番じゃない僕らの恋~俺の唯一だった君~

伊織

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第2章

7 春休みの計画と、君の隣

 大会が終わってから、少しだけ、変化があった。

 大会に来てくれた陽のクラスの人から、声を掛けられるようになった。
 陽の教室の近くを通ると、呼び止められることもある。

 俺はそれで、陽とも話せたら嬉しかったんだけど、そう上手くはいかなかった。

「おー、御門。次、移動なん?」

 廊下側の窓から、男子生徒がこちらに手を振っていた。

「あぁ、そうなんだ」

 間宮と水瀬に断って、その生徒の近くへ向かう。
 陽、いるかな…。廊下からでも、姿が見えたら嬉しいのに。

 そのとき、男子の隣にいた女子生徒が話しかけてきた。

「あ、御門君! 今度の大会、私も見に行っていい?」

「会場が観覧を許可してる所なら、大丈夫だと思うよ」

「御門君!」
「弓道ってやっぱ集中力いるの?」
「甘いもの好き? 私、お菓子作るの趣味で~」
「彼女いないの?」
「御門君、御門君……!」

 気づけば、三人…いや、四人に増えていた。
 近すぎる距離。重なり合う空気に、息が詰まりそうになる。
 誰が何を言ってるのかも、もう分からない。

 ……た、助けて陽。

「おーい、御門。先行ってんぞー!」

 後ろから間宮の声が聞こえた。助かった。

「ごめんね。もう行かないと」

 ****

「毎回、呼び止められてんなよ」

「うん。でも、陽とも話せるかなって」

 帰り道。今日の様子を見られていたらしく、陽はどこか不満げに言った。

「話せねぇよ。あそこに入っていくの、無理。
 女子に囲まれて……ちょっと嬉しそうだったし」

「嬉しそうなのは、陽に会えるかもって思ってたからだよ」

「……俺も、教室で話せたら良いと思ってるけど。
 こうやって、2人で話せるほうが良い」

「陽……」

「蓮、手。はやく」

 陽が俺の手にそっと触れてくる。
 俺は荷物を反対の手に持ち替え、陽と手を繋いだ。

 ふと隣を見ると、嬉しそうに笑っている陽がいた。
 ……たしかに、この笑顔は、2人だけの時がいいな。

 ****

 翌日。
 昨日の陽の笑顔が頭に残っていて、気がつけば俺は陽の教室の前に立っていた。

 そこで見たのは、陽の肩に腕を乗せて話す、あのアルファの姿。

「おい、やめろって」

 陽の声が聞こえて、思わず教室に入っていた。
 その男子の腕を掴み、陽から引き離す。

「蓮?」

「陽、大丈夫か?」

「大丈夫って、別に何も……」

「心配性だな。陽の幼なじみは。まるで恋人みたいだな」

 ――その言葉に、胸がざわついた。

「ただの幼なじみだから。蓮、マジで何もないから」

 陽の声はいつもと変わらない。でも、どこかそれが、寂しく感じた。

「ごめん、俺……」

「そんなに心配なら、一緒に来たらどうだ? 旅行に」

「旅行? 陽、旅行に行くの?」

「あ、あぁ。今ちょうど話してたんだ。
 2年になったらクラス替えあるし、春休みに思い出作ろうって。
 伊吹の親戚が旅館やってるらしくて、そこを当たってもらえるかもって」

「泊まれることになったら、陽は、行くの?」

「……うん、行きたいとは思ってる」

「俺も行きたい」

「じゃあ――」

「えー! 御門君行くなら私も行きたい!」
「私も……行っていいのかなぁ?」
「御門君の私服ヤバそう! 見たい~!」
「いいなぁ、私も親に聞いてみようかな」
「旅館って遠いの? 親の許可とれるかな?」

 周りで静かに聞いていた女子たちが、どっと押し寄せてきた。
 俺はすかさず陽の腕を引き、自分の胸の前に立たせて壁を作る。
 これで女子の圧が少し和らぐ…。陽の背中が俺の胸に触れた。

「蓮……」

 陽が俺を見上げながら、睨んで来る。

「ごめん、つい」

 今は伊吹が女子の相手をしている。
 まぁ、あいつの親戚の旅館だし、当然だな。

 すぐ隣では、陽の友人たちの会話が聞こえてくる。

「女子と旅行……!」
「いや、全員、御門目当てでしょ」
「俺はどうでもいいけど。彼女いるし」
「あー! お前、いつのまに!」

 ――そして、伊吹の親戚の旅館に泊めてもらえることになり、旅行が決定した。

 放課後。帰り道を並んで歩きながら、陽がぽつりとつぶやいた。

「蓮、本当にいいのか? 部活だってあるだろ」

「大丈夫。俺も、陽と一緒に思い出作りたいし……やっぱり、心配だし」

「もしかして、伊吹のことか?」

「うん……まぁ。ごめん」

 陽は小さくため息を吐いた。

「謝らなくていいけど……まぁ、それが蓮だよな」

「……どういうこと?」

「俺の恋人は、心配性ってこと」

 そう言って、陽は照れたように笑った。

「……うん。ごめん」

「だから謝るなって。……俺も、一緒に行けるのは嬉しいし」

「俺も。……好きだよ」

「ふふっ。あぁ、俺も」

 そう言って、陽は俺の手を、きゅっと強く握ってくれた。
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