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秋、スランプ。
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企画書はとりあえず持ち帰った。
帰宅し、嫌に物持ちが良い勉強机の上にノートを広げる。
企画書としては上出来だ。素人だかアマチュアだか知らないが、もっとめちゃくちゃなものも持ってくると思っていたから、きちんとキャラクター設定、起承転結やログライン、見せ場が書かれているものを持ってきてもらえるのは助かる。各シーンで書きたい、伝えたいことも書かれていて、スチルのラフとBGMのイメージも書かれている。侮っていたが、彼女も一応は本気側の人間らしかった。
読む限りストーリーはこうだ。
主人公は中学生のサッカー選手。プロのスカウトも期待される秀才で、フォワードとしてたくさんの試合で活躍している。本人も未来の自分を疑わなかったし、高校もサッカーの強豪校への推薦が決まっていた。
だが、そんな主人公は事故で片足を失ってしまう。選手生命を絶たれた主人公は絶望するが、ある日近所のグラウンドで行われていたイベントでアンプティサッカーの試合を見る。試合展開にイライラしながら試合を見る主人公。自分ならこう動く、あんなプレイはしない、とイライラが募り、グラウンドへ罵声を飛ばしてしまう。そこで文句を言いにやってきたのがヒロインだ。ヒロインが言うにはこれは地域のサークルで、楽しめればいいらしいが、主人公は勝つことにこだわる人生を送ってきたので気持ちがわからない。「お遊びならやる意味がない」という主人公にヒロインはだったらやってみようと主人公を連れ出す。初めてのアンプティサッカーに苦戦する主人公。見ているだけではわからない難しさを学ぶ。
ヒロインに誘われ、サークルに入部する主人公。色々な人に触れながら新しい楽しさを覚え日常にハリが出てくる。だが、初めての他チームとの試合で器具に足を引っかけて転んでシュートを逃す主人公。そしてその失点でチームは負けてしまう。昔はこんなミスしなかった、向いてないかもしれないと悩む主人公。そこにヒロインが言う。「まだ未来があるでしょ」と。
ヒロインの言う通り自分は始めたばかりだ。これから頑張ればいい、自分が半生身を捧げたサッカーと同じように。そして主人公はもう一度コートに立つ。目指すはプロ。これから明るい主人公の未来が幕を開ける。
「……うん」
ここまで流れが出来ているなら難航はしないだろう。完全にこれをなぞるだけの作業だが、仕事でもそうだったじゃないか。これは仕事と割り切ろう。
「長編のシナリオ……にはならないな、短、中編くらいのボリュームになるかな……」
実際は書いてみないと何時間モノになるかわからないが、恐らくノベルゲームとして作るつもりならば長くて三時間くらいだろう。染衣の筆の速さなら初校一週間もあれば上がる。そこから姫路夫婦に読んでもらい、OKが入ればあとはお任せという流れだろうか。
「……とりあえず書いてみるか」
長いこと開いていなかったノートパソコンを開く。キーボードに両手を置く。それから二十分経った。
「……あれ?」
なんでだろう。書くのは得意だったはずなのに、書くことだけは得意だったはずなのに。
ーーたったの一文字もかけない。
帰宅し、嫌に物持ちが良い勉強机の上にノートを広げる。
企画書としては上出来だ。素人だかアマチュアだか知らないが、もっとめちゃくちゃなものも持ってくると思っていたから、きちんとキャラクター設定、起承転結やログライン、見せ場が書かれているものを持ってきてもらえるのは助かる。各シーンで書きたい、伝えたいことも書かれていて、スチルのラフとBGMのイメージも書かれている。侮っていたが、彼女も一応は本気側の人間らしかった。
読む限りストーリーはこうだ。
主人公は中学生のサッカー選手。プロのスカウトも期待される秀才で、フォワードとしてたくさんの試合で活躍している。本人も未来の自分を疑わなかったし、高校もサッカーの強豪校への推薦が決まっていた。
だが、そんな主人公は事故で片足を失ってしまう。選手生命を絶たれた主人公は絶望するが、ある日近所のグラウンドで行われていたイベントでアンプティサッカーの試合を見る。試合展開にイライラしながら試合を見る主人公。自分ならこう動く、あんなプレイはしない、とイライラが募り、グラウンドへ罵声を飛ばしてしまう。そこで文句を言いにやってきたのがヒロインだ。ヒロインが言うにはこれは地域のサークルで、楽しめればいいらしいが、主人公は勝つことにこだわる人生を送ってきたので気持ちがわからない。「お遊びならやる意味がない」という主人公にヒロインはだったらやってみようと主人公を連れ出す。初めてのアンプティサッカーに苦戦する主人公。見ているだけではわからない難しさを学ぶ。
ヒロインに誘われ、サークルに入部する主人公。色々な人に触れながら新しい楽しさを覚え日常にハリが出てくる。だが、初めての他チームとの試合で器具に足を引っかけて転んでシュートを逃す主人公。そしてその失点でチームは負けてしまう。昔はこんなミスしなかった、向いてないかもしれないと悩む主人公。そこにヒロインが言う。「まだ未来があるでしょ」と。
ヒロインの言う通り自分は始めたばかりだ。これから頑張ればいい、自分が半生身を捧げたサッカーと同じように。そして主人公はもう一度コートに立つ。目指すはプロ。これから明るい主人公の未来が幕を開ける。
「……うん」
ここまで流れが出来ているなら難航はしないだろう。完全にこれをなぞるだけの作業だが、仕事でもそうだったじゃないか。これは仕事と割り切ろう。
「長編のシナリオ……にはならないな、短、中編くらいのボリュームになるかな……」
実際は書いてみないと何時間モノになるかわからないが、恐らくノベルゲームとして作るつもりならば長くて三時間くらいだろう。染衣の筆の速さなら初校一週間もあれば上がる。そこから姫路夫婦に読んでもらい、OKが入ればあとはお任せという流れだろうか。
「……とりあえず書いてみるか」
長いこと開いていなかったノートパソコンを開く。キーボードに両手を置く。それから二十分経った。
「……あれ?」
なんでだろう。書くのは得意だったはずなのに、書くことだけは得意だったはずなのに。
ーーたったの一文字もかけない。
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