異世界で神が認めたシェフになる

ジェル

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第1章

小さな村の大きな問題4

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私は森を目指して走った。裸足で駆け出してきたので、足は所々血が出ていたがそんなことはどうでもよかった。

(私が、あんなことを話したから2人は…)

私は自分が嫌いになりそうだった。私の魔法は少しの風魔法だけ。村を救う力もない。2人に満足におもてなしもできてない。それなのに竜のところに向かった2人を引き止めることすらできなかった。

私は祭壇の近くまでようやくやってきた。

するとそこでは、空を飛ぶ竜がいた。
私は急に怖くなり、足を止めた。


そして、最悪の光景が目に入ってきた。

竜が飛翔しているその真下では、泣きそうになっているシロと、そして、

地面に倒れふしたソラがいた。






「っっぅがはぁ!」

俺はまた地面に叩きつけられた。

「兄さん、これ以上落とされたら流石に死ぬわよ。すでに2回も失敗してるのよ。やめましょう。」

「…た、頼む、…もう少しで届きそうなんだ。俺が……ここで諦めたら…またあの人は1人で頑張ろうとする。あんな………寂しい顔は…見たくない。」

『こ、小僧、いい加減諦めろ。何度やっても同じだ。これが力の差なのだ。種族の差だ』

「うぅるせぇぇぇぇっ!そんなものの差なんか何度だって超えてやるよっ!おれは、俺以外の2人の命を背負ってんだ。何も背負うものがないお前にっ!負けるわけねーだろっ!」







私は涙を流していた。
決して怖いからではなく、罪悪感からでもない。

嬉しかったからだ。

ソラさんが私の抱えてきたものを、一緒に背負おうとしている。私の命を背負おうとしてくれてる。

それは初めての事だった。

村人のみんなも冷たかったわけではない。
時には優しくしてくれたこともあった。
しかし、竜が出てきてからというものみんな、その圧倒的な力の前にいる私を遠ざけた。

でも、ソラさんはその力と対峙してなお、私のすべてを背負おうとしてくれている。

私も、出来ることはあまりないけど、ソラさんの力になりたい。

私は勇気を振り絞った。




「シロ、もう一回飛ばせっ!」

「っ!……わかったわ、兄さん。私は何度だって背中を押してあげる。
だから、兄さんは何度だって手を伸ばしなさい。
離したくないものがあるのなら。」

シロは再度、俺に膜を張り、そこにしたから湧き出るように水を押し上げた。

さっきより勢いがいい。ブレスも今のところ膜で防げている。しかし、


…やはり、届かないのか

あと少しで舞姫の間合いに入るのにという時だった。

俺の背中を優しく風が押した。

その暖かく優しい風の声をおれは聞いた。

……1人で背負おうとしないで、あなたの後ろにはシロさんと私がいますから…

その風によって、火竜の頭が間合いに入った。

『ば、ばかなぁ。この高さだぞ。人間ごときに到達できる高さではない!』

…行って、兄さん

…ソラさん、行ってください

「うぉぉぉぉっ!」

…とどけぇぇ!

俺は1番硬いと言われる火竜の角目掛けて舞姫を魔力を込めて振り抜いた。

舞姫はまるで聖剣のように赤く輝きながら竜の角を断ち切った。


その瞬間俺は、緊張の糸が切れたのか、落下していく中で意識を失った。



新しい称号を獲得

《明日に手を伸ばす者》




俺は、気がつくと知らない部屋で目が覚めた。
どこだかわからなかったが、起き上がろうにも身体が痛くて起きられない。首を下に向けて自分の体を見るとなんとほとんどミイラみたいな状態だった。無事なのは手と首から上くらいで包帯がないため動けるが、あとは全て動かせなかった。

声を出そうと思って息を吸い込んだとき、

だれかが入ってきたが、吸い込みすぎた息が行き場所をなくして、おれはむせた。

ゴホッ、ゴホゴホ、

「起きたんですね、ソラさん。その、大丈夫ですか?」

俺はむせたことで涙目になり、大変かっこ悪い顔をアリアさんに見せてしまった。

「大丈夫だ、ただむせただけだ。」

…そうか、おれ竜と戦ってたんだな

それを思い出した俺はアリアさんに倒れた後の出来事を聞いた。アリアがあの場にいたことに驚いたが…


おれは意識を失ったあと、体をアリアさんの風とシロの水がクッションになり、なんとか、勢いを殺し、無事に助けられた。






私はすぐにソラさんの元へ駆け出し、彼を抱きとめる。

「ホントに無茶ばかりやる兄さんなんだから。」

「シロさんもありがとうございます。私なんかのために。」

「なんか、なんて言わないことね。兄さんはあなただから助けたのよ。わ、私は別に、ご飯のお礼をしてあげただけだから。」

「ふふっ。そうですか。」


そこへ角の折れた赤竜が降りてきた。

『そこの人間の女、お前は誰だ』

「私は、あなたへの生け贄です。
私は食べてもいいですから、どうか2人は助けてくれませんか。」

『…お前は、我が怖くないのか。』

「…こわいですよ。でも、私の命を救おうとしてくれた2人が命を張ってくれた…。今度は私の番です。」

『なるほどぉ。たしかにそこに倒れておる小僧の言ったことは何一つ間違っていなかった。おい、シロとかいう娘、小僧が起きたら伝えておけ。

お前は我のかけにかった。だから今は約束通り、人間どもを見逃しておいてやるとなっ。他は知らんがお主ら3人なら人間の中でも多少は信頼できるからな…。次に会う時は食わせてもらうぞ。いまだに鳴く腹の虫を収める美味い料理とやらをっ!』

そう言って、竜は折れた角をその場に残し、また、山へと帰っていった。





「そうか、あの竜、約束を守ってくれるのか…
案外、いいやつだったのかもしれないなぁ。」

「そうですか?いえ、そうかもしれません。」

…もし、食べに来てくれるなら作ってやるか
火竜あいつのための料理を



「と、ところでソラさん。」

「なんだ、あらたまって。あ、別に恩を返すとかいらないから。」

「い、いえ そういうわけにはいきません。私が大切にしてきたものを渡します。」


そういうとアリアさんは、意を決したように、俺の両頬に手を添え引き寄せると、そのまま唇を塞いだ。

俺ははじめてのキスに目を瞑ることも忘れていたが、やがて目を閉じ、受け入れた。

「…んっ…はぁ。ソラさん、どうでしたか。」

「なんというか、ビックリして分からん。」

「な、なら仕方ないですね」

そう言ってアリアさんはもう一度さっきよりも長いキスをしてくれた。

「…んんっ、…はぁっ…。どうでした。」

「な、なんていうか、アリアさんの優しい味がしました。」

「そ、そうですか。それは良かったです。あと、さんはいらないです。ただのアリアってよんでください。」

「そ、そうか。俺もソラでいいぞっ。
なあ、アリア。お、俺なんかでよかったのか。その、大切に守ってきたんだろ?」

「なんかではなく、だからですよ。私はソラだからしたんです。」

「そ、そうか。ありがとうっ。おれは期待に応えられたか?」

「そ、そうですね…。とても…き、気持ちよかったです///」

2人の顔は真っ赤だった。
そんな俺たちは顔を上げるとお互いに目が合ってしまい、どことなく笑みがこぼれた。

アリアが見せた笑みは、2つの世界を見てきた俺にとって、誰よりも、どんなものよりも綺麗だった。

まるで、野にあっても埋もれず、必死に咲こうとする様はまるで



一輪の花アリア』だった。




「アリア、そろそろ交代の時間よ。
あれ、兄さんっ!起きたのっ!」

「えっ!ああ、まだ、あまり動けないけどなぁ。
迷惑かけたな、お前がいなかったら死んでたよ。」

「べ、別に大したことはしてないわよ。兄さん、起きたのならご飯作ってよ私、テーブルで待ってるから。」

「おいっ!まてこらっ!話聞いてたのか」


あいつ、ドアをすぐ閉めて行きやがった。


「ふふっ、本当に2人を見てると楽しいですね。」

「そうか?まあ、楽しんでくれるならいいか」

俺は、気になってることをアリアに聞いた。

「なぁ、アリア。お前はこれからどうする?この村に残るのか?」

「ソラやシロはどうするのですか?」

「俺たちはもう少ししたら村を出て、町に向かう。
そしていづれはどこか住みやすい町で店を開きたい。
アリア、もしよかったら…」

「はい、何処へでもついていきますよ。」

「いいのか。そんなすぐに決めて。俺たちとくると危険なことがいっぱいあるかもしれないんだぞ。」

「かまいません。私ははれて自由の身なので、私のやりたいようにやります。
それに、」

…私のすべてを背負ってくれますよね。

そう言って、アリアは部屋を出て行った。

おれは、悟った。

…女の子って強いな。


そうして、おれは新しく称号を手に入れた。

《アリアの想い人》




その頃、部屋を出た私は、自分の言ったことに顔が熱を帯びていくのがわかった。

…私、なんて大胆なことをしてしまったのでしょう。
気持ちが抑えられませんでした。

もっとソラと話したい。

もっとソラを知りたい。

もっとソラとキスしたい。

そんなことばかり考えてしまいます。


すると、シロが声をかけてきました。

「アリア、なんか嬉しそう…。」

「そ、そうですか?たしかに幸せですけど…」

「そうね、今の方がステキねっ。」

私はとても嬉しかった。あらためて私はこの2人についていこうと決め、また明日へと歩みを進めるのだった。

アリアの称号を獲得

《勇気ある者》、《枯れない心》、《優しき愛を育む者》、《豊穣神》、《ソラの想い人》、《シロの愛したシェフ》、《純潔な心》

アリアへの加護を確認。

…全能神の加護






そのころ、天界では、

「おじいちゃん。あの子に加護をあげちゃって良かったの?」

「ん?いいんじゃよ。あの子はソラたちとずっと一緒にいるといっておったから。加護をあげて神族にしたんじゃ。
それに、シロが食べるほどの野菜を作るほどじゃぞ。
きっと美味しいに決まっておる。」

「なるほどぉ~、じいちゃん頭いい~」


…ソラたちよ。お主たちはなかなかに面白いものを見せてくれそうじゃ。

これは、もうしばらく目が離せんのうっ!

こうして、神たちもソラたち3人の出会いを見守るのであった。




    アリア編 完



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