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ご主人様と初めてのキス
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「………」
「よく頑張りましたね」
よしよしと頭を撫でると、時嗣はベッドに腰をかけて気持ちよさそうに頬を幸太郎の身体にすり寄せた。
ティーパーティが終わってすぐに自室に戻った時嗣は、幸太郎を連れてすぐにこうなってしまった。幸太郎はまだウィッグすら取ってはいない。だけど、それほど不快だったのだろう。今は主人のメンタルケアの方が優先だと判断し今に至る。
「……気持ち悪かった。あんなのと結婚するなんてありえない」
「大丈夫です。男なら勃とうと思えば勃ちます」
「じゃあ幸太郎はできるの」
「…………」
「ばか」
所謂美魔女ならそりゃ幸太郎だっていけただろうが、一之宮は見た目は痛々しく若作りしているおばさんだ。女優の様な美貌でもないし、スタイルも良くもない。幸太郎は自分では風俗でどんな外れを引いても抜けた事からストライク範囲が広いと思っているが、流石に一之宮は無理だった。セクハラショタコンババアじゃなきゃ別だったが、あの本性を見てから抜くのはやっぱりどう頑張っても難しい。 いや、やっぱり黙らせて脱がせたらいけるかもしれない。不埒な想像をしていると、時嗣は肩に頭をぐりぐりとし、甘えたような声で手を取った。
「ねえ、幸太郎。僕頑張ったよ。約束は?」
「約束……」
そうだ、と幸太郎は思い出す。
『じゃあご主人様が婚約者様とちゃんとお話しできたらキスしてあげます』
「……しましたね」
確かに約束した。しかもそれを餌にしてあの苦行を強いたまである。それを反故にするのは流石に可哀想だろう。
「ご主人様、本当にいいんですか? 俺、男ですよ」
「いいの!」
「…………じゃあ、目、瞑ってください」
大人しく目を瞑る時嗣に、恐る恐る唇を近づける。
今からヤバいことをする自覚はある。だって自分の使命はこの子のゲイ疑惑をまっさらにして婚約者の元に送り出すことだ。それとは反対の事をしている。
これで目覚めちゃったら責任取れないのに。
(でも約束だから……、実際キスしたら萎えるかもしれないし……)
幸太郎は少年の小さな唇に、自分の唇を口付けた。
触れ合うだけ、それ以上はしない。
一瞬にも満たない行為の後、身体を離し時嗣の様子を伺う。キスの後の時嗣はすぐにわかるほどむくれていた。
「……ご主人様?」
「短いっ!」
「えぇ……」
どうにかして勘弁してもらえないだろうかと考えていたが、時嗣は逃げられない様に用意周到にセリフを用意していた。
「大人がやる奴じゃないとやだ!やってくれないとさっきのキス、兄さんにバラすから」
「うっ……」
「幸太郎は僕の更生の為に買われたんでしょ? それなのに性癖を助長する行為はいけないと思うなあ」
「うぅ……」
コイツ自分から仕掛けてきたクセに痛いところを突いてきやがる。
仕方がない。実際男とのキスはノーカンみたいなものだし、ちゃっちゃと終わらせるか。
「……ちょっとだけですよ」
幸太郎は時嗣の頭を抱いて引き寄せると、もう一度その唇にキスをした。今度は一瞬ではなく、唇を軽く噛み、歯列を舌で割って、口腔の中に入り込む。
「っ……、ん……、」
舌をつんと突くと、その感触に時嗣の肩が軽く跳ねた。それから舌を絡み合わせる。小さな水音が部屋の中に響いた。力が入らないのかいつのまにか時嗣は幸太郎の背中に手を回して捕まっており、不覚にも可愛いだとか思ってしまう。
「……は、ぁ、」
顎の裏をなぞってやると、気持ちがいいのか甘い声が上がった。かぶりつくようにして舌を喉奥まで吸ってやる。そうすると下半身はゆるく勃ち上がってしまい、幸太郎は過剰に刺激してしまったと反省した。
「ん……、ぁ、あっ……!」
やがてイってしまったのか背中に回った手が落ちたので、幸太郎は片腕で時嗣の身体を支える。こんなものかなと唇を離すと、時嗣は完全に息が上がってしまっていた。
(やりすぎたなー……)
ほんのり赤く蕩けた表情になってしまった時嗣をベッドに横たえてやる。
「……これでいいですか? ご主人様」
「ん……」
時嗣は目線が合わず虚ろな表情になっている。大丈夫だろうかと顔の前で手を振ってみると、その口から聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。
「……やっぱり男の人が好きなのかな……」
ぼおっとしながら唇を指でなぞる時嗣に幸太郎はハッとする。いけない。ここで変に目覚めさせては。
「違いますよ。ほら、今、俺……女装してますし? あと俺は風俗通いで慣れてますから。だからそれはテクと視覚的刺激による生理現象であり、決してご主人様はゲイではありません」
「んー……」
納得したのかしてないのかはわからないが、心労もあったのか疲れて眠くなってしまったらしい時嗣に毛布をかけてやると、幸太郎はトントンと肩を撫でてやる。
「おやすみなさい、ご主人様」
どうかハマってくれませんように――、幸太郎は時嗣の頭を撫でて、そう願いながら、あわよくば今日の事は忘れてくれるようにと後処理の準備を始めた。
「よく頑張りましたね」
よしよしと頭を撫でると、時嗣はベッドに腰をかけて気持ちよさそうに頬を幸太郎の身体にすり寄せた。
ティーパーティが終わってすぐに自室に戻った時嗣は、幸太郎を連れてすぐにこうなってしまった。幸太郎はまだウィッグすら取ってはいない。だけど、それほど不快だったのだろう。今は主人のメンタルケアの方が優先だと判断し今に至る。
「……気持ち悪かった。あんなのと結婚するなんてありえない」
「大丈夫です。男なら勃とうと思えば勃ちます」
「じゃあ幸太郎はできるの」
「…………」
「ばか」
所謂美魔女ならそりゃ幸太郎だっていけただろうが、一之宮は見た目は痛々しく若作りしているおばさんだ。女優の様な美貌でもないし、スタイルも良くもない。幸太郎は自分では風俗でどんな外れを引いても抜けた事からストライク範囲が広いと思っているが、流石に一之宮は無理だった。セクハラショタコンババアじゃなきゃ別だったが、あの本性を見てから抜くのはやっぱりどう頑張っても難しい。 いや、やっぱり黙らせて脱がせたらいけるかもしれない。不埒な想像をしていると、時嗣は肩に頭をぐりぐりとし、甘えたような声で手を取った。
「ねえ、幸太郎。僕頑張ったよ。約束は?」
「約束……」
そうだ、と幸太郎は思い出す。
『じゃあご主人様が婚約者様とちゃんとお話しできたらキスしてあげます』
「……しましたね」
確かに約束した。しかもそれを餌にしてあの苦行を強いたまである。それを反故にするのは流石に可哀想だろう。
「ご主人様、本当にいいんですか? 俺、男ですよ」
「いいの!」
「…………じゃあ、目、瞑ってください」
大人しく目を瞑る時嗣に、恐る恐る唇を近づける。
今からヤバいことをする自覚はある。だって自分の使命はこの子のゲイ疑惑をまっさらにして婚約者の元に送り出すことだ。それとは反対の事をしている。
これで目覚めちゃったら責任取れないのに。
(でも約束だから……、実際キスしたら萎えるかもしれないし……)
幸太郎は少年の小さな唇に、自分の唇を口付けた。
触れ合うだけ、それ以上はしない。
一瞬にも満たない行為の後、身体を離し時嗣の様子を伺う。キスの後の時嗣はすぐにわかるほどむくれていた。
「……ご主人様?」
「短いっ!」
「えぇ……」
どうにかして勘弁してもらえないだろうかと考えていたが、時嗣は逃げられない様に用意周到にセリフを用意していた。
「大人がやる奴じゃないとやだ!やってくれないとさっきのキス、兄さんにバラすから」
「うっ……」
「幸太郎は僕の更生の為に買われたんでしょ? それなのに性癖を助長する行為はいけないと思うなあ」
「うぅ……」
コイツ自分から仕掛けてきたクセに痛いところを突いてきやがる。
仕方がない。実際男とのキスはノーカンみたいなものだし、ちゃっちゃと終わらせるか。
「……ちょっとだけですよ」
幸太郎は時嗣の頭を抱いて引き寄せると、もう一度その唇にキスをした。今度は一瞬ではなく、唇を軽く噛み、歯列を舌で割って、口腔の中に入り込む。
「っ……、ん……、」
舌をつんと突くと、その感触に時嗣の肩が軽く跳ねた。それから舌を絡み合わせる。小さな水音が部屋の中に響いた。力が入らないのかいつのまにか時嗣は幸太郎の背中に手を回して捕まっており、不覚にも可愛いだとか思ってしまう。
「……は、ぁ、」
顎の裏をなぞってやると、気持ちがいいのか甘い声が上がった。かぶりつくようにして舌を喉奥まで吸ってやる。そうすると下半身はゆるく勃ち上がってしまい、幸太郎は過剰に刺激してしまったと反省した。
「ん……、ぁ、あっ……!」
やがてイってしまったのか背中に回った手が落ちたので、幸太郎は片腕で時嗣の身体を支える。こんなものかなと唇を離すと、時嗣は完全に息が上がってしまっていた。
(やりすぎたなー……)
ほんのり赤く蕩けた表情になってしまった時嗣をベッドに横たえてやる。
「……これでいいですか? ご主人様」
「ん……」
時嗣は目線が合わず虚ろな表情になっている。大丈夫だろうかと顔の前で手を振ってみると、その口から聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。
「……やっぱり男の人が好きなのかな……」
ぼおっとしながら唇を指でなぞる時嗣に幸太郎はハッとする。いけない。ここで変に目覚めさせては。
「違いますよ。ほら、今、俺……女装してますし? あと俺は風俗通いで慣れてますから。だからそれはテクと視覚的刺激による生理現象であり、決してご主人様はゲイではありません」
「んー……」
納得したのかしてないのかはわからないが、心労もあったのか疲れて眠くなってしまったらしい時嗣に毛布をかけてやると、幸太郎はトントンと肩を撫でてやる。
「おやすみなさい、ご主人様」
どうかハマってくれませんように――、幸太郎は時嗣の頭を撫でて、そう願いながら、あわよくば今日の事は忘れてくれるようにと後処理の準備を始めた。
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