せたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。 しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです… 本当の花嫁じゃないとばれたら大変! だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...