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第一話 若かれし頃の昴その一
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その昔、東京の峠を席捲した若きドライバーがいた。中島昴、当時18歳。チューニングショップ、グランプリの常連でバイト代の殆どを車のパーツ代で消えていく。今で言う表現だと、溶けていくという方がいいか分からないが、彼は、とことん車を走らすことが好きだった。軽のハルトNAの足回りとロールバーやスタビライザーを強化し、クロスミッションにまでした。コースに合わせ車種も変えるもう1台は、排気量1600ccシングルターボのマイナーメーカーのミスズ、ジミニRである。当時は日本ラリー選手権で、影のチャンピオンマシンとして名を馳せた。1600ccでノーマルマシンで180馬力というスペックであった。要はストリートレーサーであるハルトのスペックは、550cc54psという非力なマシン。彼は、非力なマシンで、ハイパワーマシンを上回りコースレコードを塗り替えることが好きだった。戦闘力はお世辞にも強くない。そんなマシンで、走り続けコースレコードを掠め取る。そんな彼には、ジムカーナで培ったテクニックと、センスがあったのだ。ジムカーナで出る時は必ずハルトで出る。旋回性が物を言う競技には、うってつけの車だからだ。パワーは要らない、ドライブテクニックのみで充分だった。2年目は、ハルトターボ660に乗り換え国内Cから、国内Bへの昇格をかけたラリーレースで、二位入賞し、中島昴の名は、ラリーレース界で、かなり有名になった。しかし、レースの表舞台から高校卒業と同時に、去って行った。彼が憧れていたミスズに、入社したからである。地元のディーラーとは言えメカニックの経験もありレース経験もある有望株を、会社は見逃さなかったのだ。中島昴は、営業部乗用車課に配属が決まり、東八王子営業所に決まった、最初の半年間はミスズ本社研修所で、営業の研修を受け次に整備研修を、受けた。その時チームミスズの監督に声をかけられ非常勤テストドライバーとしてスカウトされたのだ。展示会以外の土日と展示会の振替代休の日は、チームミスズの指定するテストコースを、走りメカニックに詳しく症状や改善点等を指示しまた走る基本的にはメインドライバーが好みそうな設定までセッティングして、あとの細かいところは、メインドライバーが指示を出す。昴は「どうも、他人の好みのセッティングって苦手なんだよな~」と、漏らす。メカニックリーダーは、「昴君のセッティングは好評ですよ!殆ど済ませてあるから、修正が少なくて済むと、1号車の日坂さんからお墨付きが出てますし。」昴は、「あれ以上いじったらただの暴れ馬になりますよ?」メカニックリーダーは、「それをわかるからこそ、テストドライバーにしたんですよ、うちの監督」昴は、「2号車のドライバーは、まだ決まってないんですか?」メカニックリーダーは、「一応目星は着いてるみたいですが、それが、新人さんらしくて、それも、女性コンビらしいとだけ聞いてないんです。」昴は「そうですか?ならテストドライバーは女性の方が良いですね?」と言うと「何言ってるんですか?昴さんが担当ですよ?」昴は「はぁ?何言ってるんですか?体つきや骨格がそもそも違うんだから、女性でしょ。」と切り返した。メカニックリーダーは、「そもそもテストドライバーは、現在昴さんだけですよ。」「レース経験は?ライセンスランクは?」と聞いた。メカニックリーダーは、「国内Bライセンスで、ラリー自体初挑戦だと聞きましたな~」」「てことは」と、昴は頭を回転させ「ダートトライアルの経験は?」メカニックリーダーは、「全くないとの事です。」昴は、「おいおい、ちょっと待って下さいよ?タイムコントロール区間なら、まだしも、ダートのSS区間で事故りますよ?」」メカニックリーダーは「ドライバーテクニックは、昴さんに似ているとの事ですが、今日この後、ご自分の車持ち込みで、ダート体験走行するようですよ?」」その時だった。「期待のルーキーが走るんだって?」と日坂さんが監督と現れた。日坂さんは、「よう!昴っちいつもありがとうな今回も修正箇所少なくて済んだわ。」昴は「恐縮です。日坂さん!変な癖ありませんでしたか?」日坂さんは「無い無いすげぇー走りやすかったぜ。」と言ってくれた。「なら良かったです。」日坂さんは、「そういや~お前ジムカーナ2連覇、ダートトライアル2連覇、全日本ラリーノーマル車K部門2連覇の猛者だろ?お前が2号車担当すればワンツー間違えないんじゃね?」昴は、「あんなモンスターマシン俺には扱えませんよ?ノーマル車に比べたら全日本のマシンは、スペックは2倍から3倍のパワーがありますからね。押さえつけるまで苦労したんすよ。」日坂さんは、「そうか?お前、4周で、あれを手なずけたじゃねぇか。」昴は、「それでも安全マージンは、殆どないっすよ。いつすっ飛ぶかヒヤヒヤもんですよ。」監督が「いよいよご登場みたいだぜ」現れたのは、ニッサンシルビアRsの峠仕様だった。昴は「まさか、あれで走るの?今日?」監督は、「昴お前のジムニーR持ってきてるよな?」昴は、「一応、持ってきてますが?」監督は「後ろついて走って、あいつらの弱点と改善点を洗い出し、俺に報告してくれないか?」昴が、「まずダートを舐めてますね峠仕様のRsを持ち込む当たり減点です。せめてタイヤだけでもラリータイヤ履かせてください。」「本人たちに伝える」と言って監督はPITに行った。日坂さんは、「前途多難だなアグレッサーも。」」昴は、「そんな契約してませんから日坂さんがやってくださいよ?」日坂さんは、「俺、感覚でしか教えられないから無理!」「ならせめて、ナビを日坂さんの相棒に、して走らせては?」と、昴が提案したが、「教習所の教官並の、ダメ出し食らっておじゃんだろうな?」と日坂さんは言った。昴は、「そんなんで潰れるくらいなら、いない方がチームの為ですよ。」日坂さんは「お前、怖い事言うよな?たまに!」と言うと「今年もチャンプ狙うんでしょ?チームミスズは、なら、スパルタでやらなきゃダメっすよ」」日坂さんは、「ならお前がセカンドマシンのパイロットやってくれよ。」と言う昴は、「ディーラーの仕事と重なった時どうするんです?援護出来ませんよ。」日坂さんは、「なら、いっちょ、鼻っ柱へし折ってきてくれや。」昴は渋々と、「了解です。」監督に「オーバーテイク出来たらしちゃても良いですか?」監督は、「まず十周は様子見で頼む後は煮るなり焼くなりして良し、、GOサインはボードで指示する。後、タイヤは変えないとさ。」」昴は「自殺志願者とは走りたくないですね。監督、ナビシート座ります?直に見た方がわかるでしょ?」監督は「いいのか?いつも相方しか乗せないと言っているのに。」昴は、「元全日本ラリーチャンプの方を乗せられるのは、光栄の極みですから。」監督は、「後で紹介する。」昴は、「了解です。」先行のRsが飛び出すように走り出した。昴は、「まじで馬鹿なんですか?あれじゃタイヤ持ちませんし、下手すればバーストの危険もありますよ?」監督は「確かに危なっかしいな。」昴は、「では、我々もいきますか?」監督は「頼むよ」と言うとタイヤを温めながら走り出した。後ろに着くが車間はかなり取っている。「いきなりサイドドリフトか?ジムカーナじゃないんだぜお嬢様方!」と慣性ドリフトでカバーする昴、次のコーナーが迫る昴は「あのまま、突っ込んだら、オーバースピードで、おしまいですよ。イナーシャルでもカバーしきれません」監督は「一旦止まろう」昴は、「ね~監督、あのRsのタイヤ、今金属っぽい光見えませんでした?」監督は「いや、見えなかったが?」昴は、3周過ぎたあたりで、その光を見逃さなかった昴はインカムで、PITに走行中止を進言した。アスファルト路面と違い、ダート路面は、タイヤが削れやすく、また、小石などを巻き上げダメージも大きい。その為、峠のドリフトとわけが違う。PITの指示を無視してるのか?Rsのドライバーは周回を重ねようとする目の前に横向きに車線を塞ぐジミニRを止め、車体から離れる昴と監督はレッドフラッグを振っている。走行中止の合図だ。Rsのドライバーは車を止め「なんで停めるんです?」と言っている傍から監督とメカニックリーダーは、タイヤを確認した。確かにラジアルタイヤのワイヤーが、飛び出していた。昴は、「タイヤのマージンも、確認できないやつに2号車は、任せられない、ノーマルラジアルタイヤで、走られたら、あとのテストに響く、直ぐにPITに帰り反省文のレポートと、タイヤ代払って消えろ!」と言った。そして、監督を乗せて、走り去る。ジミニRは、PITに戻って行った。納得がいかなかった、2号車候補のドライバーとナビは、日坂さんと、監督と、昴の会話に割って入ってきた「なんで止めたんですか?」「そうよ私達は、順調に走れてました。」昴は「君たちのタイヤを洗ってよく見たか?監督からラリータイヤに履き替えてくれと頼まれなかったか?それを無視してコースに出たアスファルトとダートでは、路面の条件が違う。ただの峠バトルなら、あれでもいいだろうがチームで、しかもプロで走る以上メインとサポートの役割があるそれを忘れて無謀な走りをした。プロ失格だ。」日坂さんは「監督の頼みは命令だ、オーダーだ、この意味わからないなら、プロを諦めて、峠バトルで遊んでな、お嬢様方!」監督は「普通に走れば帰れるようにタイヤ4本変えておいたから頭を冷やしてまた来なさい。その時は、練習車で、腕を磨けばいい。今はあの二人の言葉の、意味を考えなさい。」と監督はPITに行った。、昴は、コパイの青柳(あおやなぎ)さんに、マシンのセッティングデータを引き継ぎ、ロッカールームに向かう。どうやら先約がいるらしい。女性の、声だった。もちろん話題は、昴の悪口だった。昴は「後にするか、今入っていったら変態呼ばわりされてしまう。」とロッカールームを、後にしその場を後にした。チームラウンジには青柳さんと日坂さんが居た、日坂さん「あれ?帰らなかったんじゃないのかい?」青柳さんは、「いいデータが取れたよ有難うで、どうしたんだい。」昴は「いや、新人がロッカールームで、デブリーフィングしていましたので、体温めようかと、コーヒーを貰いに来ました。」青柳さんは「ああ~あの子達ね?」と無関心そうに言った。日坂さんは、「あのじゃじゃ馬っぷりじゃうち以外使ってくれるとこないわな。」昴は、「ウチでも使わない方がマシですね?本社の人なんですよね?」日坂さんは「あれ聞いてないの?お前のとこの営業部の子達だってよ?」青柳さんは、「今年入った新人らしいよ?」昴は、「はあ~?なんすかそれ?ディーラーの仕事は?営業所によっては展示会と被るし、フル参戦できないっすよね?」青柳さんは「なんでも、ディーラー本社付の女性営業部の娘達らしいよ?」昴は、「国立本社の女性営業部ってお飾りコンパニオンと呼ばれてる。あの部か?」日坂さんは、「そういやお前もう既にRV3台売ったんだって?それと、ジムニーも2台新人が脅威の最速実績挙げたって本社でも話題だぜ」昴は、「1台残して皆同期に、振り当てられましたがね。」と肘をついてテストコースを眺めた青柳さんは、「それ本当か?」と言った。昴は「本当っすよどんなに必死に頑張っても、こうも、トンビに持ってかれたんじゃ、やってられないっすよ、オマケに本社役員からの頼み(命令)じゃお手上げっす。出る杭は打たれるってこの事ですかね?」と、ぼやいた、昴は「ジミニを何台売ろうがRVを何台売ろうが手元には、1台しか残らない、転属希望しようかな?」と言った。日坂さんは、「監督に、お前から予備車買うようにたのんでやろうか?」と言った。来期から、ジミニIRフルタイム4WDが参戦ですよね。メーカー本社から与えられるメーカー直属のチームが何を言ってるんすか?」青柳さんは、「何でも、今のマシンの、1.5倍のパワーらしいよ」と言った。日坂さんは、「形状が丸っこくなったらしいな」と言った。昴は、「フルモデルチェンジでオプションワークスも増えてフロントラジエーターの部分のグリルにフォグランプを付けるみたいです。ターボクーラーのインテークは、形状を変えないみたいですが?」と話をしていると、監督が2人を連れてきた。監督が、「紹介しよう、南多摩ミスズ自動車で営業部に勤める川崎典子君と添田雪子君だ、昴は、何も言わず帽子を、深々と被り、猫背で、コーヒーを飲み干して立ち上がり「ロッカールームが空いたのなら使います。日坂さんと青柳さんも「同じく!」とふたり声を合わせて言って消えて行く。監督が「着替えたらまたここに集合な!」と言った。日坂さんは手を挙げて「他のふたりにも伝えておきますよ。監督のオーダーには逆らえないので。」と言って冷えきった体を温めるかのように、シャワーを浴びる3人であった
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