番じゃない僕らの恋~俺の唯一だった君~

伊織

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第1章

16 君の気持ちが、分からない

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 俺は、間接的にでも「好きだ」と陽に言われて、浮かれすぎていたのかもしれない。

 日曜の朝、いつも通りに陽と走ったあと——

「次の土日は、蓮の大会もあるし、走るのは無しにするか。大会、頑張れよ」

「ありがとう。じゃあ、陽も部活の後はゆっくり休んでね」

 陽は、俺がいない日は走るのをやめて、別の自主練をしてくれていた。

「あ、俺は広瀬先輩から『次の日曜、部活の後に会える?』ってメッセージきてて。そのまま先輩と遊ぶかも」

「……そうなんだ、先輩と…」

 いくら「好きだ」って言われるようになったって、俺たちは本当の恋人じゃない。

 俺に、陽が先輩と遊ぶのを止める権利なんてない。

「あとさ、これから日曜に走るの、やめようと思ってるんだ。
 だから蓮も、これからは部活の後、好きにしていいから。今までありがとな」

「それは、陽が決めたならいいけど……何かあったの?」

 まさか、毎週、先輩と会うわけじゃないよな……?

「いや、別に。——蓮、もう帰ろ」

 陽が何を考えているのか、また分からなくなった。

 ****

 日曜の夕方。大会が終わってから、俺は陽にメッセージを送った。

 でも、既読にならない。

 先輩と遊んでいて気付かないのかもしれない。でも…

 家に帰ってきて、外から陽の部屋を見上げたけど、明かりはついていなかった。
 まだ帰ってきてないのか…。
 メッセージも、まだ既読にならない。
 俺は着替えて、「ちょっと外出てくる」と親に伝えた。

 日が落ちるのが早くなってきて、外はもう薄暗かった。

 とりあえず、駅の方へ歩き出したけど、すぐ近くの公園で陽を見つけた。
 ひとりで、ベンチに座っていた。
 少しうつむいていた陽は、俺に気づかない。
 俺は近づいて声をかけた。

「陽? 大丈夫か?」

「あ……蓮。大会、終わったのか。お疲れさま」

「うん、ありがとう。ぼーっとしてたけど……元気ないな。先輩は、一緒じゃないの?」

 陽が、少しだけうろたえた。

「……先輩は、帰ったよ」

「……なんか、あった? 無理に聞かないけど、話してくれるなら聞くよ」

 陽は一瞬だけ、俺を見た。でもすぐ目をそらして、口を閉じた。

「何もないよ。蓮、疲れてるだろ。帰ろ」

 そう明るく言って、陽は微笑んでみせた。
 でも、いつもより濃く香るアルファのフェロモンが気になった。

 ……先輩と一緒にいたから、だよな?

 ****

 翌朝の陽は、ずっと心ここにあらずだった。
 会話をしても返事はくれる。でもずっと、何か悩んでいるような顔をしていた。
 やっぱり、先輩と何かあったのか?
 
 陽のそんな状態は、数日間続いていた。

「なぁ御門。さっき3階に行ってきたんだけどさ、広瀬先輩が告白したって騒がれてて……知ってたか?」

 昼休み、水瀬から伝えられたその言葉に、俺は言葉を失った。
 前の席の間宮も「マジか」と目を見開く。

「知らなかったんだな。陽くん、まだ返事してないらしいけど……」

 あの日——陽の様子が変だった日。きっと、公園で告白されたんだ。
 まだ返事してないってことは、付き合うか悩んでるってことか……?
 もしかして、もう先輩を好きになったのか……?

「御門、陽くんと良い感じなんじゃなかったのか?
 毎日、”好きだ”って言い合ってたんだろ?」

「…毎日ではないけど。それに、あれは、褒め言葉の”好き”で……」

「でも陽くん、御門といる時、すごく幸せそうな顔して、御門のこと見てるけどね」

「まぁ、先輩が相手だと……自信なくなるのも分かるけどな。でも、まだ返事してないならチャンスあるんじゃね?」

「……本当に、そう思うか?」

「まぁ、あとは御門が、どうするかだろ?」
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