最期なら、君を守って死にたい

飴乃しずく

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本編

雨の降る心

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みゆきの章



外では相変わらず雨が降っている。

みゆきの暗い心には、心做しか先刻より一段と激しくなったようにさえ見えた。

みゆきは自室で電気もつけず、机に突っ伏していた。

目を閉じた。

さあさあと、ざあざあと。

聞こえるのは雨の音だけで。

思い出したくもない忌々しい記憶が蘇ってーー。

♢

そう。

村上レイは、気の弱いお人好しの少女だった。

まいとみゆきの、かけがえのない友達だった。


だったーーというのは、彼女が今どこでどうなっているのか、知るものが誰もいないからだ。

彼女は優しかった。
どこまでも優しかった。
優しすぎた。
聖人の如く、仏の如く。

それがーー

気持ち悪かった。

身体が全力で彼女を拒否した。

それでも、最初の方はまだ彼女との関係を崩さぬよう、努力していた。

友達、だったから。

同じく友達だったまいとの関係も、保っていたかったから。

でも、ある日。

我慢が出来なくなった。

きっかけは忘れたけれど、あの日、なにかが起こって。

衝動が押し寄せて。

心がどす黒い感情に支配されて。

気が付いたらみゆきはレイを階段から突き落としていた。

骨折、全治6ヶ月。

それなのに。

ああ、それなのに。

レイは病室でみゆきに言った。

「転んじゃったんだよね? 大丈夫?」

「みゆきが無事ならよかったぁ」

「あたし? あたしなら平気!」

「心配しないで大丈夫だよぉ、みゆきは優しいなぁ」

屈託のない笑顔で。

人を疑うことを知らない目で。

自分の心の汚さが、自己嫌悪が、押し寄せてきた。

思わず吐いた。

だからその日、みゆきは決意した。

この気持ち悪いものを、村上レイを、

私の前から消し去ってしまおうと。
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