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幼馴染がうざいんだが!
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ここは、都立桑都高校は男女共学の普通の高校だ。偏差値も普通。大抵滑り止めで入ってくる奴らが多い学校だ。あえてこの学校を選んだのは中学のクラスの奴らが誰も選ばないと思ったからで、独り静かに普通の高校生を満喫したかったからだ。自己紹介したところで誰ともつるむ気がない俺としては適当に「佐久間涼、よろしくっす。以上!」と短く挨拶をして席に座り俯いた。周りからどう思われようが、気にしない、する気もない、したところで、意味などない。入学初日からぼっちオーラを全開にして自分の周りの音を遮断した。いつからこんな卑屈な男になったのか? 小学生の後半からだ。クラスでいじめが流行り、標的にされまいとした時からだった。空気のように己の存在を隠し、陰で立ちはだかる敵をことごとく粉砕してきた。自分に降りかかる火の粉を、陰で振り払いながら生きてきた。そんな俺に友達と呼べるものなど居ない、そう信じてきた。だが、一人だけやたらと、昔からまとわりつく奴がいた。そいつの名は桜木みちる。幼稚園から、ずっと俺にまとわりつくあいつの頭なら進学高校だって、何ら問題なく上位に入れる才色兼備を地で行く奴だ。わざわざこんな平均的な学校に来ることはないのに、なんであいつがこの学校を選んだのか? 皆目見当も付かない。しかも入学早々同じクラスで席も隣だった。桜木みちるは「また、同じ学校で、同じクラスだね。またよろしくね」と笑顔で話しかけてきた。俺は、「桜木、お前何考えてる、俺に話しかけるな、あと、まとわりつくな!誰も選ばないところを俺は選んで入ったのに、これは何の嫌がらせだ?」桜木は、「君、少し自意識過剰なんじゃない?」と言った。俺は「なら、話しかけるな!」と言って席を立ち去った。廊下を歩いていると、とがった感じの先輩と肩がぶつかった。先輩は「おいそこの1年、今肩がぶつかったんだが?謝りのひとつもないのかよ?」俺は、「あっ、肩がぶつかりました?すみません。」先輩は、大げさに「いてぇ~、すげ~いてぇ~これ肩折れたかも?」俺は、眼光鋭く「折れてたら普通、肩なんか回せませんよ?それでも折れたと言うんですか?」と睨みつけた。先輩は怒りのままに怒鳴りつけてきた。「1年のくせに生意気な奴だな、ぶっとばされたいのか?あぁ~?」と言い放った。俺は、睨みながら「そんだけ虚勢を張れるなら肩は折れてませんよね?」と言った。先輩は「お前、ツラ貸せや!」と言い校舎裏に連れていかれた。そこには、先輩の取り巻きと、舎弟がいた。ざっと数えても10人は、居るだろう?面々の顔を見て、俺は、「これだけでいいんすか?もっと舎弟を呼んでもいいんすよ?その方が、一掃出来て、後々、楽なんで」と言い放った。先輩は「余裕かましてんじゃねーよ!小僧今から新入生歓迎のリンチタイムだ!」よく周りを見渡すと、何人かガリ勉風の奴らが気絶している。俺は「なるほど!弱そうなやつを見つけて、フルボッコにして金を巻き上げるつもりですか?パシリに使う気ですか?それで俺TUEEEEアピールっすか?ご苦労なことですね。」先輩は余計に頭に血が上り「こいつを潰しちまえ!」と号令をかけ舎弟達が一斉に飛びかかって来た。その時、常に前に進みながら、しばき倒す佐久間の技は、流れる様な、足さばきと、まるでダンスを踊るかのように体さばきでいなしては無力化していく、そして最後に、「先輩?あんたで最後になりましたが、肩折れてるんでしたっけ?何なら本当に肩折って差し上げましょうか?」と不敵な笑みを浮かべ、ジリジリと近づいていく、悪い夢でも見ているかのように、先輩は棒立ちになってしまった。俺は「何か言えよ。俺を潰すんだろ?さっきの威勢はどうした?」先輩は「お前八王子西中の佐久間涼か?」と聞いてきたので「確かに八西中の佐久間って奴は俺一人しかいないわな。それがどうした?」先輩の顔から血の気が引いていく俺にとっては黒歴史だ。八王子西中は、進学校ではあるが、平穏に生徒達が過ごせたのは、独りの防波堤が居たからだ。そいつの名は佐久間涼である。俺が暴れればそこらの半グレ連中はビビる。手出ししなければ凪いだ海の様に静かになると言われる程である。上級生だろうが何だろうが容赦なく、男だろうが女だろうが関係なく病院送りにすると言われた伝説のバトルジャンキーと恐れられた存在が、今先輩の目の前に立っている静かに、そして確かに先輩の耳元で「左肩でしたっけ?折れたの?何なら右肩も折りましょうか?」と囁いた俺の顔には、不敵な笑みが浮かべられていた。流石の先輩も口をパクパクと動かしながらとてつもないやつに絡んでしまったと後悔していた。その時右肩から鈍い音と共に激痛が走った。俺は宣言どおり先輩の右肩をへし折っていた。俺は「本当に肩を折られた感想は?何なら左の肩もマジで折りましょうか?本当は折れてませんよね?この際だから折っておきましょうよ?」と言いながら、また鈍い音と共に激痛が走り悶絶する先輩を見て、悪に対して絶対悪をもって相手をねじ伏せ、恐怖を植え付ける。そして、相手を屈服させる。これが佐久間涼と言う男だった。その場でゴロゴロと呻き声と共に悶絶する相手に「いじめ楽しいですか?俺は張り合いがなくてつまらなかったですよ?無駄な時間返してくださいね?じゃあ失礼します。」俺は、校舎裏を後にして校門に向かって歩いていた。その時、後ろから駆け寄る桜木が居た。すごい顔で迫ってきた。「涼~!また隠れてやらかしたわね!」とガキの頃からそうだ。喧嘩と聞くとすごく怒ってくるのだ。俺は「今回は正当防衛もしくは過剰防衛なんだが?」と言いつつひらりと避けた。「それでも入学初日からやることじゃないよね?」と絡んでくる桜木みちるのウザさはここにある。俺は「心外だな!俺は自分の身を守っただけだ!ちゃんとした理由がある!」みちるは「言い訳無用!」と言った。俺も「いい加減にしろよ?喧嘩だ、戦争だに正義なんてもんはねえんだよ!要はやるかやられるか?それだけだし、相手が先に手を出してきた。立派な大義名分があり、俺の貴重な時間を侵害された。立派な正当防衛だろうがよ?」みちるは「それでも怪我を負わせる行為は、禁止!警察に捕まるんだよ?」俺は「捕まるのは俺であってお前じゃないだろうが、優等生さんよ!俺に構うな、ウザい!まとわり付くな!気持ち悪い!それに、お前には関係無い!ほっといてくれ!」本心吐き出した。みちるはその言葉に泣き出しそうになっていた。「幼馴染を心配したらだめなの?今まで仲良くしてきたつもりなのにダメなの?」としつこいお友達アピールが俺には、耐えがたい苦痛でしかなかった。俺は「あぁダメだね俺に関わるとろくな目に遭わないぞ!俺は静かにそれでいて、一人でいたいんだ!それを毎度毎度ぶち壊されて腹が立つ!ネームドキャラがモブに絡むな!迷惑なんだよ」と言って立ち去った。自覚はしている。ここまで、人を拒絶し桜木を孤立させまいという心を踏みにじる俺は、人間失格で最低なクズ男なのは分かっているが、優しさは時として仇となるから、あいつは俺から離れた方がいいのだ。そして俺はクラスの片隅で空気になっている方が幸せだということも。なのに絡みついてくる。ただの幼馴染だということだけで!俺は「幼馴染なんてただの赤の他人じゃねぇ~か?」と言った。次の日から、クラスには佐久間涼の姿はなかった。いつもそうだ。自分の居場所がなくなれば姿をくらまし、野辺山の天文台の近くの山小屋に逃げ込む。ここは桜木も知らない遠くて一番宇宙に近い場所だった。高校の勉強は、野辺山天文台の観測班の人達からそして、オンデマンドで習って居た理解は深く、天文学、生物学、化学は大学生級の知識があった。それに伴い数学も自動的に学んでいたのだ。人気のない山小屋には、プライベートな天文台があり、半年分の食料と沢から引いた飲み水もある。なくなれば街まで下り、食料を調達し、ひたすら籠もった。携帯には、桜木からメッセージが届くが既読スルーし、あまりにもうるさいのでブロックした。遂には、学校から電話だ?流石に出るしかないだろう。俺は「もしもし佐久間です!」担任はなんて言ったかな?覚えていない。「都立桑都高校1-3組の担任の」まで聞いたが最後まで聞かず遮って「何かごようでしょうか?退学書類は家の者に頼んで出してもらってますが?ご用がないならこれで!」と言って電話を切る。その次の瞬間、着信拒否する。俺は一人の時間を、ゆっくりと楽しみたい。授業は、ちゃんと受けてはいる。試験はOCR方式で受けている。金は、スマホアプリの開発とスマホゲームの収入で、何とか生計を立てている。とにかく、自分のやりたいことをやり、新作ゲームコンテンツを立ち上げ、やりくりし、ナレーターも兼任して、ただの山小屋から、地下2階、地上2階建ての家を建てた。もちろん、天文台の観測の邪魔にならないように地上階はほぼ窓を少なめにし、天文台側に光が漏れないように、全面を壁にし、また、厳重に外に光が漏れないよう外壁にも留意して作った。「よし!これで、天文台の人達にも迷惑はかからないし2階は、天文室も出来たし、1階は居住区と、地下1階はレコーディングブースになった地下2階は、半分に分けて汚水処理循環設備と生ゴミなどを分解した時に出る熱などを利用した小型有機加工発電で、電気代は、割安になる!ナイスアイデアだ!あとは冬場は雪が積もるから貯水タンクと濾過装置と電気を貯める蓄電池を設置して一応電話線は引き込んで、足りなくなった電気は既存の電力会社との契約で賄う!あとは、あまり太陽光は好きじゃないが有機加工発電だけじゃ弱いから壁面に沿って設置して、何か秘密基地っぽくなってきた。これ楽しい!」などと、子供心をくすぐる思い描いたものが完成した瞬間というのは、嬉しいものだ。有機加工発電はおがくずと混ぜて肥料にもなる、さらに溜まった便等も混ぜれば効率よく熱を発するため、発電効率が上がる。濾過装置も上手く働き、生活用水や家庭菜園等にも使え実質水道代は、1000円ちょっと。電気代に関しては基本料以外はほぼ0。お湯は有機加工発電で使われる熱と濾過装置から作られた水を利用した風呂。湯船は檜の浴槽。加工に使われた木から出たおがくずは勿論、有機加工発電の材料として地下2階のゴミ処理室に投入。ゴミの空き缶やペットボトルはもうひとつの処理室で外側の塗料を溶かし、アルミやスチールにしてアルミと鉄に分けプレスして鉄くず屋さんに売りに出す。ペットボトルは粉砕機で細かくペレット状にして加工業者に売る。紙はシュレッダーにかけて古紙屋に売る。リサイクル、リユース、リデュースに特化した未来思考の家であり、研究室であり工房でもある。目に見えない微生物さえも活用し、プログラムなどの開発も行い、電化製品等の修理も行い活用し、最終目標は、水やゴミなどを燃料とし快適に過ごせる生活環境をガジェットとして世に出す。ぼっちだから出来る発想と、工夫、資源の乏しい国だから創意工夫して生み出せる可能性の産物もある。こっちに越してきて思いついた物は片っ端からやってみる。最小限の人との関わりだけで、後は独りで研究し、人脈はなくとも、研究に興味がある人をネットで募り意見を交わす、こんな最高の環境がここにはある!俺の人生最高の空間そんな幻想を描いた時期もありました。現実は厳しく、問題は山積み。火災や災害の時はどうするのか?等プレゼンの企画書作りだの、知的所有権は?とか、特許権は?とか、色々ある。そんな時間に追われる日々、世の中はGWに突入した。ある日インターホンが鳴る俺は低い声で「はい?どちら様ですか?」と聞く。理由は簡単だった。またあのクソメス、どうやってここを嗅ぎつけた!桜木みちるだ!本当に忌々しい!「こちらは佐久間涼さんのお宅であってますでしょうか?」俺は演技を続けた「はて?そんな人は知りませんここは野辺山ガジェット研究所です。その佐久間さん?という方は当研究所にはおりませんが?」みちるは、「ほう~演技してもわかってるんだよ。ここはあんたの別荘で、最近改築したのも!入学以来、学校にも来ないで何やってるのよ?」俺は、「あぁ~君!あまり乱暴に、門を開けようとしないでくれないか?本当にここには佐久間涼なる人物は、存在しないのだよ。私はただの研究者でね?大星匠と言うのだよ。だから、佐久間と言う人は知らんのだ。力になれずすまんね。私は研究に没頭したいので失礼するよ」みちるは、「いいから開けなさいよ!」と人の話も聞かず門を壊さんとしている仕方が無いので警察に通報した。パトカーのサイレンが、無情に鳴り響きみちるは、警察署に連行されて行った。これで、また、静かな日常が、戻ってくる天体ドームの隅から外を覗き吐き捨てるように「本当にあいつウザイ!もう二度とここに来るな!」と言った。
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