番じゃない僕らの恋~俺の唯一だった君~

伊織

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第1章

17 君に届いた、俺の想い

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 その日の帰り道。
 辺りはもう、すっかり暗くなっていた。

「陽、広瀬先輩に告白されたって、本当?」

 陽が驚いたようにこちらを見る。

「…誰かから聞いたのか?…本当だよ」

 なぜか、陽から泣きそうな雰囲気を感じた。

「陽は、どうするの?」

「断ろうと思ってるよ。先輩は、先輩だし…」

「先輩に、まだ返事してないのは…どうして?」
 
 (もしかして、本当は先輩が好きなんじゃ…)

「それは…。でも、ちゃんと断ろうと思ってるから」

 先輩のことを好きじゃないなら、早く断ってほしい…。
 けれど、陽が返事を先延ばしにしている理由が、俺には分からない。

「それより、蓮、…次のヒートのことなんだけどさ…」

「あ、あぁ。もうすぐだね。体調悪いなと思ったら、すぐ連絡して? すぐに行くから」

「そのことなんだけどさ、…蓮にお願いするのは、もうやめようかな、って思ってる」

 ——衝撃だった。
 なんで…
 やっぱり先輩の告白を受ける気なのか?
 それで…

「急に…どうして」

 なんとか声を絞り出した。

「急にじゃなくて…ずっと、考えてて。やっぱりヒートの相手なんて悪いなって、そう思ったんだ」

「そんなこと、思わなくて良いよ」

「蓮の、そういう優しいとこ…好きだよ。でも、やっぱり、こういうのは良くないから」

「俺は、そう思ってない。……陽に頼ってもらえるだけで、嬉しかったよ?
 もう俺は…必要じゃない?」
 
 自分で言っておいて、胸が重くなった。

「そういうわけじゃ…」と、陽はいったん口を閉じた。そして、ゆっくりとまた話し出した。

「もし…蓮に、…この先、好きな人が出来たとして。
 もし、俺がまだ蓮に、ヒートの相手を頼っていたとして。…その時に、俺が蓮の負担になってたら、嫌だなって。
 …そう考えたら、施設に行くことなんか、全然怖いことじゃないなって、…そう、思ったんだ」

 陽はぽつりぽつりと話す。
 声は、微かに震えていた。

「……嘘だ。泣いてる」

 街灯に照らされた陽の頬を、涙が伝っていた。

「でも、本心だから」

 立ち止まった陽が、俺をまっすぐ見つめて言った。目は…潤んでいた。

 陽の声に、迷いはなかった。
 そんな陽の姿が、胸の奥を締めつける。

「…陽の気持ちは分かったよ。…今度は、俺の気持ちを話すね。」

 陽が涙拭いて、静かにうなずく。

「陽が施設に行くって知った時、俺は”不安なら俺を頼ってほしい”って言ったけど…。
 あの時、俺は自分のことしか考えてなかったんだ。」

 陽が分からないという感じに首を傾げ、こちらを見る。

 「他の誰かが陽に触れるなんて、考えられなかった。
 俺が、陽を誰にも渡したくなかったんだ」

 俺は、陽の手をそっと取った。
 指が、わずかに震えた。

「……好きなんだ、陽のことが」

 そのまま、ぽつりと落ちるように自然と言葉が出た。

 陽の目が、俺をまっすぐに見つめていた。
 涙は、もう引いていた。

「負担なんて、一度も思ったこと無い。」

 陽は何か言いかけたが、口をつぐんだ。

「返事は、今じゃなくていい。
 でも、次のヒートの相手も……俺にしてほしい」

 その時だった。

 陽の頬が、ふわりと赤く染まった。

「……」

 言葉はない。
 けれど、目を逸らすように俯いた陽の耳までが赤くなっている。

 それが嬉しくて。
 思わず、口元が緩んだ。

 陽の中に、俺の想いがちゃんと届いた。
 そう、感じた。
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