番じゃない僕らの恋~俺の唯一だった君~

伊織

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第2章

6 君の隣を守るために

 年が明けて、学校が始まった。

 陽と、四回目のヒートも無事に終わって――
 俺は、今、とても幸せだと思っている。

 今はまた大会に向けて、
 遅くまで練習が続く毎日だ。

 図書室で待つと言ってた陽は、
 迎えに行くと、時々寝ていて図書委員に注意されていた。

「大会だけど、見に来られるの、嫌だったりする?」

「え、嫌じゃないよ。緊張するけど……来てくれたら嬉しい」

「緊張すんの?」

「そりゃ…カッコいいとこ見せたいし、
 負けて落ち込んでる所なんか、見せたくない」

「そんな気にしなくて良いよ」

「気にしなくてって……。好きな子には、そうなるんだよ」

 陽は俺をなんだと思ってるんだ……。
 でも、言ってから自覚したのか、顔を赤くする陽。

「じゃあ、……カッコいいとこ、見せろよ」

 今度は俺の顔が赤くなる番だった。

 ****

 大会当日。
 陽から「頑張れよ!」というメッセージは届いていたけど、
 まだ姿を見つけられていない。

 そのまま自分の順番が来て、
 俺は、ただ的に当てることだけに集中した。

 ――的中。
 次の試合へ進めることになった。

 ふと周りを見回すと、観客席に陽がいた。
 どうやら、同じクラスの友達と来たみたいだ。

 陽は俺に向かって手を振り、
 俺が小さく振り返すと、拍手のジェスチャーをする。

 ……もしかして、今の見ててくれた?

 そう思ったとき、
 陽が、隣の男子に話しかけた。

 俺は血が逆流したかと思った。

 ……そいつ、アルファじゃないか?

 次の試合の合間に、
 偶然、陽に会うことができた。

 ……さっきのアルファも一緒にいた。

 近づいた瞬間、俺の鼻に届くフェロモンの匂い。
 以前、陽から感じた“あのアルファの気配”と同じ――

 ……やっぱり、こいつが、
 陽のクラスのアルファ…。

「蓮!さっきの凄かったな!」

「ありがとう。見ててくれたんだ。…クラスの人と来たの?」

「あぁ、そうなんだ。誘ったら来たいって奴が何人かいて…」

「あの、初めまして!僕、桜庭 玲央さくらば れおって言います!
 さっきのすごくカッコ良かったです!」

「ありがとう。…そっちの人は?」

「あ、こっちは伊吹慎也いぶき しんや

 伊吹、と呼ばれた男は、
 人好きしそうな笑みを浮かべて、軽く頭を下げた。

 俺より少し背が高く、体格も良い。 意志の強そうな眼差しが真っ直ぐ俺を見る。
 隣に友人から話しかけられれば笑って返すので、きつい印象もない。

 そして、人の流れから守るように、陽の隣に立っていた。

「他にもーー」

「あの、これ良かったら試合の合間にどうぞ!
 集中力上がるようにお菓子持ってきたんです!」

「あー…」

 いつもなら笑顔で返せるのに、
 伊吹の存在が気になって、うまく顔が作れなかった。

「桜庭、ありがとな! 俺、蓮に家の人から伝言預かってたの思い出した!
 皆、悪いけど、先戻っててくれるか? じゃ!」

 そう早口で言った陽に、俺は手を引かれ、
 人の少ない隅にやってくる。

「陽、伝言って何?」

「ごめん、それ嘘。蓮が、困ってるように見えたから。…おせっかいだった?」

「いや、ううん。…ありがとう」

「なんか俺も嫌だったし…」

 もしかして陽も、嫉妬してくれた?

 今なら、冷静に聞けそうな気がした。

「さっきの、伊吹って…アルファだよね?」

「そうだけど。蓮…また先輩の時みたいに思ってんじゃないだろうな?」

 ドキッとした。

「やっぱな。今度は絶対に無いから!それに、俺は…蓮だけだし」

 そう言って、首元のネックレスを触る。

「俺のことも信用できないのかよ?」

「いや、違うよ。信じてる!」

「一応、蓮が気にしたら嫌だから、二人きりにならないようにしてるし。
 それに今日は、カッコいいとこ、見せてくれるんだろ? 集中しろよ」

「…ごめん、そうだね。頑張るから、ちゃんと見てて」

「あぁ。じゃあ、また後でな」

「うん…ありがとう」

 陽は皆の所へ戻っていき、
 俺もまた試合会場へ戻った。

 ――そうだ。
 陽は俺を見てくれている。
 俺にも陽だけだ。

 俺と陽の絆を深めれば良い。
 他のアルファが入り込めないくらいにーー

 その日は、個人で2位の成績を納めた。
 3年生のいない大会では、最高の結果だった。

 観客席を見上げると、陽の笑顔があった。
 ――俺は、あの笑顔のために、もっと強くなりたい。
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